44 / 59
4-6. 鮮やかな制圧
しおりを挟む
「それでは、大聖女様、お願いいたします」
案内役に呼ばれ、ユリアは壇上に登った。
煌びやかに装飾が施された大広間、壇上には多くの魔法ランプが配されて、まるでスポットライトの様にユリアを浮かび上がらせる。
ユリアは大きく息をつき、『蒼天の儀』に招かれた王侯貴族たちが一堂に会する様子を見回してニヤッと笑った。
そして、『蒼天の杖』を高く掲げ、サファイヤを青くまぶしく輝かせると、
「絶対結界!」
と、叫んで王侯貴族たちを強固な結界に閉じ込めた。
段取りと違うことに出席者は驚き、どよめきが上がる。
すると、アルシェが奥から現れて壇上に上がり、姿勢をピッと正し、右手を高く掲げ、高らかに声をあげた。
「アルシェ・リヴァルタはここにクーデターを宣言します!」
唖然とし、静まり返る王侯貴族たち。
さらに奥から宰相が重厚な紫色のファイルを掲げて登場し、一礼してアルシェにそれを渡した。
アルシェは書類にサラサラとサインを書き込む。
それを確認した宰相は、
「ここに、アルシェ・リヴァルタ様が王国の全権力を掌握したことが法的に認められました」
と、王侯貴族たちに向かって声をあげた。
「おい! ふざけんな!」「何をやってるのか!」「いいかげんにしろ!」
王侯貴族はそれぞれ怒り心頭で怒鳴り、席を立つが結界が強固で出ることができない。
すると、後ろの方から異常を察知した騎士たちがバタバタと入って来て、壇上を目指す。
直後、ズン! という音と共に脇の壁が吹き飛び、砂ぼこりの中から巨大なドラゴンの首がニュッと顔を出した。
「ひぇ――――!」「キャ――――!」「うわぁ!」
厳ついウロコに巨大な牙に鋭い爪、ギョロリと見回す巨大な瞳に大広間は大騒ぎになる。騎士たちもドラゴンの登場に恐れおののき、動けなくなった。
「お静かに! 我が王国を守ってくれる神の使い、ドラゴンです。私は大聖女様とドラゴンと共に世界征服を実現させます。王侯貴族の皆様におかれましてはご理解とご協力を賜りたく存じます」
アルシェはエンペラーグリーンの瞳を輝かせ、堂々とそう言い切った。
ここに来て王侯貴族たちはこれが茶番でないことに気づき、真っ青になってお互いの顔を見合わせ、ひそひそと善後策を話し合い始める。
「アルシェ! これはどういうことだ!」
今までじっと静観してきた国王が立ち上がり、声を上げる。
「父上、ご相談もせずに申し訳ありません。ただ、これは王家を守る唯一の道なのです。全てが終わったら全部ご説明します」
「お前! いいかげんにしろ!」
第一王子が声を荒げる。
「お兄様、もう私はこの国の国王です。口を慎んでいただけますか?」
アルシェはニコっと笑って言う。
「俺は認めないぞ!」
第一王子は真っ赤になって吠える。
しかし、アルシェは取り合わず、
「ここから先は大聖女様からご説明があります。私はこれで……」
そう言って退場していった。
「おい! 待て! 逃げんなよ!」
第一王子は必死に叫んだが結界を超えることもできず、地団太を踏む事しかできない。
「はーい、皆様、それでは私から今後の流れをご説明しまーす!」
ユリアはニコニコしながら声を上げる。
王侯貴族たちはムッとした表情でユリアをにらんだ。
「まず、皆さまの身体ですが、すでに実体を消してあります。物には触れられませんし、お腹も減りませんし、おトイレも不要です。言わば幽霊みたいな状態になったとお考え下さい」
どよめきが起こり、一部の人は椅子に触れようとして手がすり抜け、唖然とする。
「今後の世界統一のスケジュール、共和制への移行についてはそちらをご覧ください」
そう言って壁を指さすと、プロジェクターで映し出されたように一連の計画がずらりと表示された。
「皆さんの選択肢は三つ。一、このまま一生ここにいる。二、当計画を受け入れ、全権限を王国に返上し、裕福な家として存続する。三、ドラゴンと戦って散っていただく。決まったら声をかけてくださいね。たまに様子をうかがいに来ますので」
そう言うと、ユリアは一同を見回し、ニコっと笑って退場していく。
どよめく大広間だったが、誰も結界は壊せなかったし、幽霊状態になってしまった王侯貴族たちにはもはや何もできなかった。
案内役に呼ばれ、ユリアは壇上に登った。
煌びやかに装飾が施された大広間、壇上には多くの魔法ランプが配されて、まるでスポットライトの様にユリアを浮かび上がらせる。
ユリアは大きく息をつき、『蒼天の儀』に招かれた王侯貴族たちが一堂に会する様子を見回してニヤッと笑った。
そして、『蒼天の杖』を高く掲げ、サファイヤを青くまぶしく輝かせると、
「絶対結界!」
と、叫んで王侯貴族たちを強固な結界に閉じ込めた。
段取りと違うことに出席者は驚き、どよめきが上がる。
すると、アルシェが奥から現れて壇上に上がり、姿勢をピッと正し、右手を高く掲げ、高らかに声をあげた。
「アルシェ・リヴァルタはここにクーデターを宣言します!」
唖然とし、静まり返る王侯貴族たち。
さらに奥から宰相が重厚な紫色のファイルを掲げて登場し、一礼してアルシェにそれを渡した。
アルシェは書類にサラサラとサインを書き込む。
それを確認した宰相は、
「ここに、アルシェ・リヴァルタ様が王国の全権力を掌握したことが法的に認められました」
と、王侯貴族たちに向かって声をあげた。
「おい! ふざけんな!」「何をやってるのか!」「いいかげんにしろ!」
王侯貴族はそれぞれ怒り心頭で怒鳴り、席を立つが結界が強固で出ることができない。
すると、後ろの方から異常を察知した騎士たちがバタバタと入って来て、壇上を目指す。
直後、ズン! という音と共に脇の壁が吹き飛び、砂ぼこりの中から巨大なドラゴンの首がニュッと顔を出した。
「ひぇ――――!」「キャ――――!」「うわぁ!」
厳ついウロコに巨大な牙に鋭い爪、ギョロリと見回す巨大な瞳に大広間は大騒ぎになる。騎士たちもドラゴンの登場に恐れおののき、動けなくなった。
「お静かに! 我が王国を守ってくれる神の使い、ドラゴンです。私は大聖女様とドラゴンと共に世界征服を実現させます。王侯貴族の皆様におかれましてはご理解とご協力を賜りたく存じます」
アルシェはエンペラーグリーンの瞳を輝かせ、堂々とそう言い切った。
ここに来て王侯貴族たちはこれが茶番でないことに気づき、真っ青になってお互いの顔を見合わせ、ひそひそと善後策を話し合い始める。
「アルシェ! これはどういうことだ!」
今までじっと静観してきた国王が立ち上がり、声を上げる。
「父上、ご相談もせずに申し訳ありません。ただ、これは王家を守る唯一の道なのです。全てが終わったら全部ご説明します」
「お前! いいかげんにしろ!」
第一王子が声を荒げる。
「お兄様、もう私はこの国の国王です。口を慎んでいただけますか?」
アルシェはニコっと笑って言う。
「俺は認めないぞ!」
第一王子は真っ赤になって吠える。
しかし、アルシェは取り合わず、
「ここから先は大聖女様からご説明があります。私はこれで……」
そう言って退場していった。
「おい! 待て! 逃げんなよ!」
第一王子は必死に叫んだが結界を超えることもできず、地団太を踏む事しかできない。
「はーい、皆様、それでは私から今後の流れをご説明しまーす!」
ユリアはニコニコしながら声を上げる。
王侯貴族たちはムッとした表情でユリアをにらんだ。
「まず、皆さまの身体ですが、すでに実体を消してあります。物には触れられませんし、お腹も減りませんし、おトイレも不要です。言わば幽霊みたいな状態になったとお考え下さい」
どよめきが起こり、一部の人は椅子に触れようとして手がすり抜け、唖然とする。
「今後の世界統一のスケジュール、共和制への移行についてはそちらをご覧ください」
そう言って壁を指さすと、プロジェクターで映し出されたように一連の計画がずらりと表示された。
「皆さんの選択肢は三つ。一、このまま一生ここにいる。二、当計画を受け入れ、全権限を王国に返上し、裕福な家として存続する。三、ドラゴンと戦って散っていただく。決まったら声をかけてくださいね。たまに様子をうかがいに来ますので」
そう言うと、ユリアは一同を見回し、ニコっと笑って退場していく。
どよめく大広間だったが、誰も結界は壊せなかったし、幽霊状態になってしまった王侯貴族たちにはもはや何もできなかった。
0
お気に入りに追加
13
あなたにおすすめの小説
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです
青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています
チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。
しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。
婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。
さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。
失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。
目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。
二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。
一方、義妹は仕事でミスばかり。
闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。
挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。
※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます!
※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。
攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?
伽羅
ファンタジー
転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。
このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。
自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。
そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。
このまま下町でスローライフを送れるのか?
キリストにAI開発してもらったら、月が地球に落ちてきた!?
月城 友麻
SF
キリストを見つけたので一緒にAIベンチャーを起業したら、クーデターに巻き込まれるわ、月が地球に落ちて来るわで人類滅亡の大ピンチ!?
現代に蘇ったキリストの放つ驚愕の力と、それに立ちふさがる愛くるしい赤ちゃん。
さらに、自衛隊を蹴散らす天空の城ラピ〇タの襲撃から地球を救うべく可愛い女子大生と江ノ島の洞窟に決死のダイブ!
楽しそうに次元を切り裂く赤ちゃんとの決戦の時は近い! 愛は地球を救えるか?
◇
AIの未来を科学的に追っていたら『人類の秘密』にたどり着いてしまった。なんと現実世界は異世界よりエキサイティングだった!?
東大工学博士の監修により科学的合理性を徹底的に追求し、人間を超えるAIを開発する手法と、それにより判明するであろう事実を精査する事でキリストの謎、人類の謎、愛の謎を解き明かした超問題作!
この物語はもはや娯楽ではない、予言の書なのだ。読み終わった時、現実世界を見る目は変わってしまうだろう。あなたの人生も大きく変貌を遂げる!?
Don't miss it! (お見逃しなく!)
あなたは衝撃のラストで本当の地球を知る。
※他サイトにも掲載中です
https://ncode.syosetu.com/n3979fw/
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)
チート幼女とSSSランク冒険者
紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】
三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が
過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。
神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。
目を開けると日本人の男女の顔があった。
転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・
他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・
転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。
そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語
※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。
元四天王は貧乏令嬢の使用人 ~冤罪で国から追放された魔王軍四天王。貧乏貴族の令嬢に拾われ、使用人として働きます~
大豆茶
ファンタジー
『魔族』と『人間族』の国で二分された世界。
魔族を統べる王である魔王直属の配下である『魔王軍四天王』の一人である主人公アースは、ある事情から配下を持たずに活動しいていた。
しかし、そんなアースを疎ましく思った他の四天王から、魔王の死を切っ掛けに罪を被せられ殺されかけてしまう。
満身創痍のアースを救ったのは、人間族である辺境の地の貧乏貴族令嬢エレミア・リーフェルニアだった。
魔族領に戻っても命を狙われるだけ。
そう判断したアースは、身分を隠しリーフェルニア家で使用人として働くことに。
日々を過ごす中、アースの活躍と共にリーフェルニア領は目まぐるしい発展を遂げていくこととなる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる