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3-3. アポカリプス

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 所変わってオンテークの森――――。

 自分たちの星が焼却対象となってしまったことも知らず、ユリアたちは夕飯を食べていた。
 ユリアは食欲のない様子で、王都の惨状さんじょうを話す。
 ジェイドは、
「危ない事はしちゃダメだ」
 と、怒っていたが、想像以上の荒廃っぷりに渋い顔をし、ため息をついた。
「どうなっちゃうのかな……?」
 ユリアは心配そうに聞く。
「そこまで荒廃すると……、神様に見限られてしまう……かもしれん……」
「見限られるって……?」
「この星が消されるってことだよ」
「えっ!? そ、それはダメよ! そんなことになったら私たちも消されちゃうって……ことよね?」
「そうだ……」
 極めて厳しい事態に追い込まれたことに二人はうつむき、沈黙の時間が続いた……。

「ねぇ、何とかならない……かな?」
 キリキリと痛む胃を押さえながら、ユリアは口を開く。
「神様のやることに我々は干渉できない。何しろ我々を作ったのは神様なのだから……」
「そんな……」
 ユリアは青い顔をしてうつむく。

         ◇

 早々に食卓を片付け、寝支度をしている時だった。

 パーパラッパー! パパパッパー!
 外で高らかにラッパの音が鳴り響く。

「えっ!?」
 ジェイドはあわてて窓を開いて空を見上げる。
 ラッパの音は夜空高く、宇宙から降り注ぐようにオンテークの森に響き渡っていた。
「ア、アポカリプスだ……」
 ジェイドは顔面蒼白となり、空を見つめたまま動かなくなる。
「な、何なの……? それ?」
 ユリアはジェイドの異様な様子に恐る恐る聞く。
「終末を告げるラッパ……、神様がこの星を終わらせると宣言したんだ……」
 ジェイドは呆然としながら崩れ落ちた。
「えっ! この星、消されちゃうの!?」
 真っ青になるユリア。
 ジェイドは無言でゆっくりとうなずく。
「ど、どうやって消されるの?」
「分からない……」
 ジェイドはそう言って、うなだれた。

 世界の終わりがやってくる。
 いきなりの死刑宣告に二人とも言葉を失い、ただ、呆然とするばかりだった。
 やがてラッパの音が鳴りやみ、静けさが戻ってくる。
 ユリアはこれから始まる死刑執行をどうとらえていいのか途方に暮れ、窓辺で夜空を見上げた。
 その時だった。夜空の向こうに、何かぼうっと赤く光る点がゆっくりと動く。
「あれ……、何かしら?」
 ジェイドは立ち上がってユリアの指さす先を見る……。
 すると、目をカッと見開き、叫んだ。
「巨大隕石だ! デカい……ニ十キロはあるぞ!」
 ニ十キロと言えば、王都だけでなく、王都を囲む盆地全体が覆い隠されるサイズ。落下したエネルギーで、この星の生きとし生けるものは全て燃やし尽くされてしまうだろう。神様が選択した星の消去方法は巨大隕石による焼却処分だったのだ。
「ニ十キロ!?」
 ことの深刻さにユリアは言葉を失う。
 するとジェイドはユリアの目を見つめ、
「我が隕石の軌道をそらして浮かす。ユリアは全力のシールドで宇宙へ帰っていくようにさらに軌道を変えてくれ」
「えっ!? 軌道をそらすってもしかして?」
 ユリアは嫌な予感がした。
「愛してるよ、ユリア……」
 ジェイドは覚悟を決めた目でユリアを見つめる。
「待って! 止めて!」
 ユリアはジェイドにしがみつく。彼は自分の命をなげうってこの星を守ろうとしているに違いない。ジェイドが失われた未来、そんなのどう考えても受け入れられない。
 しかし、ジェイドはそっとキスをするとユリアの手を振りほどき、窓の外へと跳ぶ。
「ジェイド――――!」
 ユリアの叫び声が響く中、ジェイドはドラゴンの姿に戻り、いまだかつてなく激しく光り輝くと隕石の方へとすっ飛んで行った。
「いやぁぁぁ!」
 ユリアはいきなり訪れた別れの、胸が張り裂けるような痛みに貫かれ、絶叫する。
 隕石は徐々にまぶしく輝き始め、世界の終わりが近づき、ジェイドの鮮やかな青白い軌跡はまっすぐに隕石の飛び先へと進む。
 夜空に展開される多くの命のかかった鮮烈な光の共演。それはユリアの胸を絶望に染め、ただ力なく手を伸ばすばかりだった。
 そして、両者が交わる――――。
 直後、激しい閃光が夜空を、大地を光で埋め尽くした。

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