うちの美少女AIが世界征服するんだって、誰か止めてくれぇ

月城 友麻

文字の大きさ
上 下
32 / 65

32. 宇宙大浴場

しおりを挟む
「そ、そんなに危険なことなの?」

「大丈夫なのだ。君には意思の力グリットがあるのだ」

 ミリエルは気楽にサムアップしてウインクするが、嫌な予感しかしない。

 玲司は思わず天を仰ぐ。またドローンと対峙したときのようなチキンレースをやる羽目になるのではないだろうか?

「ご主人様、大丈夫! 僕も行くゾ!」

 シアンが玲司の手を握ってくる。

「シアンちゃん、頼んだのだ。玲司だけだと即死なのだ。クフフフ」

「任せて! きゃははは!」

 二人は嬉しそうに笑う。

「即死!? 勘弁してよ……」

 玲司はガックリとうなだれた。

「えーっと、そうしたらどうしよっかなのだ……」

 ミリエルは人差し指をあごに当てて宙を見上げる。

 ポワンポワン! ポワンポワン!

 その時部屋に呼び出し音が響いた。

「あっ、いけない! 行かねばなのだ」

 そう言ってミリエルは慌てて立ち上がると、スマホを取り出して何かをパシパシ叩いている。そして、

「じゃ、ちょっと飲み会に出かけてくるからゆっくりしてて!」

 そう言って、ブゥンとまた空間を割ってドアを開いた。

「ちょ、ちょっと待ってよ! 地球はどうするの?」

 崩壊しきった地球の復旧は八十億人の人生のかかった大問題である。急ぐべきではないだろうか?

「だいじょぶ、だいじょぶ。地球の時間は今止めてるし、飲み会でこそ解決の糸口はつかめるのだ。じゃっ!」

 ミリエルはそう言って嬉しそうに手を上げ、ウインクするとドアの向こうへと消えていった。

 玲司はシアンと顔を見合わせ、

「こんなんでいいのかな?」

 と、首をかしげる。

「ミリエルには何か考えがあるんだよ。それよりお風呂に行くゾ!」

「ふ、風呂?」

「こういう時はゆっくりとお風呂に使って英気を養うのが大切なんだゾ!」

 シアンはそう言うと空間を割ってドアを出し、玲司の腕をつかんで引きよせた。

「なんだ、お前、もうずいぶんなじんでるな」

「ふふーん、ご主人様は四十九日寝てたからね。その間にこの世界もハックしたのだ」

 ドヤ顔のシアン。

「お、おぉ、そうか。それは……頼もしいな」

「ハイハイ! 大浴場へレッツゴー!」

 シアンはそう言うと玲司をドアの向こうへドンと押しこんだ。


         ◇


 へっ!?

 ドアの向こうに行って玲司は驚いた。

 目の前には満天の星々、そして、下を見れば巨大な海王星の紺碧の雲海が広がっている。

 一瞬落ちるのではないかと思って身構えてしまったが、無重力で身体はふわふわと浮かんでいた。よく見れば大きな温室みたいに周囲はガラスのようなもので覆われた構造体となっているようだ。

 そして、正面には巨大な水晶玉のようなものが浮かんでいる。天の川を背景に、水晶玉には海王星の美しい碧い水平線がひっくり返って映り、まるでファンタジーの秘宝の部屋のように神秘的な情景だった。

 おぉ……。

 玲司が見とれていると、

「ハイハイ、一名様ご案内だゾ!」

 シアンはそう言って、玲司の服をバッと消し去り、素っ裸になった玲司をドーン! とそのまま水晶玉へと押し出した。

「うわっ! お前! 何すんだよ!」

 玲司はグルングルンと回りながら真っ赤になって叫ぶ。

 身体のコントロールを取ろうと思ったが、グルグルと回っている身体はどうやっても止まらなかった。

「なんだよこれ――――!」

 悲鳴にも似た玲司の叫びが浴室内に響く。

 大事なところを必死に隠しながら、なすすべなく水晶玉めがけて一直線に飛んでいった玲司は、そのままザブンと突っ込んだ。水晶玉は五メートルはあろうかという温水の塊だったのだ。

 温水は突入した玲司の衝撃で激しく波立ち、ボヨンボヨンと全体を震わせながらしぶきを辺りへとまき散らす。

「ストラーイク! きゃははは!」

 シアンは嬉しそうに笑うと、自分もスッポンポンになって玲司めがけてツーっと飛んだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【完結】ご都合主義で生きてます。-商売の力で世界を変える。カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく-

ジェルミ
ファンタジー
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 その条件として女神に『面白楽しく生活でき、苦労をせずお金を稼いで生きていくスキルがほしい』と無理難題を言うのだった。 困った女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 この味気ない世界を、創生魔法とカスタマイズ可能なストレージを使い、美味しくなる調味料や料理を作り世界を変えて行く。 はい、ご注文は? 調味料、それとも武器ですか? カスタマイズ可能なストレージで世の中を変えていく。 村を開拓し仲間を集め国を巻き込む産業を起こす。 いずれは世界へ通じる道を繋げるために。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

処理中です...