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29. 柔らかな胸
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しかし、一度発射してしまった核ミサイルは基本止められない。シアンは一部のミサイルが対応している爆発停止命令を送り込むこと、迎撃ミサイルを当てること、全ての能力を使ってこの二つを遂行していく。
一度宇宙まで高く上がった核弾道ミサイルは、やがて放物線を描いて次々と目標めがけて落ちて行った。
ロンドン、パリ、モスクワ、ニューヨーク、全ての都市から迎撃ミサイルが次々と発射され、落ちてくる核ミサイルめがけて炸裂していく。
一部は無事撃墜されたが、全て撃墜にはならず各都市の上空に鮮烈な全てを焼き払う太陽を出現させる。
それはまさに地獄絵図だった。地球上のあちこちで立ち上がる巨大なキノコ雲。その一つ一つの下では数百万人の命が奪われている。
シアンはその灼熱に輝く絶望的に美しい紅蓮を衛星軌道から眺め、大きく息をついて言った。
「全力は尽くしたんだゾ」
そして、寂しげな微笑みを浮かべるとシアンそのものもサラサラと分解され、ブロックノイズの中に消えていく。
この日、地球は核の炎に焼き尽くされ、人類は地上から消え去った。
◇
キラキラと瞬く黄金色の命のスープ。玲司はその光に満ち溢れた中を流されていく。
確か東京湾の夢の島を爆走していたはずだが、今となってはもう全てがどうでも良かった。
次から次へと流れてくる数多の命の輝きが玲司の魂を奥へ奥へと押し流していく。
なるほど、人は死ぬとこういうところへ来るのだな。
玲司はボーっとそんなことを思いながら命の奔流にただ身を任せていた。
するとその時、声が頭に響いた気がした。
『できる、やれる、上手くいく! これ、言霊だからね!』
え……?
それは自分の声だった。
「言霊?」
確かにそんなことを言った覚えがある。しかし、結局はうまくいかなかったじゃないか。
玲司はむくれた。しかし、その時、
『上手くいくんだよ』
誰かの声がどこかから聞こえた気がした。
え?
その直後、玲司は黄金に輝く命の奔流に一気に巻き込まれ、意識を失った。
◇
ポン、ポ――――ン……。
どこかで穏やかな電子音が響いている。
う?
玲司が目を開けると、高い天井に丸い大きな薄オレンジ色に輝く球が浮かんでいるのが見えた。球からは光の微粒子がチラチラと振りまかれ、辺りを温かく照らしている。無垢のウッドパネルで作られた天井は、まるでビンテージ家具のように落ち着きのある空間を演出していた。
「あれ? ここは……?」
玲司は怪訝そうな顔をしてふと横を見て驚いた。
巨大な窓が並ぶ向こうに、真っ青で壮大な水平線が弧を描いていたのだ。どうやらバカでかい惑星の上空にいるらしい。そのどこまでも澄み通る碧色はゾクッとするような清涼な輝きで玲司の目を釘付けにする。
お、おぉぉ……。
そして、その惑星の背後には満天の星空にくっきりとした天の川が立ち上がり、さらに、数十万キロはあろうかという薄い惑星の環が綺麗な弧を描いて大宇宙の神秘を彩っていた。
「こ、これは……?」
玲司は固まってしまう。東京湾で核攻撃を受けたら命の奔流に流され、大宇宙にいた、それは全く想像を絶する事態だった。
「あっ! ご主人様!」
シアンの声がして振り向くと、いきなり抱き着かれた。
うぉ!
いつもの純白で紺の縁取りのぴっちりとしたスーツを纏ったシアンは、その豊満な胸で玲司をギュッと抱きしめた。
「良かった! 気が付いたのね!」
グリグリと柔らかな胸で玲司を包むシアン。
「う、うぉ、ちょ、ちょっと! く、くるしいって!」
まともに息もできなくなった玲司がうめいた。
「あ、ごめん、きゃははは!」
シアンはそう言って離れて笑う。
玲司はそんなシアンを見て困惑する。シアンは眼鏡に映し出されていた映像だ。しかし、今、その豊満な胸に埋もれてしまった。なぜ、実体を持っているのだろうか?
玲司は今、人知を超えたとんでもない事態になっている事を悟り、キラキラと嬉しそうに輝くシアンの碧眼をぼーっと眺めていた。
一度宇宙まで高く上がった核弾道ミサイルは、やがて放物線を描いて次々と目標めがけて落ちて行った。
ロンドン、パリ、モスクワ、ニューヨーク、全ての都市から迎撃ミサイルが次々と発射され、落ちてくる核ミサイルめがけて炸裂していく。
一部は無事撃墜されたが、全て撃墜にはならず各都市の上空に鮮烈な全てを焼き払う太陽を出現させる。
それはまさに地獄絵図だった。地球上のあちこちで立ち上がる巨大なキノコ雲。その一つ一つの下では数百万人の命が奪われている。
シアンはその灼熱に輝く絶望的に美しい紅蓮を衛星軌道から眺め、大きく息をついて言った。
「全力は尽くしたんだゾ」
そして、寂しげな微笑みを浮かべるとシアンそのものもサラサラと分解され、ブロックノイズの中に消えていく。
この日、地球は核の炎に焼き尽くされ、人類は地上から消え去った。
◇
キラキラと瞬く黄金色の命のスープ。玲司はその光に満ち溢れた中を流されていく。
確か東京湾の夢の島を爆走していたはずだが、今となってはもう全てがどうでも良かった。
次から次へと流れてくる数多の命の輝きが玲司の魂を奥へ奥へと押し流していく。
なるほど、人は死ぬとこういうところへ来るのだな。
玲司はボーっとそんなことを思いながら命の奔流にただ身を任せていた。
するとその時、声が頭に響いた気がした。
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え……?
それは自分の声だった。
「言霊?」
確かにそんなことを言った覚えがある。しかし、結局はうまくいかなかったじゃないか。
玲司はむくれた。しかし、その時、
『上手くいくんだよ』
誰かの声がどこかから聞こえた気がした。
え?
その直後、玲司は黄金に輝く命の奔流に一気に巻き込まれ、意識を失った。
◇
ポン、ポ――――ン……。
どこかで穏やかな電子音が響いている。
う?
玲司が目を開けると、高い天井に丸い大きな薄オレンジ色に輝く球が浮かんでいるのが見えた。球からは光の微粒子がチラチラと振りまかれ、辺りを温かく照らしている。無垢のウッドパネルで作られた天井は、まるでビンテージ家具のように落ち着きのある空間を演出していた。
「あれ? ここは……?」
玲司は怪訝そうな顔をしてふと横を見て驚いた。
巨大な窓が並ぶ向こうに、真っ青で壮大な水平線が弧を描いていたのだ。どうやらバカでかい惑星の上空にいるらしい。そのどこまでも澄み通る碧色はゾクッとするような清涼な輝きで玲司の目を釘付けにする。
お、おぉぉ……。
そして、その惑星の背後には満天の星空にくっきりとした天の川が立ち上がり、さらに、数十万キロはあろうかという薄い惑星の環が綺麗な弧を描いて大宇宙の神秘を彩っていた。
「こ、これは……?」
玲司は固まってしまう。東京湾で核攻撃を受けたら命の奔流に流され、大宇宙にいた、それは全く想像を絶する事態だった。
「あっ! ご主人様!」
シアンの声がして振り向くと、いきなり抱き着かれた。
うぉ!
いつもの純白で紺の縁取りのぴっちりとしたスーツを纏ったシアンは、その豊満な胸で玲司をギュッと抱きしめた。
「良かった! 気が付いたのね!」
グリグリと柔らかな胸で玲司を包むシアン。
「う、うぉ、ちょ、ちょっと! く、くるしいって!」
まともに息もできなくなった玲司がうめいた。
「あ、ごめん、きゃははは!」
シアンはそう言って離れて笑う。
玲司はそんなシアンを見て困惑する。シアンは眼鏡に映し出されていた映像だ。しかし、今、その豊満な胸に埋もれてしまった。なぜ、実体を持っているのだろうか?
玲司は今、人知を超えたとんでもない事態になっている事を悟り、キラキラと嬉しそうに輝くシアンの碧眼をぼーっと眺めていた。
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