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7. 暴走車ミサイル

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 玲司は急いでリュックを背負うと外に飛び出した。ドローンの爆発でマンションの住民たちは騒然としていたが、玲司は素知らぬふりで通り過ぎ、エレベーターで一階まで降りる。

 そして、前の道に出ようとした時、

「あ、ダメかも?」

 と、シアンが言った。

「えっ? 何が?」

 と、答えた直後、

 ブォォォン! グォォォン!

 エンジンの爆音があちこちから響き、暴走車が次々と玲司めがけてすっ飛んできた。

 おわぁぁぁ!

 真っ青なスポーツカーに高そうなセダン。運転手はひどく慌てているが、どうにもならないようだ。

 玲司が電柱の裏までダッシュして隠れると、スポーツカーは、ガン! という凄い音を立ててひしゃげながら電柱に跳ね返され、くるりと回る。そして、そこにセダンが突っ込んできてガシャーン! という派手な衝撃音をたてながらひっくり返った。

 あわわわ……。

 玲司が固まっていると、

「ご主人様、そこの細い道に逃げて!」

 と、シアンが指示する。

 路地裏に逃げ込むと、さらに遠くでエンジンの爆音が続き、暴走車はガン! ガン! と激しい衝撃音を放ちながら次々と電柱や塀に激突しているようだった。

 近所の人たちが出てきて大騒ぎとなり、車たちはプシュー! と蒸気を上げている。

 あまりのことに玲司は真っ青になりながら、細い道を必死に走った。この細さだと車も入って来れないとは思うが、次にどんな攻撃が来るか分からない。とんでもない事になってしまった。

「あー、自動運転機能を乗っ取ってるんだな……」

 シアンは渋い顔をする。

「こんなんじゃ、駅まで行けないじゃん!」

「あちゃー、地下鉄止まってる……」

 シアンが運行情報をチェックして首を振った。百目鬼は玲司の作戦の先を読んで妨害に出ているらしい。

 道には暴走車、電車も止まっている。大手町なんて一体どうやって行けばいいのだろう?

「くぅ……、あいつめ……」

 走るのを止め、頭を抱える玲司。

 その時だった、わき道から女子中学生のようなショートカットの少女が現れ、玲司を見ると、うわっ! と驚き、固まる。

 え……?

 見知らぬ少女に驚かれる、その違和感に玲司も固まった。

 あ、あ、あ……。

 少女は白地に淡く青い花柄のワンピースに身を包み、可愛い顔立ちに驚愕の表情を浮かべている。

 すると、少女は近くにあったホウキをガッとつかむと、

「この人殺し! 成敗してやるのだ!」

 と、叫びながら玲司に襲い掛かってきた。

 へっ!?

 少女は目をギュッとつぶり、全力でホウキを振り回しながら玲司を目指す。

「エイエイ! この人殺しぃ――――!」

 玲司は何が何だかわからなかったがひらりと身をかわす。

 すると少女はそのまま通り過ぎてけつまづき、ゴロゴロと転がって、道の脇に置いてあったゴミ箱にそのまま突っ込んだ。

 ガシャーン! グワングワン!

 盛大な音をたてながら少女は目を回して横たわる。

「あれ……何?」

 玲司はけげんそうにシアンに聞いた。

 少女は何度見ても見覚えのない顔であり、人殺し呼ばわりされる意味が分からない。
 
「洗脳だゾ。スマホで動画を見てる人にサブリミナルな映像を送り込んで意のままに操るのさ。米軍の兵士向けに作ったんだけど……」

 そう言ってシアンは肩をすくめ、首を振った。

「じゃ、何? これから次々と知らない人が襲ってくるの!?」

 玲司はあまりのことに愕然とし、言葉を失った。

「マスクつけておけば大丈夫!」

 シアンはそう気楽に言うが、まさに世界中を敵に回してしまった気がして玲司は思わずへなへなと座り込んでしまった。

 そして、大きく息をつくと渋い顔のままリュックから黒いマスクを出してつける。百目鬼を倒すまでもうこのマスクは外せないのだ。

 玲司は深くため息をついてガックリと肩を落とし、道端で転がってる少女をチラッと見る。

「で、この娘、どうするよ?」

「放っておきなよ、また襲ってくるゾ」

 シアンは無責任なことを言うが、悪いのは百目鬼であって操られた彼女に罪はない。こんな道端に放置しておくわけにもいかない。

 玲司は少女にそっと近づくとそっとほほを叩いた。
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