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1章 鏡の中の異世界
1-16. 真紅に輝く魔石
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串焼きを食べながら歩いていると立派な石造りの城壁が見えてきた。あれがエステルの暮らす街らしい。
「俺が『稀人かもしれない』っていうのは内緒にしておいて欲しいんだよね」
串焼きの最後の肉をかじりながらエステルに言った。
「え? なんでです?」
「だって、稀人だったら徴兵されて国の防衛に回されちゃったりするんだろ?」
「うーん、まぁ、王様に謁見はしないといけないですね」
「ほらほら、俺そういうの嫌なんだよね」
「え――――! でも、ソータ様にはこの世界を護っていただかないと……」
「徴兵されちゃったらもうエステルとは会えないと思うよ」
「えっ!?」
急に立ち止まって目を真ん丸にするエステル。
「だってそうだろ? エステルはただの冒険者なんだから、軍隊には入れてもらえないよ」
「そ、そうでした……」
しょげるエステル。
「だから、稀人の事は内緒な」
「でも……。世界を救わないと……」
「そんなの二人で救えばいいよ」
俺はそう言ってニッコリと笑った。
「そ、そうですよね! ソータ様ならどんな魔物でも瞬殺ですもんね!」
パアッと明るい顔をして俺を見るエステル。
俺はうんうん、とうなずいた。
最終的に国の組織に所属するにしろ、情報を集めておくことは重要だ。何も知らずに国に利用されるような事だけは避けたい。
まずは自分達だけでできる範囲の事はやってみようと思う。何しろ金には困らないし、逃げ場所としての日本もある。
◇
立派な城門をくぐると、そこは中世ヨーロッパのような素敵な石造りの建物が並んでいる綺麗な街だった。路面は石畳で、馬車がカッポカッポと行きかっていた。
「うわぁ、素敵な街だね」
俺が声を上げると、
「ここ、バンドゥの街はこの辺では一番大きいんです!」
と、エステルが自慢げに説明してくれる。
しばらく歩くと、剣と盾をあしらった看板が見えてきた。建物は石造りで歴史のありそうな重厚な趣きを感じる。
「ここが冒険者ギルドです! 魔石の買取と、ソータ様の冒険者登録をやるです」
エステルがニコニコしながら言う。
「エステルの生還も報告しないとな」
「あっ、そうでした……」
ちょっと恥ずかしそうに下を向いた。
木製のドアを開けると、ギギギーときしみ、酒とたばこの臭いがムッと漂ってくる。
正面にカウンターがあり、左右はロビー。数十人の冒険者たちが賑やかに歓談していた。
俺はちょっとアウェーな感じを受けながらカウンターを目指す。
「あら、エステルちゃん!」
渋い赤色のジャケットを着こんだ受付嬢は、エステルを見るなり驚きの声を出す。
「えへへ、無事、帰ってこられたです……」
「良かったわ……」
受付嬢は涙ぐみながらエステルの生還を喜んでくれた。
「あなたのパーティはもう別の僧侶を見つけて、ダンジョンへ行ったわ。残念だったわね……」
「それは仕方ないです。それに、このソータ様と新しいパーティ組むので大丈夫です」
そう言って、エステルは俺を引き寄せた。
「ソータさん……ですか? 初めてですよね?」
防刃ベストに物干しざお、どう見てもまともじゃない身なりを怪訝そうに眺めながら言う。
「そうです。冒険者登録と魔石の買い取りをお願いできますか?」
俺はそう言いながらバッグの魔石の山を見せた。
受付嬢は魔石の量に驚き、そして魔石の山をジーッと見て……、
「えっ! これってもしかして……」
と、驚きながら真紅に輝く魔石を手に取った。
「双頭のワイバーンですよ!」
エステルが自慢げに言う。
「双頭のワイバーン!?」
声を裏返らせて驚く受付嬢。ロビーの冒険者たちが一斉にこっちを振り向く。
「ソータ様が一人で倒したんです!」
受付嬢は驚きの表情のまま俺の顔をジッと眺め……、
「しょ、少々お待ちください!」
「俺が『稀人かもしれない』っていうのは内緒にしておいて欲しいんだよね」
串焼きの最後の肉をかじりながらエステルに言った。
「え? なんでです?」
「だって、稀人だったら徴兵されて国の防衛に回されちゃったりするんだろ?」
「うーん、まぁ、王様に謁見はしないといけないですね」
「ほらほら、俺そういうの嫌なんだよね」
「え――――! でも、ソータ様にはこの世界を護っていただかないと……」
「徴兵されちゃったらもうエステルとは会えないと思うよ」
「えっ!?」
急に立ち止まって目を真ん丸にするエステル。
「だってそうだろ? エステルはただの冒険者なんだから、軍隊には入れてもらえないよ」
「そ、そうでした……」
しょげるエステル。
「だから、稀人の事は内緒な」
「でも……。世界を救わないと……」
「そんなの二人で救えばいいよ」
俺はそう言ってニッコリと笑った。
「そ、そうですよね! ソータ様ならどんな魔物でも瞬殺ですもんね!」
パアッと明るい顔をして俺を見るエステル。
俺はうんうん、とうなずいた。
最終的に国の組織に所属するにしろ、情報を集めておくことは重要だ。何も知らずに国に利用されるような事だけは避けたい。
まずは自分達だけでできる範囲の事はやってみようと思う。何しろ金には困らないし、逃げ場所としての日本もある。
◇
立派な城門をくぐると、そこは中世ヨーロッパのような素敵な石造りの建物が並んでいる綺麗な街だった。路面は石畳で、馬車がカッポカッポと行きかっていた。
「うわぁ、素敵な街だね」
俺が声を上げると、
「ここ、バンドゥの街はこの辺では一番大きいんです!」
と、エステルが自慢げに説明してくれる。
しばらく歩くと、剣と盾をあしらった看板が見えてきた。建物は石造りで歴史のありそうな重厚な趣きを感じる。
「ここが冒険者ギルドです! 魔石の買取と、ソータ様の冒険者登録をやるです」
エステルがニコニコしながら言う。
「エステルの生還も報告しないとな」
「あっ、そうでした……」
ちょっと恥ずかしそうに下を向いた。
木製のドアを開けると、ギギギーときしみ、酒とたばこの臭いがムッと漂ってくる。
正面にカウンターがあり、左右はロビー。数十人の冒険者たちが賑やかに歓談していた。
俺はちょっとアウェーな感じを受けながらカウンターを目指す。
「あら、エステルちゃん!」
渋い赤色のジャケットを着こんだ受付嬢は、エステルを見るなり驚きの声を出す。
「えへへ、無事、帰ってこられたです……」
「良かったわ……」
受付嬢は涙ぐみながらエステルの生還を喜んでくれた。
「あなたのパーティはもう別の僧侶を見つけて、ダンジョンへ行ったわ。残念だったわね……」
「それは仕方ないです。それに、このソータ様と新しいパーティ組むので大丈夫です」
そう言って、エステルは俺を引き寄せた。
「ソータさん……ですか? 初めてですよね?」
防刃ベストに物干しざお、どう見てもまともじゃない身なりを怪訝そうに眺めながら言う。
「そうです。冒険者登録と魔石の買い取りをお願いできますか?」
俺はそう言いながらバッグの魔石の山を見せた。
受付嬢は魔石の量に驚き、そして魔石の山をジーッと見て……、
「えっ! これってもしかして……」
と、驚きながら真紅に輝く魔石を手に取った。
「双頭のワイバーンですよ!」
エステルが自慢げに言う。
「双頭のワイバーン!?」
声を裏返らせて驚く受付嬢。ロビーの冒険者たちが一斉にこっちを振り向く。
「ソータ様が一人で倒したんです!」
受付嬢は驚きの表情のまま俺の顔をジッと眺め……、
「しょ、少々お待ちください!」
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