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45. 木霊する狂気
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慌てて視線を空へと向けると、青い髪をなびかせる大天使シアンが、腰に軽やかに手を当て、楽しげに輝きながら宙に浮かんでいた。
「き、貴様……。こ、これはお前の筋書きだったのか?」
「くふふふ、そうだよぉ。君は慎重すぎるほど慎重だからね、普通のやり方じゃシッポを出さないじゃないか。でも僕の可愛い人間爆弾ならやってくれると思ったんだよね。くふふふ」
シアンは悪戯っぽい笑顔を見せる。自分が罠だと思いもしない蒼と、好奇心旺盛なサイノン。そこに前代未聞の若返りという興味深い呪いを仕込めばサイノンは結末を見てみたくなるに違いない。シアンの奇想天外な策略はこうして成就したのだった。
「くっ! 俺としたことが……。だが、壊れかけとは言えここは俺の世界。上位神の力もあるのだ。お前には負けんよ」
サイノンは顔の前で複雑に両手を動かし、空気を切り裂くように印を組む。彼の目は炎のように輝き、「ふん!」という気合の叫びと共に、周囲の空気までが震えた。
直後、ビー玉サイズの黒い粒子が無数、空間から湧き上がり、それらがまるで生き物のように躍動するとシアンを取り囲むドームを形成していく。
「おりょりょ?」
シアンはその不思議な挙動に心を奪われ、好奇心旺盛にその黒い粒子群をキョロキョロと見回した。
「死ねぃ!」
刹那、黒い粒子は鋭いとげとなり、邪悪な意志を持ってシアンに向かって矢のように飛んでいった。
あっという間に真っ黒に蹂躙されつくされるシアン。
「はーっはっはっは! ざまぁねーな!」
大笑いするサイノンだったが、耳元で誰かがささやいた。
「君がね?」
シアンは無傷で余裕を見せ、サイノンは慌てて全力で空間跳躍し、必死に逃げる。
「くぅ、化け物め! なぜ攻撃が効かんのだ!」
百キロほど離れた海辺に逃げてきたサイノンは空中に画面を広げ、必死にシアンのデータを追っていく。
「えーい、奴はどこ行った?」
百キロ離れていても、地平線の向こうでどんどんと進む空間崩壊は見て取れるほど状況は厳しかった。
「早く倒さないと……。隠ぺいスキルを使ってるな……。だが上位神の力を使えば……。これでどうだ?」
画面に赤い点がピコっと点滅した。
「馬鹿め! 居場所さえわかればこっちのもんだ。最大出力で焼き殺してやる」
冷汗が額に滲むサイノンはこわばった笑みを浮かべながら、神経質に画面を叩き続けていく。
「えーと、この座標の場所は……」
急いでズームアップしていくサイノン。
「ここだよ?」
またしても楽しそうな声が真後ろから聞こえる。
「うひぃ!」
何とシアンはサイノンの肩越しに同じ画面を見ていたのだった。
慌てたサイノンは再度空間跳躍し、今度は遠く数千キロ離れた雪山のそばまで逃げ出す。
だが、サイノンが見たのはドーム状に自分を囲む黒い粒子のあつまりだった。
『君自慢の上位神の力という奴を見せてごらん。くふふふ……』
どこからともなく飛んでくるテレパシーにサイノンは奥歯をきしませる。
「くうっ! こんなものいくらでも逃げ出してやる……。あれっ!?」
サイノンは急いで空間跳躍しようとしたが、さっきまで動いていた術式が、今は完全に沈黙している。そのありえないロックに心臓の鼓動が早鐘を打つ。
「ならばこうだ!」
サイノンは空間を割ろうとしたが、一向に割れず。さらに衝撃波で粒子を吹き飛ばそうとしたが何の効果も表れなかった。
「な、なぜだ! なぜおまえはこんなことができるんだよぉ!」
絶望がサイノンの心を覆い、恐怖に駆られた彼の喉から屈辱にまみれた絶叫があふれ出す。
『はい! 十秒前―、九、八……』
楽しそうにカウントダウンするシアンの声が頭に響いてくる。
万策尽き果てたサイノンに残された手段は、上位神の力を解放しこの世界もろとも自爆することだけだった。
「くぅぅぅ……。ただでは死なん! 思い知れ、このあばずれが!!」
サイノンは瞳に炎を宿しながら、激しい怒りを込めて印を結ぶ。
刹那、世界は耐え難いほどの閃光で満ち溢れ、全てを飲み込んでいく。その光は空間を何億度もの熱で満たし、全ての存在そのものが蒸発し、無に還っていった。
「くはーっ! はっはっは!」
最期の瞬間、サイノンは狂気に満ちた笑い声を響かせ、その声は世界が完全に消滅するまで木霊し続けた。
「き、貴様……。こ、これはお前の筋書きだったのか?」
「くふふふ、そうだよぉ。君は慎重すぎるほど慎重だからね、普通のやり方じゃシッポを出さないじゃないか。でも僕の可愛い人間爆弾ならやってくれると思ったんだよね。くふふふ」
シアンは悪戯っぽい笑顔を見せる。自分が罠だと思いもしない蒼と、好奇心旺盛なサイノン。そこに前代未聞の若返りという興味深い呪いを仕込めばサイノンは結末を見てみたくなるに違いない。シアンの奇想天外な策略はこうして成就したのだった。
「くっ! 俺としたことが……。だが、壊れかけとは言えここは俺の世界。上位神の力もあるのだ。お前には負けんよ」
サイノンは顔の前で複雑に両手を動かし、空気を切り裂くように印を組む。彼の目は炎のように輝き、「ふん!」という気合の叫びと共に、周囲の空気までが震えた。
直後、ビー玉サイズの黒い粒子が無数、空間から湧き上がり、それらがまるで生き物のように躍動するとシアンを取り囲むドームを形成していく。
「おりょりょ?」
シアンはその不思議な挙動に心を奪われ、好奇心旺盛にその黒い粒子群をキョロキョロと見回した。
「死ねぃ!」
刹那、黒い粒子は鋭いとげとなり、邪悪な意志を持ってシアンに向かって矢のように飛んでいった。
あっという間に真っ黒に蹂躙されつくされるシアン。
「はーっはっはっは! ざまぁねーな!」
大笑いするサイノンだったが、耳元で誰かがささやいた。
「君がね?」
シアンは無傷で余裕を見せ、サイノンは慌てて全力で空間跳躍し、必死に逃げる。
「くぅ、化け物め! なぜ攻撃が効かんのだ!」
百キロほど離れた海辺に逃げてきたサイノンは空中に画面を広げ、必死にシアンのデータを追っていく。
「えーい、奴はどこ行った?」
百キロ離れていても、地平線の向こうでどんどんと進む空間崩壊は見て取れるほど状況は厳しかった。
「早く倒さないと……。隠ぺいスキルを使ってるな……。だが上位神の力を使えば……。これでどうだ?」
画面に赤い点がピコっと点滅した。
「馬鹿め! 居場所さえわかればこっちのもんだ。最大出力で焼き殺してやる」
冷汗が額に滲むサイノンはこわばった笑みを浮かべながら、神経質に画面を叩き続けていく。
「えーと、この座標の場所は……」
急いでズームアップしていくサイノン。
「ここだよ?」
またしても楽しそうな声が真後ろから聞こえる。
「うひぃ!」
何とシアンはサイノンの肩越しに同じ画面を見ていたのだった。
慌てたサイノンは再度空間跳躍し、今度は遠く数千キロ離れた雪山のそばまで逃げ出す。
だが、サイノンが見たのはドーム状に自分を囲む黒い粒子のあつまりだった。
『君自慢の上位神の力という奴を見せてごらん。くふふふ……』
どこからともなく飛んでくるテレパシーにサイノンは奥歯をきしませる。
「くうっ! こんなものいくらでも逃げ出してやる……。あれっ!?」
サイノンは急いで空間跳躍しようとしたが、さっきまで動いていた術式が、今は完全に沈黙している。そのありえないロックに心臓の鼓動が早鐘を打つ。
「ならばこうだ!」
サイノンは空間を割ろうとしたが、一向に割れず。さらに衝撃波で粒子を吹き飛ばそうとしたが何の効果も表れなかった。
「な、なぜだ! なぜおまえはこんなことができるんだよぉ!」
絶望がサイノンの心を覆い、恐怖に駆られた彼の喉から屈辱にまみれた絶叫があふれ出す。
『はい! 十秒前―、九、八……』
楽しそうにカウントダウンするシアンの声が頭に響いてくる。
万策尽き果てたサイノンに残された手段は、上位神の力を解放しこの世界もろとも自爆することだけだった。
「くぅぅぅ……。ただでは死なん! 思い知れ、このあばずれが!!」
サイノンは瞳に炎を宿しながら、激しい怒りを込めて印を結ぶ。
刹那、世界は耐え難いほどの閃光で満ち溢れ、全てを飲み込んでいく。その光は空間を何億度もの熱で満たし、全ての存在そのものが蒸発し、無に還っていった。
「くはーっ! はっはっは!」
最期の瞬間、サイノンは狂気に満ちた笑い声を響かせ、その声は世界が完全に消滅するまで木霊し続けた。
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