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13. 絶望の皆殺し
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「よし、ムーシュ! 街へ行くぞ!」
道まで出てきた蒼はその胸の高鳴りを感じながら、力強く可愛いこぶしを空に突き上げた。
「アイアイサー!」
ムーシュは茶目っ気たっぷりにおどけた調子で敬礼する。
「あ……。悪魔って街に行って大丈夫なの?」
「え? 悪魔ってバレたら磔の火あぶりですよ?」
「ダメじゃん!」
「ふふーん、それでこういうことができるんですよ」
ムーシュは何か呪文を唱え、ボン! と煙に包まれる。
「ほ~ら、どうです?」
出てきたムーシュはブラウンの髪を風になびかせ、濃褐色の瞳でくるりと回る。角も無くなって確かに人間に見えなくもない。ただ、翼は出しっぱなしだ。
「人間は飛べないの!」
蒼はパシパシと治りかけの翼を叩く。
「あちゃー! 失敗、失敗!」
顔を赤らめながら、ムーシュは悪戯っぽく舌をちらっと出した。
◇
二人はなだらかに下っていく方へ道を歩いていく。
「街に行ったら魔石を換金して魔道具屋に行けばいいんだね?」
蒼はスキップをしながら上機嫌に聞いた。
「多分そうなりますけど……。あたしもやったことないんで……」
ムーシュは自信なさげに首をかしげる。
「まぁ、行けば何とかなるよ、きっと!」
まだ見ぬ異世界の街に期待で胸いっぱいの蒼は、嬉しそうに言った。
その時だった。いきなり森の奥からガサガサという音とともに、タトゥーだらけのむさくるしい男どもが群れをなして現れた。
一様に野蛮なひげを揺らし、邪悪な笑顔を携えながら、その手に持つ刃物をちらつかせている。
面倒なことになったと、蒼はウンザリしながら後ずさる。
「おうおう、ねぇちゃん! 子連れでこんなところで何やってんだ?」
頭目の男が危険な輝きを持つ眼差しで、にやけながら声をかけてくる。
ムーシュはすばやく蒼を抱き寄せ、キッと男をにらんだ。
「何だっていいでしょ? どいてください!」
「ほう……、なかなかいい身体をしてるな……。俺の女にしてやろう」
男はムーシュの身体を舐めまわすように見ながら、いやらしい笑みを浮かべる。
「結構です!」
「まぁ、断ろうが何しようが結果は一緒なんだがな」
狂気すら感じさせるゲラゲラゲラという男たちの笑い声が森に響き渡る。
蒼は頭目を鑑定してみた。レベルは百ちょっと、自分なら楽勝だがムーシュには荷が重そうだった。
「主様、ぶっ殺しちゃってください」
ムーシュは蒼をキュッと抱きしめながら言った。
しかし、初めて会った人間をいきなり殺すのは抵抗がある。なんとか殺さずにすむ方法を探したかった。
ピョンとムーシュから跳びおりた蒼は、頭目を指さして叫ぶ。
「僕らは女神に連なる者。邪魔をするなら天罰で全員死ぬ事になるぞ!」
しかし、可愛い幼女の言葉を真に受ける者はいない。
「はっはっは! ガキはすっこんでろ!」
頭目は懐からナイフを取り出すと、目にもとまらぬ速さで蒼めがけて放った。
しかし、レベルが三百近い蒼の目には止まって見える。
手の甲でナイフをはじき、稲妻のごとく男に向かってダッシュする蒼。
へ?
いきなり幼女が突っ込んできたことに男は焦ったが間に合わない。
「どっせい!」
蒼は全ての力を込めて男に飛び蹴りを放った。金髪が太陽の光に煌めきながら宙を舞う。
防御も間に合わずまともに食らった男はもんどりうって転がった。
ぐはぁ!
ニヤニヤしていた周りの男たちはそのあまりの出来事に唖然として静まり返る。
「こ、このガキ! ぶっ殺してやる!」
真っ赤になって起き上がった頭目は、ビュンビュンと大きな剣を振り回し、突っ込んでくる。
だが、レベル差が二百近くもあれば戦闘力の差は圧倒的である。蒼は止まって見える剣を涼しい顔で避けると胸元に潜り込んで金的を思いっきり蹴り上げた。
悲痛な叫びを上げながら倒れ込む頭目。
「僕らには女神の加護がある。お前らじゃ勝てない。今すぐ立ち去るなら見逃してやる。続けるなら皆殺しだぞ!」
蒼は碧眼をキラリと光らせながら頭目に言い放った。
「くぅぅぅ……。馬鹿が……。子供に舐められて山賊やってられるかってんだよ! 弓兵! 女を狙え!」
ガサガサっと音がして脇の木の上に隠れていた弓兵数人が弓を引き絞り、ムーシュを狙う。
ひぃぃぃ!
ムーシュは真っ青になって後ずさりする。
「馬鹿野郎! 止めろ! 殺すぞ!」
蒼は真っ赤になって叫ぶ。いくら蒼でも複数の弓からムーシュを守ることはできない。
「ははー! やれるもんならやってみろ!」
頭目は勝ち誇った風に言い放つ。
「ブラフじゃないぞ! 殺すぞ! 皆殺しだ!」
蒼は必死に叫ぶが頭目には響かない。
「撃てーー!」
「馬鹿モンDeath!」
刹那、山賊どもは全員紫の光に包まれた。男たちはバタバタと倒れ、弓兵は次々と木から落ちてきて転がっていく。
あぁぁぁ……。
蒼は頭を抱えて地面にうずくまる。
やってしまった。初めて会った人間を皆殺しにしてしまったのだ。大量殺人犯である。
くぅぅぅ……。
正当防衛と言えども、彼らの人生をすべて奪うなんて許されるものなのだろうか?
高校生だった蒼は深く打ちのめされた。
道まで出てきた蒼はその胸の高鳴りを感じながら、力強く可愛いこぶしを空に突き上げた。
「アイアイサー!」
ムーシュは茶目っ気たっぷりにおどけた調子で敬礼する。
「あ……。悪魔って街に行って大丈夫なの?」
「え? 悪魔ってバレたら磔の火あぶりですよ?」
「ダメじゃん!」
「ふふーん、それでこういうことができるんですよ」
ムーシュは何か呪文を唱え、ボン! と煙に包まれる。
「ほ~ら、どうです?」
出てきたムーシュはブラウンの髪を風になびかせ、濃褐色の瞳でくるりと回る。角も無くなって確かに人間に見えなくもない。ただ、翼は出しっぱなしだ。
「人間は飛べないの!」
蒼はパシパシと治りかけの翼を叩く。
「あちゃー! 失敗、失敗!」
顔を赤らめながら、ムーシュは悪戯っぽく舌をちらっと出した。
◇
二人はなだらかに下っていく方へ道を歩いていく。
「街に行ったら魔石を換金して魔道具屋に行けばいいんだね?」
蒼はスキップをしながら上機嫌に聞いた。
「多分そうなりますけど……。あたしもやったことないんで……」
ムーシュは自信なさげに首をかしげる。
「まぁ、行けば何とかなるよ、きっと!」
まだ見ぬ異世界の街に期待で胸いっぱいの蒼は、嬉しそうに言った。
その時だった。いきなり森の奥からガサガサという音とともに、タトゥーだらけのむさくるしい男どもが群れをなして現れた。
一様に野蛮なひげを揺らし、邪悪な笑顔を携えながら、その手に持つ刃物をちらつかせている。
面倒なことになったと、蒼はウンザリしながら後ずさる。
「おうおう、ねぇちゃん! 子連れでこんなところで何やってんだ?」
頭目の男が危険な輝きを持つ眼差しで、にやけながら声をかけてくる。
ムーシュはすばやく蒼を抱き寄せ、キッと男をにらんだ。
「何だっていいでしょ? どいてください!」
「ほう……、なかなかいい身体をしてるな……。俺の女にしてやろう」
男はムーシュの身体を舐めまわすように見ながら、いやらしい笑みを浮かべる。
「結構です!」
「まぁ、断ろうが何しようが結果は一緒なんだがな」
狂気すら感じさせるゲラゲラゲラという男たちの笑い声が森に響き渡る。
蒼は頭目を鑑定してみた。レベルは百ちょっと、自分なら楽勝だがムーシュには荷が重そうだった。
「主様、ぶっ殺しちゃってください」
ムーシュは蒼をキュッと抱きしめながら言った。
しかし、初めて会った人間をいきなり殺すのは抵抗がある。なんとか殺さずにすむ方法を探したかった。
ピョンとムーシュから跳びおりた蒼は、頭目を指さして叫ぶ。
「僕らは女神に連なる者。邪魔をするなら天罰で全員死ぬ事になるぞ!」
しかし、可愛い幼女の言葉を真に受ける者はいない。
「はっはっは! ガキはすっこんでろ!」
頭目は懐からナイフを取り出すと、目にもとまらぬ速さで蒼めがけて放った。
しかし、レベルが三百近い蒼の目には止まって見える。
手の甲でナイフをはじき、稲妻のごとく男に向かってダッシュする蒼。
へ?
いきなり幼女が突っ込んできたことに男は焦ったが間に合わない。
「どっせい!」
蒼は全ての力を込めて男に飛び蹴りを放った。金髪が太陽の光に煌めきながら宙を舞う。
防御も間に合わずまともに食らった男はもんどりうって転がった。
ぐはぁ!
ニヤニヤしていた周りの男たちはそのあまりの出来事に唖然として静まり返る。
「こ、このガキ! ぶっ殺してやる!」
真っ赤になって起き上がった頭目は、ビュンビュンと大きな剣を振り回し、突っ込んでくる。
だが、レベル差が二百近くもあれば戦闘力の差は圧倒的である。蒼は止まって見える剣を涼しい顔で避けると胸元に潜り込んで金的を思いっきり蹴り上げた。
悲痛な叫びを上げながら倒れ込む頭目。
「僕らには女神の加護がある。お前らじゃ勝てない。今すぐ立ち去るなら見逃してやる。続けるなら皆殺しだぞ!」
蒼は碧眼をキラリと光らせながら頭目に言い放った。
「くぅぅぅ……。馬鹿が……。子供に舐められて山賊やってられるかってんだよ! 弓兵! 女を狙え!」
ガサガサっと音がして脇の木の上に隠れていた弓兵数人が弓を引き絞り、ムーシュを狙う。
ひぃぃぃ!
ムーシュは真っ青になって後ずさりする。
「馬鹿野郎! 止めろ! 殺すぞ!」
蒼は真っ赤になって叫ぶ。いくら蒼でも複数の弓からムーシュを守ることはできない。
「ははー! やれるもんならやってみろ!」
頭目は勝ち誇った風に言い放つ。
「ブラフじゃないぞ! 殺すぞ! 皆殺しだ!」
蒼は必死に叫ぶが頭目には響かない。
「撃てーー!」
「馬鹿モンDeath!」
刹那、山賊どもは全員紫の光に包まれた。男たちはバタバタと倒れ、弓兵は次々と木から落ちてきて転がっていく。
あぁぁぁ……。
蒼は頭を抱えて地面にうずくまる。
やってしまった。初めて会った人間を皆殺しにしてしまったのだ。大量殺人犯である。
くぅぅぅ……。
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