64 / 68
64. 次元牢獄
しおりを挟む
「ハーッハッハッハ! 女神の手下どもめ、我らの怒りを思い知れ!」
漆黒のサイバースーツに身を包んだ大柄な男が、紫色の光に包まれながら上空からゆっくりと降りてくる。その禍々しい姿はまるで魔王が降臨するかのようにすら見えた。
あっ……。
ソリスは男の顔を見てつい声を漏らす。それはジグラートで戦ったテロリストだった。確かにシアンが息の根を止めたはずなのに、なぜ復活しているのだろうか?
ソリスはその得体の知れない邪悪な存在の復活に、冷や汗がじわりと額に浮かぶのを感じた。
「休んでもらおかしら」
珍しく怒りを露わにしたイヴィットは、空間を裂いて黄金に輝く弓矢を取り出すと、ためらうことなく男の心臓に向けて放つ――――。
バシュッ!
美しい緑色の微粒子を振りまきながら、風を切って男へと一直線に突き進む黄金の矢。その輝きはまるで、煌めく彗星のようだった。
しかし、男はニヤリと笑うとフッと消えてしまった。一瞬辺りにチラチラと無数の気配を感じたが、それもまた消えてしまう。
「えっ!?」「ど、どこ……?」
突然の消失に一行は動揺し、顔色を失った。戦闘中に敵を見失うなんてことは、あってはならない重大なミスだった。訓練中に何度もシアンのゲンコツで戒められたのに、実戦でやらかしてしまった自分の不甲斐なさに、ソリスは口をキュッと結んだ。
「なんだ、どうしようもないド素人だな……」
男は一行の背後で腕を組み、仁王立ちして不敵に鼻で嗤っていた。その表情には明らかな余裕が見受けられる。これはいつでも自分たちを瞬殺できる、という意味なのだろう。
「くっ……」
驚いて振り返ったソリスは奥歯をギリッと鳴らした。
確かにシアンとの戦闘訓練ではよくやられた技ではあったが、実戦の緊張の中ではそれを生かすことができなかった。
「女神はこんなおばさんたちをどうしようって言うんだ? 余程の人材難だな、ハッハッハ」
ソリスはそんな挑発を受け流す。戦場では平常心を失ったものから死ぬのだ。深呼吸をしたソリスはポケットから太い万年筆のような金色の短い筒を取り出すと、ポチッとボタンを押した。
ヴゥン……。
電子音が響き、筒の先から漆黒の炎が噴き出してくる。炎は徐々に強まり、やがて暗黒の刀剣を形作った。これはシアンから卒業祝いにもらった、空間を斬り裂ける万能の剣だった。
『フォーメーションCの5!』
ソリスはテレパシーでフィリアとイヴィットにサインを送る。
『K!』『K!』
二人はキュッと口を結び、戦闘態勢に入った。
「何言ってんのよ! あんたなんか子ネコにやられたくせに!」
ソリスはクルクルッと漆黒の剣を回すと男に向け、挑発的な笑みを見せる。その笑顔には先ほどとは打って変わって自信と余裕が満ちていた。
「お、お前……なんでそれを……。あっ! お前あの時の……」
男の顔色がみるみる変わり、その瞳には言葉にできない感情の嵐が渦巻く。
「次元牢獄!」
その瞬間を待っていたかのようにフィリアの腕が弧を描いた。その軌跡に従うかのように、琥珀色に輝く微粒子が男の周囲に幻想的な光の壁を築き上げていく。これで男は逃げられない。
「鷹眼神射!」
イヴィットの指先から、翠玉のような光を纏った矢が放たれた。その瞬間、花畑の空気が震える。
輝く軌跡を描きながら、美しくも危険な光の筋が空間を切り裂き、まるで生き物のように矢は男の心臓めがけ飛んで行く。
「くっ! 小癪な!」
男は顔をしかめながら空中に青く煌めく魔法陣をパパパッと展開し、矢から守ろうとしたが、鷹眼神射は巧みに回避して、そのまま男へと突っ込んでいった――――。
チッ! うりゃぁ!
右のこぶしを赤く輝かせた男は、矢の進路を見据えた。次の瞬間、こぶしが矢を捉え、粉々に砕け散る。
バァン!
爆発音が花畑にこだまし、周囲の静寂を一気に破った。
「くはは、残念でした!」
男が笑った時だった――――。
ソイヤー!
矢の着弾を見計らって男の背後に転移したソリスが、間髪入れずに漆黒の剣で男の背後をけさ切りにした。
ザスッ!
確かな手ごたえを感じたソリス。究極の剣は、まるで天の意志そのものであるかのように空間を切り裂き、罪人に裁きを下した。仲間との絆が生んだ、この上ないチームプレーの勝利の瞬間に見えた――――が。
ぐほぉぉぉ!!
なんと、血を吐いて倒れたのはソリスの方だった。
背後にはけさ切りによる深い傷が走り、その傷口からは血が溢れている。ソリスは苦痛に顔を歪めながら、色鮮やかな花畑にその体を預けた。
「馬鹿が! お前らド素人の手の内なんて全部わかってんだよ。はっはっは!」
嘲笑う男が背中から下ろしたのは、星屑を閉じ込めたかのような透明なシールド。その内側では、黄金の微粒子が舞い、神々しい輝きを放っていた。これこそが、あらゆる攻撃を反射する、まるで天界から持ち出されたかのようなこの世ならぬチート防具だったのだ。
漆黒のサイバースーツに身を包んだ大柄な男が、紫色の光に包まれながら上空からゆっくりと降りてくる。その禍々しい姿はまるで魔王が降臨するかのようにすら見えた。
あっ……。
ソリスは男の顔を見てつい声を漏らす。それはジグラートで戦ったテロリストだった。確かにシアンが息の根を止めたはずなのに、なぜ復活しているのだろうか?
ソリスはその得体の知れない邪悪な存在の復活に、冷や汗がじわりと額に浮かぶのを感じた。
「休んでもらおかしら」
珍しく怒りを露わにしたイヴィットは、空間を裂いて黄金に輝く弓矢を取り出すと、ためらうことなく男の心臓に向けて放つ――――。
バシュッ!
美しい緑色の微粒子を振りまきながら、風を切って男へと一直線に突き進む黄金の矢。その輝きはまるで、煌めく彗星のようだった。
しかし、男はニヤリと笑うとフッと消えてしまった。一瞬辺りにチラチラと無数の気配を感じたが、それもまた消えてしまう。
「えっ!?」「ど、どこ……?」
突然の消失に一行は動揺し、顔色を失った。戦闘中に敵を見失うなんてことは、あってはならない重大なミスだった。訓練中に何度もシアンのゲンコツで戒められたのに、実戦でやらかしてしまった自分の不甲斐なさに、ソリスは口をキュッと結んだ。
「なんだ、どうしようもないド素人だな……」
男は一行の背後で腕を組み、仁王立ちして不敵に鼻で嗤っていた。その表情には明らかな余裕が見受けられる。これはいつでも自分たちを瞬殺できる、という意味なのだろう。
「くっ……」
驚いて振り返ったソリスは奥歯をギリッと鳴らした。
確かにシアンとの戦闘訓練ではよくやられた技ではあったが、実戦の緊張の中ではそれを生かすことができなかった。
「女神はこんなおばさんたちをどうしようって言うんだ? 余程の人材難だな、ハッハッハ」
ソリスはそんな挑発を受け流す。戦場では平常心を失ったものから死ぬのだ。深呼吸をしたソリスはポケットから太い万年筆のような金色の短い筒を取り出すと、ポチッとボタンを押した。
ヴゥン……。
電子音が響き、筒の先から漆黒の炎が噴き出してくる。炎は徐々に強まり、やがて暗黒の刀剣を形作った。これはシアンから卒業祝いにもらった、空間を斬り裂ける万能の剣だった。
『フォーメーションCの5!』
ソリスはテレパシーでフィリアとイヴィットにサインを送る。
『K!』『K!』
二人はキュッと口を結び、戦闘態勢に入った。
「何言ってんのよ! あんたなんか子ネコにやられたくせに!」
ソリスはクルクルッと漆黒の剣を回すと男に向け、挑発的な笑みを見せる。その笑顔には先ほどとは打って変わって自信と余裕が満ちていた。
「お、お前……なんでそれを……。あっ! お前あの時の……」
男の顔色がみるみる変わり、その瞳には言葉にできない感情の嵐が渦巻く。
「次元牢獄!」
その瞬間を待っていたかのようにフィリアの腕が弧を描いた。その軌跡に従うかのように、琥珀色に輝く微粒子が男の周囲に幻想的な光の壁を築き上げていく。これで男は逃げられない。
「鷹眼神射!」
イヴィットの指先から、翠玉のような光を纏った矢が放たれた。その瞬間、花畑の空気が震える。
輝く軌跡を描きながら、美しくも危険な光の筋が空間を切り裂き、まるで生き物のように矢は男の心臓めがけ飛んで行く。
「くっ! 小癪な!」
男は顔をしかめながら空中に青く煌めく魔法陣をパパパッと展開し、矢から守ろうとしたが、鷹眼神射は巧みに回避して、そのまま男へと突っ込んでいった――――。
チッ! うりゃぁ!
右のこぶしを赤く輝かせた男は、矢の進路を見据えた。次の瞬間、こぶしが矢を捉え、粉々に砕け散る。
バァン!
爆発音が花畑にこだまし、周囲の静寂を一気に破った。
「くはは、残念でした!」
男が笑った時だった――――。
ソイヤー!
矢の着弾を見計らって男の背後に転移したソリスが、間髪入れずに漆黒の剣で男の背後をけさ切りにした。
ザスッ!
確かな手ごたえを感じたソリス。究極の剣は、まるで天の意志そのものであるかのように空間を切り裂き、罪人に裁きを下した。仲間との絆が生んだ、この上ないチームプレーの勝利の瞬間に見えた――――が。
ぐほぉぉぉ!!
なんと、血を吐いて倒れたのはソリスの方だった。
背後にはけさ切りによる深い傷が走り、その傷口からは血が溢れている。ソリスは苦痛に顔を歪めながら、色鮮やかな花畑にその体を預けた。
「馬鹿が! お前らド素人の手の内なんて全部わかってんだよ。はっはっは!」
嘲笑う男が背中から下ろしたのは、星屑を閉じ込めたかのような透明なシールド。その内側では、黄金の微粒子が舞い、神々しい輝きを放っていた。これこそが、あらゆる攻撃を反射する、まるで天界から持ち出されたかのようなこの世ならぬチート防具だったのだ。
20
お気に入りに追加
254
あなたにおすすめの小説
1×∞(ワンバイエイト) 経験値1でレベルアップする俺は、最速で異世界最強になりました!
マツヤマユタカ
ファンタジー
23年5月22日にアルファポリス様より、拙著が出版されました!そのため改題しました。
今後ともよろしくお願いいたします!
トラックに轢かれ、気づくと異世界の自然豊かな場所に一人いた少年、カズマ・ナカミチ。彼は事情がわからないまま、仕方なくそこでサバイバル生活を開始する。だが、未経験だった釣りや狩りは妙に上手くいった。その秘密は、レベル上げに必要な経験値にあった。実はカズマは、あらゆるスキルが経験値1でレベルアップするのだ。おかげで、何をやっても簡単にこなせて――。異世界爆速成長系ファンタジー、堂々開幕!
タイトルの『1×∞』は『ワンバイエイト』と読みます。
男性向けHOTランキング1位!ファンタジー1位を獲得しました!【22/7/22】
そして『第15回ファンタジー小説大賞』において、奨励賞を受賞いたしました!【22/10/31】
アルファポリス様より出版されました!現在第四巻まで発売中です!
コミカライズされました!公式漫画タブから見られます!【24/8/28】
*****************************
***毎日更新しています。よろしくお願いいたします。***
*****************************
マツヤマユタカ名義でTwitterやってます。
見てください。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!
ねむたん
ファンタジー
私は砂漠の町で家族と一緒に暮らしていた。そのうち前世のある記憶が蘇る。あの日本の味。温かい味噌汁、焼き魚、醤油で整えた料理——すべてが懐かしくて、恋しくてたまらなかった。
私はその気持ちを家族に打ち明けた。前世の記憶を持っていること、そして何より、あの日本の食文化が恋しいことを。家族は私の決意を理解し、旅立ちを応援してくれた。私は幼馴染のカリムと共に、異国の地で新しい食材や文化を探しに行くことに。
豪華地下室チートで異世界救済!〜僕の地下室がみんなの憩いの場になるまで〜
自来也
ファンタジー
カクヨム、なろうで150万PV達成!
理想の家の完成を目前に異世界に転移してしまったごく普通のサラリーマンの翔(しょう)。転移先で手にしたスキルは、なんと「地下室作成」!? 戦闘スキルでも、魔法の才能でもないただの「地下室作り」
これが翔の望んだ力だった。
スキルが成長するにつれて移動可能、豪華な浴室、ナイトプール、釣り堀、ゴーカート、ゲーセンなどなどあらゆる物の配置が可能に!?
ある時は瀕死の冒険者を助け、ある時は獣人を招待し、翔の理想の地下室はいつのまにか隠れた憩いの場になっていく。
※この作品は小説家になろう、カクヨムにも投稿しております。
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
小さな大魔法使いの自分探しの旅 親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします
藤なごみ
ファンタジー
※2024年10月下旬に、第2巻刊行予定です
2024年6月中旬に第一巻が発売されます
2024年6月16日出荷、19日販売となります
発売に伴い、題名を「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、元気いっぱいに無自覚チートで街の人を笑顔にします~」→「小さな大魔法使いの自分探しの旅~親に見捨てられたけど、無自覚チートで街の人を笑顔にします~」
中世ヨーロッパに似ているようで少し違う世界。
数少ないですが魔法使いがが存在し、様々な魔導具も生産され、人々の生活を支えています。
また、未開発の土地も多く、数多くの冒険者が活動しています
この世界のとある地域では、シェルフィード王国とタターランド帝国という二つの国が争いを続けています
戦争を行る理由は様ながら長年戦争をしては停戦を繰り返していて、今は辛うじて平和な時が訪れています
そんな世界の田舎で、男の子は産まれました
男の子の両親は浪費家で、親の資産を一気に食いつぶしてしまい、あろうことかお金を得るために両親は行商人に幼い男の子を売ってしまいました
男の子は行商人に連れていかれながら街道を進んでいくが、ここで行商人一行が盗賊に襲われます
そして盗賊により行商人一行が殺害される中、男の子にも命の危険が迫ります
絶体絶命の中、男の子の中に眠っていた力が目覚めて……
この物語は、男の子が各地を旅しながら自分というものを探すものです
各地で出会う人との繋がりを通じて、男の子は少しずつ成長していきます
そして、自分の中にある魔法の力と向かいながら、色々な事を覚えていきます
カクヨム様と小説家になろう様にも投稿しております
異世界着ぐるみ転生
こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生
どこにでもいる、普通のOLだった。
会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。
ある日気が付くと、森の中だった。
誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ!
自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。
幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り!
冒険者?そんな怖い事はしません!
目指せ、自給自足!
*小説家になろう様でも掲載中です
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる