29 / 68
29. 聖約
しおりを挟む「一応確認させてもらうけど、君は最寄田静香さん……で間違いないよね?」
「は、はい……」
わたしは頷く。
「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」
茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。
「うん? どうかした?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……警戒をしている感じ?」
「ま、まあ、そうですね……」
一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。
「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」
「そ、そうですかね⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。
「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」
「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、君に用があるからだよ」
「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」
「! ははははは……!」
青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」
青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。
「え? マー、マーク……? ええっと……?」
「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」
「ス、スペースポリスマン⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のね」
ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。
「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうかい?」
「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」
「初めて?」
ノリタカさんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてですよ!」
「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」
ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」
「そ、それはそうらしいですけど……」
「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」
「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」
「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」
ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっと待ってくれ……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………」
ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」
ノリタカさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」
「いや、どうしてかなって言われても……」
「まだ不信感は拭えていないかな?」
「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」
「作戦を遂行する上での名前だよ」
「それはなんとなく分かりますが……本名は?」
「わけあってそれは明かせない」
「ええ……」
ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。
「……マズいかな?」
「いや、いいです。失礼します」
「待っているよ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。
「やあ!」
「……何故ここに?」
「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」
ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」
「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」
「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」
「特例で認めてもらったよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」
「はあ……調査って?」
「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」
「い、異常ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」
「はいいいいっ⁉」
ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
「は、はい……」
わたしは頷く。
「ふむ……四日目か、やっと出会うことが出来て良かったよ……」
茶色の髪をした青年は胸に手を当てて、爽やかにウインクをしてくる。なかなかに整った顔立ちをしている。短髪はきれいにセットされており、清潔さを感じさせる。まさに世の女性の多くにとって理想に近いイケメンだ。だがしかし……。
「……」
わたしは自然と距離を置こうとする。青年がそれに気が付いて、首を傾げる。
「うん? どうかした?」
「いや、なんというか……」
「ひょっとして……警戒をしている感じ?」
「ま、まあ、そうですね……」
一昨昨日の一昨日、一昨日の昨日、昨日の今日だし、しょうがないだろう。わたしは素直に頷くことにする。
「ふふっ……俺は決して怪しい者じゃないよ」
「そ、そうですかね⁉」
わたしは思わず大声を上げてしまう。ブレザー姿の高校生が集まっている中で、宇宙服を着ている男性は怪しい寄りだと思うが。ここは種子島宇宙センターではない。
「そうだよ。だからそんなに警戒をしないでくれ」
「……何故にわたしの名前を知っているんですか?」
「それはもちろん、君に用があるからだよ」
「よ、用があるって……もちろん個人差はあると思いますが、女子は宇宙にそこまで興味を持たないというか……宇宙飛行士さんにそこまで憧れはないというか……」
「! ははははは……!」
青年は声高らかに笑う。わたしはちょっとムッとしながら尋ねる。
「な、なにがおかしいんですか?」
「いや、悪いね……俺は宇宙飛行士じゃないよ。こういうものだ」
青年は宇宙服の左胸のマークを見せてくる。
「え? マー、マーク……? ええっと……?」
「ああ、俺のコードネームはデストロイ=ノリタカという。スペースポリスマンさ」
「ス、スペースポリスマン⁉」
わたしは思いがけないフレーズに驚く。
「そうだよ、ごくごく普通のね」
ノリタカと名乗った青年は髪をかき上げる。
「スペースポリスマンはごくごく普通ではありませんよ!」
「そうかい?」
「そうですよ! っていうか、初めて言いましたよ、そのフレーズ!」
「初めて?」
ノリタカさんは驚いて目を丸くする。
「ええ、初めてですよ!」
「トウキョウはこんなに大きな街だというのに?」
ノリタカさんは両手を大きく広げて、周囲を見回す。
「はい」
「近くにある新宿駅という場所はこの世界で一番の利用者数だと聞いたけど?」
「そ、それはそうらしいですけど……」
「それならば中にはいるだろう、スペースポリスマンの一人や二人くらい」
「ポ、ポリスマンは一杯いますけど、スペースはいないんじゃないですか……そんないちいち確認したりとかはしませんから知らないですけど」
「スペースポリスマンがいないって? ふむ、この日本という国……情報以上に治安が良いようだね……」
ノリタカさんは腕を組んで感心したように呟く。
「……あの、もういいですか? ホームルームが始まってしまいますので……」
わたしはその場から離れようとする。
「あ、ちょっと待ってくれ……!」
「はい?」
わたしは呼び止められ、振り返ってしまう。
「………」
ノリタカさんはなにやら取り出した機器を確認し、周囲を伺う。
「あ、あの……?」
「……うん、とりあえずは大丈夫のようだね」
ノリタカさんは頷く。
「は、はあ……?」
「……そうだな……放課後にまた話をしたいのだけど……お願い出来るかな?」
「え、ええ……」
わたしは露骨に困惑する。
「おや、困惑しているようだね。どうしてかな?」
「いや、どうしてかなって言われても……」
「まだ不信感は拭えていないかな?」
「不信感まみれですよ。大体コードネームってなんですか?」
「作戦を遂行する上での名前だよ」
「それはなんとなく分かりますが……本名は?」
「わけあってそれは明かせない」
「ええ……」
ノリタカだというから、日本系なのかな……。しかし、本名不詳のスペースポリスマンとは……どうしたものか……。
「……マズいかな?」
「いや、いいです。失礼します」
「待っているよ」
わたしは軽く会釈をし、その場を後にして、教室に向かう。夕方になり、ホームルームも終わる。この恥ずかしいイケメンと鉢合わせしたりしないように裏門から帰れば……。
「げっ……」
裏門から帰ろうとしたわたしは顔をしかめる。ノリタカさんが何故かいたからだ。
「やあ!」
「……何故ここに?」
「いや、俺もホームルームが早目に終わったからね……この辺りを調査していた」
ノリタカさんは機器を地面などにかざしながら歩き回っている。
「……そ、そういえば、もしかしてなんですけど……」
「ああ、俺はこの学園の転入生だよ」
「せ、制服が宇宙服で良いんですか?」
「特例で認めてもらったよ」
「そんなことが可能なんですか?」
「可能だ。なんといってもスペースポリスマンだからね」
「はあ……調査って?」
「良い質問だ。異常がないかをチェックしていたんだ」
「い、異常ですか?」
「そうだ……お、異常反応……現れたな、エイリアンだ。さあ、共に迎撃しよう」
「はいいいいっ⁉」
ノリタカさんの提案にわたしは驚く。
65
お気に入りに追加
251
あなたにおすすめの小説

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~
土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。
しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。
そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。
両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。
女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

望んでいないのに転生してしまいました。
ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。
折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。
・・と、思っていたんだけど。
そう上手くはいかないもんだね。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神による異世界転生〜転生した私の異世界ライフ〜
シュガーコクーン
ファンタジー
女神のうっかりで死んでしまったOLが一人。そのOLは、女神によって幼女に戻って異世界転生させてもらうことに。
その幼女の新たな名前はリティア。リティアの繰り広げる異世界ファンタジーが今始まる!
「こんな話をいれて欲しい!」そんな要望も是非下さい!出来る限り書きたいと思います。
素人のつたない作品ですが、よければリティアの異世界ライフをお楽しみ下さい╰(*´︶`*)╯
旧題「神による異世界転生〜転生幼女の異世界ライフ〜」
現在、小説家になろうでこの作品のリメイクを連載しています!そちらも是非覗いてみてください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる