アラフォーだって輝ける! 美しき不死チート女剣士の無双冒険譚 ~仲良しトリオと呪われた祝福~

月城 友麻

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13. 筋鬼猿王

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 ボス部屋を出て、隅の小部屋で堅いパンと干し肉をかじり、お茶を飲みながら疲れをいやすソリス。

「はぁ……。詰めが甘かったなぁ……」

 勝って浮かれて、最後に訳わからない攻撃を食らってしまったことに頭を抱えた。

「一体何を食らったんだ……?」

 人心地着いたところで、ソリスは大きく息をつくと、恐る恐るステータスウィンドウを開いてみる――――。

ーーーーーーーーーーーーーー
ソリス:ヒューマン 女 三十九歳
レベル:95

 :
 :

ギフト:女神の祝福アナスタシス【呪い:若化】
ーーーーーーーーーーーーーー

「ゲッ……。何これ……」

 ソリスは顔を歪めて思わず宙を仰いだ。

 レベルが95ともはやSランクになっているのも驚きだったが、それ以上に【呪い:若化】という不気味な文言に、ソリスは嫌な汗が噴きだしてきた。

 【若化】などという呪いは聞いたこともない。文字だけ見れば『若くなる』ということであり、いい事なのではないかと思うが、ゴスロリ少女が『ざまぁ!』と嗤っていた呪いである。きっと面倒な呪いに違いない。

 それに呪いは冒険者の間ではひどく忌み嫌われており、呪い持ちは邪険に扱われ、遠ざけられてしまうのだ。それは呪いの中には伝染力を持つ物もあり、触れた人に伝染うつったり、増殖したりしたケースもあったからでもあるが、ゲンを担ぐ命懸けの職業である冒険者にとって、呪いが『気分を落とす縁起の悪いもの』とされていることが大きなところだった。

 この呪いも他の人に伝染うつしてしまったとしたら大問題である。華年絆姫プリムローズは名誉どころの話ではなく、呪われた汚点になってしまう。

「マズい、マズいわ……」

 なんとか解呪しなくてはならなかったが、呪いなどどうやって解いたらいいか分からない。ソリスは頭を抱え、必死に解決策を模索する。

 しかし、過去に呪われた冒険者はいつの間にかいなくなってしまっていて、治ったという話は聞いたことが無かったのだ。

 いったい彼らはどうしたのだろう……?

 ソリスはガックリと肩を落とし、重いため息をついた。

 一旦ギルドへ戻ろうとも思ったが、さらなる祝福を受けるのは目に見えている。今頃入り口には多くの冒険者がソリスを待っているだろう。

「マズい……、マズいぞ……」

 こんな状態ではとても祝福を受ける気にはなれない。祝福されるのは呪いを解いてからだ。華年絆姫プリムローズの名を穢すわけにはいかないのだ。

「あぁぁぁ……、参ったなぁ……」

 しばらく頭を抱えていたソリスだったが、いつまでもここにはいられない。

 ふぅと、大きく息をつくとソリスはダンジョンを進もうと決意した。そもそもこの呪いがどんな物かもわからないのであれば方針も決まらないし、解呪にかかるであろう莫大なお金も稼いでおかねばならなかったのだ。

「チクショー! ゴスロリめ!!」

 ソリスは自分の太ももをパンと叩くと立ち上がり、ギリッと奥歯を鳴らした。


        ◇


 レベル95もあれば三十階台のモンスターはもはや雑魚だった。解呪資金になりそうな美味しい魔物は倒し、面倒くさそうな敵は戦わずに俊足で駆け抜けていく。大抵の魔物はもはやソリスの逃げ足の速さに追いついてこれないのだ。

 数時間で歴代最高到達地点である三十九階まで到達してしまったソリス――――。

 結局、呪いらしき兆候は何も見えず、いつもと変わりない状況にソリスは首をかしげた。

「さて、どうするか……?」

 ソリスは地下四十階の巨大な扉を見上げながら、大きくため息をつく。

 しばらくは解呪のためにあちこちを奔走しなくてはならない。もしかしたら他の街へも行くことになるかもしれないのだ。

 あるならば、ここで前人未到の四十階を制覇しておくのは悪くない選択だった。どこへ行くにしても歴代最強の冒険者であれば、それなりの便宜を図ってくれるに違いない。

 ここは全く情報がないのでどんなボスが出てくるかもわからないが、それは先延ばしにしても状況は変わらないのだ。

 ここでもうひと頑張りして華年絆姫プリムローズの名を揺るがぬものにして、解呪に専念しよう! ソリスは何度か深呼吸をするとパンパンと頬を張って気合を入れ、重厚な扉を押し開けた。


         ◇


 薄暗い広間、魔法のランプが徐々に照らし出す中に、小柄な生き物が何かをやっている――――。

 は……?

 ソリスが目を凝らして見ると、サルが人差し指一本で逆立ちをしながら筋トレをしているではないか。その徹底的に鍛え上げられた上半身は、上腕二頭筋も大胸筋も豊かに膨らみ、すさまじいほどのオーラを発していた。それは筋鬼猿王バッフガイバブーン、最強拳闘士の名を欲しいままにしていたサルの魔物だった。

「ほう……? お客さんか、珍しい」

 甲高い声を上げながら、筋鬼猿王バッフガイバブーンはピョンと宙返りして、立った。手で汗をぬぐい、肩をグルグルと回しながらソリスを品定めする。全身を覆う色艶の良いシルバーの毛並み、首の周りにはまるでネックレスのような赤い色の毛が生え、黄色い顔の下には白いあごひげを伸ばしていた。

 体を鍛える魔物など聞いたことがなかったソリスは大剣を構え直し、慎重に出方をうかがう。

「大剣か、お主、無粋よのう……」

 筋鬼猿王バッフガイバブーンはそんなソリスを鼻で嗤うと、両手のこぶしに鋼鉄のメリケンサックをはめ、ピョンピョンと軽く飛び上がると、首をグルグルと回した。どうやら武器はこれだけらしい。

 剣士と拳闘士であれば圧倒的に剣士の方が有利である。ソリスはこれ幸いと突っ込んでいった。

 うぉぉぉぉぉ!

 レベル95の圧倒的な膂力りょりょくを全開させるソリス。最初から出し惜しみはなし、振り上げた大剣を一気に筋鬼猿王バッフガイバブーンの脳天へと放った――――。

「馬鹿が……」

 筋鬼猿王バッフガイバブーンはバカにしたようにつぶやくと、目にも止まらぬ速さでジャブを放ち、メリケンサックで大剣の刀身を撃ち抜いた。

 パリーン……。

 あっさりと砕け散るソリスの大剣――――。

 へっ!?

 まさか拳に負けるはずが無いと思っていたソリスは、そのすさまじいまでの正確で強烈なパンチに圧倒された。さすがに四十階のボスである。ソリスは今回もまた壮絶な死闘になってしまうだろうことに、気が遠くなる思いがした。



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