上 下
178 / 213
ロマンティック・プランク

8

しおりを挟む
 遠慮しているということがはっきりと伝わったようで、柊は深く追求することなく流していた。

 柊の視線が杏里から離れて店員の方へと向いていくと、少し緊張がほぐれたようで少し力が抜けた姿勢となった。それでもまだじっくりと味わうには程遠かったようだ。

 注文を終え、再び杏里の方を向くと、自分と視線を合わせてくれない姿を見て思わず手を伸ばしていた。ゆっくりと、杏里の膝の上に置かれている彼の手にそっと触れる。

 いきなりのことに驚き、ビクリと大きく身体を震わせた杏里は、おずおずと柊の方を見る。

「杏里くん、いつもみたいに緊張しなくていいよ。今はただ美味しくお酒を飲むだけ」

「いえ……そんなつもりじゃ……。柊さん、いつもよりかっこよく見えるし……」

 思いがけないその言葉に、彼の手に触れている柊の手がぎゅっと握られる。

「ひっ、柊さん……」

「嫌、だった?」

「そ、そんなことはないけど……。ちょっと、恥ずかしい……」

「そんなに気にしなくても大丈夫だよ。薄暗いから他の人には見えないから」

「う、うん……」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

真・身体検査

RIKUTO
BL
とある男子高校生の身体検査。 特別に選出されたS君は保健室でどんな検査を受けるのだろうか?

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人

こじらせた処女
BL
 幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。 しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。 「風邪をひくことは悪いこと」 社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。 とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。 それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?

処理中です...