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秘密の味

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 突然のことに驚いているようで全く動こうとしない。

 洗ったばかりの柔らかい髪が俺の鼻先をくすぐる。俺と同じにおいを発していると思うと、何だか嬉しい気分になってくる。

 逃げられないように手は全く動かさない。それでも、少しでもこの人の温もりを得たいという気持ちは変わらないので包み込むように手を広げる。

 温かい。ただそれだけが全身に伝わってくるだけで、俺の中の何かが興奮状態にあるのが分かる。

 俺は思わず滑らせるように顔をずらしていき、唇を重ねようとしていた。

 そこで金森さんは俺の状態に気付いたようで、顔を鷲掴みにされて制止された。食い込む指が全力を伝えてきて痛い。

「いい加減にしろ。とっとと朝飯食いに行くぞ」

「はい……」

 俺は金森さんから離れ、必要最低限の荷物を手にして出掛ける準備を整えた。

 それよりも早く金森さんが部屋から出て行き、その後ろを追い掛けていくようにして部屋を後にした。

 施錠をしたのを確認し、俺たちは並んで歩き出す。
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