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 魔物は森の中に生息しており、人々はあまり近付かないようにしてはいる。しかし、村の外へ出ていかなかればならないこともあるため、また、村に近寄られないようにするため、レオは見回りとして森の中へ入っていく。

 森の奥には魔物の棲み家があり、そこには誰も手の打ちようがない恐ろしい魔物が棲んでいる。

 レオは小さいときからそう言い聞かされていた。

 子どもは皆そのことを聞くと怯えていたが、ただ一人レオは立ち向かおうとしている。

 村の皆のために。

 それがレオの原動力となっている。

 いつもとは違う方向へ進んでいくレオ。そのせいか、今までで一番距離を伸ばしているようだ。

 油断は禁物である、そう気を引き締めつつも、魔物の姿が全くいないせいか意識が別の方へ逸れてしまっている。

 飽きるほど何度も見てきた森の景色。同じように木々が鬱蒼と茂っているだけだと思っていたが、今のレオはこころが安らいでいるような気がする。

 これほどまで静かな場所は、村では恐らくないものだ。

 これからもこっそり来たいなと思っていた。

 すると、微かに高い音が聞こえてきた。

 レオはそっと剣に手を伸ばし、いつでも抜けるように構える。

 だが、魔物のものとは違うそれは、何か別のものの鳴き声だろうか。たとえば、小さな鳥の囀り。

 危険な森の中に魔物以外のものがいるとは思えない。

 レオは気になってしょうがなくなり、音のする方へ静かにゆっくりと進んでいく。

 目に入る景色は変化を見せないが、音の正体には近付いているようだ。

 一つだけだと思っていたものは、また別の似たようなものも聞こえてきた。

 用心するに越したことはないと、徐々に足音にも気を付ける。

 しばらく進んでいくと、少し先が明るくなってきた。

 木がないのだろうか。

 改めて気を引き締め、レオはその先へと進んでいく。
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