孤独な魔物は愛を知る【一部公開】

まつのこ

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「てあぁっ!」

 レオの視線の先には魔物がいる。

 容赦なく襲い掛かってくる人とは異なる姿をした存在に、レオは臆することなく剣を振りかざす。的確に、素早く繰り広げられる攻撃は、狙っていた場所へしっかりと刃を入れた。

 急所を斬りつけられた魔物は、耳障りな声を上げながらその姿を灰へと変えていった。徐々に形が消えていき、ここに魔物がいたという痕跡は全くない。

「あ、ありがとう、レオ!」

 レオの後ろにいた女性が安心した声で感謝を伝える。

 くるりと振り返ってその表情を目にした途端、レオの頬は緩んだ。

「無事でよかった。魔物ならいつだって俺がやっつけるからね!」

「レオは頼もしいねえ。剣の腕は村一番かな?」

「そうかも!」

 あはは、と笑うレオの声に、女性もすっかり笑顔になっていた。

 魔法は使えないけれども、どうしても村の皆を魔物から守る力が欲しい。幼い頃から抱く願いは、剣術という技術で実現することができた。

 人一倍誰よりも努力を積み重ねていき、今ではすっかり頼られる存在になった。

 誰かに頼られることは嬉しいけれど、安心して暮らすためには魔物の数が減ってほしい。そのためには、今しっかりと戦っていくべきだ。

 レオは剣を鞘に収め、腰にしっかりと下げた。

「じゃあ、気を付けてね」

「レオはどうするの?」

「もう少し森の方を見回ってくるよ。最近魔物の数が増えてるらしいから」

「気を付けてね、レオ。森の奥は特に危険だから」

「分かってるって」

 そう言ってレオは森の方へと進んでいった。
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