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再会

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「なるほど……親の言いなりになって婚約をしたくないと」

 アルセーヌ様に説明をしました。お兄様はディータ達がちゃんと家を出て行くまで、安心できないと見送りに行きました。


「はい」


「なるほど、私が国にいない間にそんな事になっていようとは……もっと早く申し込んでおけばよかった。私のせいだ」


「アルセーヌ様のせい? なにがですか?」


 婚約破棄騒動にアルセーヌ様は関係ない。そしてアルセーヌ様がディータと私の婚約を知っていたかどうかすらも怪しい。


「リディ、来月の隣国とのパーティーは私と一緒に行ってくれないか?」


「え? そんな大事なパーティーに私とですか! ダメですよ。欠席をする予定ですもの。学園でみんなの前で婚約破棄をされ間もない私には悪評が、」


「私が全ての悪からリディを守るよ。安心して隣にいてくれていいんだ」


「幼馴染として言ってくださっているのは分かりますけど、アルセーヌ様にご迷惑をおかけする事は出来ません、お断りしますわね」


 にこりと笑った。ディータと婚約解消できた事は良かったけど、しばらくパーティーやお茶会と言った華やかな場所からは遠のく事にしたのだ。


 いろんなことを聞かれるのが面倒だもの。かと言ってディータの文句をダラダラと言うのも嫌だし。


「嫌がるリディを連れて行くのは不本意だけど、ずっと休んでいるわけには行かないだろう? それに大人しいふりをするのも疲れるぞ。ただ面倒なだけだろ?」


 バレてる! そうよね。人の性格なんてそうすぐには変わらないものね。アルセーヌ様は私の性格をご存知ですものね。


「……流石に騙されてくれませんでしたか。お兄様なら分かっていても騙されてくださるのに」


 ふふっと笑った。


「こういうのは、噂が落ち着くまで……と思っているのだろうが、リディ堂々としていれば良いんじゃないか? すぐにディータ殿がおかしいと言うことも発覚するよ。それに……婚約破棄が流行っていると言っていたが、その後騒ぎを起こしたものはどうなった?」


「……その後? 表舞台にはいませんね」


「された側は?」


「……特に普段通りですわね」


「それならパーティーは決定で良いんじゃないか? それともリディは私を祝ってくれないのか?」



「……この度は受賞された事心よりお祝い致します」


「ははっ、当日聞かせてくれ。迎えに行くよ」



******



「アルセーヌ、待たせたな。リディは父上が呼んでいたぞ」

 リディがアルセーヌに挨拶をして父上の元へ向かった。


「どうだ?」


「何が?」

 すっとぼけた顔をしているが、少し顔がニヤけている。


「リディ可愛いだろう?」


「お前の趣味か? あのワンピースは! 見た目は美しいのにあんなレースのワンピースなんて着ていたら可愛いに決まっているじゃないか!」

「少し口が悪い所や、性格が令嬢らしくない所をカバー出来ているだろう?」


「釣りが来るほどに似合っていたよ! 来月までにドレスを注文すると間に合うだろうか……」


「リディは行くって?」


「迎えに行くと言ってあるから同意という事で捉えた」


「公の場に出るのは早い方が良い。頼んだぞアルセーヌ」


「大事な妹をそんなに簡単に手放そうとするのか?」


「知らない家に嫁がれるより知っている家に嫁がれた方が、都合がいい。いつでもリディに会いに行ける」


「そんな事か……」


「大事な事だぞ! 侯爵様には理解してもらえたか?」


「私が隣国から帰ってきて、誰でもいいから嫁を連れてこいと言われた。リディのことを話したら、(婚約破棄が)いいタイミングだったと言ったよ。すぐに知らせてくれて感謝するよ。このまま受賞されたら見合い話が余計に増えてしまう所だった」


「あとはなんとか婚約に持ち込んでくれ。父上も母上も了承済みだ」


「あとで挨拶に行くよ」


「そうしてくれ」












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