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晩餐会
しおりを挟む晩餐の場へと行くともうすでに皆が先に着いていた。
嘘の時間を告げられたようでした。
「ミシェル遅かったのね、皆さんお待ちかねよ」
公爵家が家族でいらして四名、別の公爵夫妻に、ジュール殿下とプリシア王女の友人である侯爵家の子息令嬢が二名ずつ。
ジュール殿下に王女殿下合わせて十名が私達を待っていらしたと言う事です。
「お待たせしてしまって申し訳ございませんでした。慣れぬ場所での準備に戸惑ってしまいました。お詫び申し上げます」
深々と頭を下げた。高位貴族の皆さんは頭を下げられるのが大好きですもの。
「すまないね。時間を間違えたようだ。私は慣れないのだが頭をそのように下げれば良いのかな?」
ウェズリー様がおっしゃると公爵様たちは一斉に立ち上がり焦って席に座るようにと勧めてきた。
ウェズリー様に頭を下げさせるなんてできないでしょうしね。
男女別れて席が用意されていました。公爵たちがウェズリー様を接待するようです。ジュール殿下もいらっしゃるので嫌な予感? です。
晩餐が始まり談笑が始まるともちろん私に集中砲火です。
「ミシェル様はこちらははじめてですか?」
公爵夫人の一言から始まった。
「えぇ。素晴らしい場所ですわね」
「わたくしたちは毎年お呼ばれされていますのよ。どうやって忍び込めたか、あらいやだ。ウェズリー殿下の婚約者でしたわね。ほほほ」
「陛下からお誘いいただけてお邪魔いたしましたの。お部屋のバルコニーからは見晴らしも素晴らしいですわね。とても広く天井も高くてさすが貴賓室と言った感じでした」
「まぁ! そのような場所を陛下が伯爵家のご令嬢に使わせるとは……驚きですわ。あらいやだ忘れてましたわ。ウェズリー殿下の婚約者という事を、おほほほほ」
まるで虫けらを見るような目ですわね。
「その不思議なドレスはどうされましたの? 我が国の誇りを忘れられたのかしら? 南の国でその汚れたようなピンクは流行りの色なのかしらぁ?」
公爵令嬢が言いましたわ。
「こちらのドレスは南の国特有の生地を使っております。軽くて柔らかくて動きやすいので気に入っております」
「まぁ! 動きやすいだなんて……何をなさるおつもりかしら、給仕でもされるとか?」
おほほほほ……何が面白いのやら周りの人たちが笑いましたわ。
「南の国の王妃様からプレゼントされましたのよ。まさか給仕服と間違われるなんて……王妃様に申し訳がたちませんわ。わたくしが着こなせていませんのね」
さぁーっと顔を青褪める令嬢
「汚れたようなピンクとおっしゃいましたか? 王妃様のお名前が付いたバラの色ですの。南の国では王妃様から賜われた物によく使われる色なのです。ご存知ないのも当然だと思いますけれど」
さらに顔色を変え青から白に……
「少しばかり緩やかなドレスですよね? 腕をそんなに出されていますし」
胸元を強調し身体を締め付けたドレスを着た方に言われても……腕が出ている程度なのに。侯爵令嬢の胸元を見る
「とても涼しいですのよ。体を締め付けていないので、晩餐を美味しくいただけますし」
コルセットをつけていないと言いたいのでしょう。
南の国のコルセットは簡単なものが多くて腰回りを必要以上に締め付けないおかげで美味しく食事をいただけます。
「まぁ! たくさんお召し上がりになるのですわね」
この国のパーティーなどではコルセットで締め付けられているせいか、淑女の食事は極端に少ない。
「ウェズリー殿下は美食家ですので美味しいものを食べに連れて行ってくださるので、少しサイズが大きくなって困っていますの」
極端に少ない割に高位貴族の紳士淑女の体型は大きめと言った感じです。
こちらの侯爵令嬢も……。
美味しく食事をした後は、身体を動かします。馬術を習いウォーキングは常にしていますので、体型はキープです。
この国の令嬢はしない事だと思いますけれど。南の国では普通のこと。
「ミシェルの話はとても楽しいわね。王妃様から頂いたドレスの話に南の国のお話、どれも素敵な話ですわね」
王女殿下が周りを鎮めるように言った、もちろん周りは待ってました。と言わんばかり
「こちらは高位貴族しか入れない場所だと言うのに伯爵令嬢がいる事にまず驚きました。 いくらウェズリー殿下の婚約者とは言えまだ婚姻を結んでおりません。貴女はただの伯爵令嬢です、貴女が一番身分が低いのですよ、お分かり?」
「えぇ、勿論です王女殿下」
「この国の晩餐でそのドレスを着ているのは何故かしら? 失礼だとは思いませんか?」
「わたくしはこの国の人間ですが、ウェズリー殿下と婚約をした以上、心はすでに南の国へ嫁いでいます」
しーん。としているので、この受け答えは離れたテーブルのウェズリー様にも聞こえている事と思います。
「聞いたところによると貴女、とんだ浮気者らしいじゃない? 自国の王子から他国の王子へと乗り換えるなんて……ウェズリー殿下の愛もそれくらいのものでしょう? ウェズリー殿下もたかが伯爵令嬢を良く妃に迎えようとしたものだわ」
くすくすと周りが笑い出す。
「側室は無理でも愛人になら迎えてあげても良かったんですわよ。わたくしにはそれくらいの広い心はありますのよ」
あぁ……この方は王妃様の悪意を全面で受けてこられたんだわ。
この方もこの国に慣れる為に必死だったのかもしれない。そう思うと可哀想な方だと思った。王族を含め高位貴族には愛人がいることが多い。
でも血統を重んじるので、愛人が産んだ子は居ないものと見做される。
正妻に子供が産まれない場合のみ子供として認定される。
この国では普通の事なのだ。
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