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陛下の出した条件
しおりを挟む「王族から抜けて一貴族になれ、そして将来は臣下となり兄セルジュを支えろと言った」
「…………………」
無言でそれを聞いた。
「我が国ではまだまだ血筋にこだわるものが多く高位貴族になるとそれが如実に見られる。愛しているのなら王族から抜ける位の気持ちはあるのか? と聞いた。ジュールは答えなかった、だからわしは反対をした。 セルジュはこの国の高位貴族優先の考え方を変えるべきだと言い奮闘しているが、セルジュだけでは出来ない。将来王妃となるブリジッドと共にせねば意味がないんだ。わしは力不足で出来んかった。セルジュに大いに期待をしている」
陛下は言い終えると、ふぅ。と言った感じで息を吐いた。
「それが上手く行くと、例えば王族でも伯爵令嬢と結婚できるかも知れませんね」
「それも一理あることじゃ。時にウェズリー殿は結婚に反対されて、わしが言うた条件ならどうした?」
「ミシェルと結婚できる条件がそれなら喜んで臣下に降ります」
「ウェズリー様……?」
驚くように目を開いてウェズリー様を見た
「兄も支えられるしミシェルと結婚出来るんだから考える必要もない。一貴族になるんだから爵位と領地をもらってそこでミシェルとのんびり暮らす。もちろん出来る事はやるけどね」
簡単な事ではないでしょうに、さも当然! という顔で陛下に答えるウェズリー様だけど今この国の大学に入ったのは、私と居たいからと言ってくれるけど、不測の事態に備えての知識を蓄えるためだって知ってるもの。
自然災害があった時でも国民が食べるものに困らないように、備蓄を痛ませないようにと作物の勉強をされている。
国のことをちゃんと考えているウェズリー様に冗談でもそんなことを言ってもらえたことが嬉しいと思ってしまった。
ウェズリー様を支える存在になりたいと心から思った。
「あれ? まさか冗談だと思ってないよね? 今陛下に言われたことが実際にあるとしたら、本気だから。結婚してしばらくは忙しいだろうけど、将来のんびり暮らすためにも頑張って公務に励むつもりだから、ミシェルにも手伝ってもらいたい」
「はい、わたくしは少しでもウェズリー様を支える存在になりたいですわ」
二人で笑い合った。陛下の前では不敬かもしれないけれど隠しきれない気持ちがあるんですもの。
「ウェズリー殿とミシェルの気持ちは分かった。仲が良いようで安心した、ずっと君には悪いと思っていた。王妃のことはわしに任せなさい。後は何かないか?」
「陛下にお聞きしたいことがあります」
「なんじゃ? 遠慮せず言うてみるが良い」
「わたくしの家族に何かお咎めはありますか……わたくしのせいで家族が、」
「アルディ伯爵にか? あるわけなかろう。古くからの友で国を支えてくれる存在だ。
私情を挟んで咎めることはせん! わしからもきつく言っておく。いや、もっと早く気を遣っておくべきだったな。アルディ伯爵夫人にも面倒をかけた。ミシェルが姿を見せんようになってジュールが落ち込んでしまったから、王妃の気持ちが暴走した。
ジュールは二男だから甘やかしてしまった。周りにも迷惑をかけたし、今日は今日で防音室で茶会とは……報告を受けたときは頭が痛うなった。ウェズリー殿、誠に申し訳なかった。
本来なら貴賓室を用意してここで過ごして欲しかったのだが、面倒な事になるのを避けたんじゃろう?」
陛下は申し訳なさそうな顔をしていました。ウェズリー様はなんとも言えない顔をしていた。
「家が近いとミシェルにすぐ会えますからね。それだけですよ。こちらこそ警備兵を派遣してくださってありがとうございます」
先ほど陛下が仰ったように王宮で過ごして欲しかったのだろうと思う。その方が安全だもの。
「そう言ってくれると助かる。足りないものや意見があったらなんなりと言ってくれ。国際問題にも発展しかねん事態をわしの目の届くところでやらかした王妃には罰を与えることにする」
「そうですね。陛下とお話をして少し気持ちが落ち着きましたが、ミシェルの顔に傷をつけた事は許せる事ではありません。しかしお忙しい中、時間を作っていただき謝罪の言葉もいただきましたので、今回の件は私の胸の内にしまっておきます。しかし次はありません! 国に報告するということも視野に入れておいていただきます」
ウェズリー様は優しい口調でお話しなさっているけれど、その声には威厳があると言うか……陛下も真摯に対応されています。
「ウェズリー殿の広い心に感謝する」
陛下がウェズリー様に頭を下げました。
「どうぞ頭をあげてください。本日は陛下とお話ができてよかったです、ミシェルとの婚約を祝ってもらえたのですから。これで問題はなくなりましたね」
「ミシェルも悪かった、ウェズリー殿と幸せになるのだぞ」
「ありがたいお言葉に感謝致します」
陛下が約束してくれたことにホッと胸を撫で下ろした。お母様と王妃様はお友達だったけど、今後のことは分からないから。
******
「ねぇ、ミシェル」
「はい、なんですか?」
ウェズリー様と手を繋いで歩いた。他国の王子殿下とこういう風に歩いているのを見られたら、咎められるかもしれませんね。
「さっきの本当だから」
「さっき?」
分かっていたけど、惚けてみた
「一貴族になってミシェルと一緒になるって話だよ」
「冗談でもうれしかったですよ、」
「本気だって! はじめはさ、可愛い子だと思って気になったんだけど、思いやりもあって、芯のしっかりしたミシェルが好きになった。王子の妃なんて大変だし面倒だろうけど、私がちゃんとフォローするよ」
「はい。皆さんにも認めてもらえるように頑張りますね。……ウェズリー、様」
「なに?」
「こんな面倒な私と一緒にいてくださってありがとうございます」
早く三年が経って南の国へ戻れたら良いのに。ウェズリー様のお力になりたい。
「二人で障害を乗り越えてその先の明るい未来を見たいと思わない?」
ウェズリー様の優しさに触れたら涙が溢れた。
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