上 下
10 / 22

三年ぶりの再会

しおりを挟む
「ミシェル!」


 呼ばれた方に振り向くとそこにはジュール殿下がいて、美しいほどの笑顔を見せていた。

 三年振りに見たジュール殿下は身長も伸びて声変わりもしていて、別人のように思えた。無視することは出来ないし、私の隣にはウェズリー様も居るから、心配はない。


「お久しぶりでございます」




 スカートの裾を摘んで挨拶をした。



「ミシェル今までどこに居たんだ? 心配していたんだ。急にいなくなるから」


「ご心配をおかけしたのなら申し訳ございませんでした。叔母から南の国はいい所だと聞かされていましたので、叔母の家でお世話になっていました。先日帰ってきたばかりでご挨拶が遅れてしまいました」


 何か言われたら私のせいにして良いのよ。と叔母様が言ってくださったので、お言葉に甘えた。


「せめていなくなる前に伝えてほしかった。居場所も隠すなんて! どれだけミシェルに会いたかったか……ミシェルは私に会えなくて寂しいと思わなかったのか?」


  どう返せばいいのか分からない。ウェズリー様を見ると、笑顔で私を見て頷いた。


「そりゃ、寂しかったよね」

 ウェズリー様が答えたので、何を言い出すのかと思ったら……

「十二歳の女の子が一人で国を離れるのは勇気が行ったと思うよ」

 うんうんと、頷くウェズリー様


「出る必要は無かったんではないか? 親しくしていたのに一言も挨拶もなく出て行くなんて非常識だ! 心配するだろう? 伯爵に何度聞いても居場所は教えてくれなかった」


「幼馴染だけど、異性だからね。親しくしていても婚約者でもなんでもないのだから、言う必要性が感じられない」


 うんうんと、頷くウェズリー様


「ウェズリー殿に聞いてはいない。ミシェル答えよ!」


「お別れの挨拶は致しました。元より殿下に婚約者が出来るまで、遊び相手として王宮に出入りが許されていた身ですもの。遅くなりましたが、東の国の第三王女殿下とのご婚約を心よりお祝い申し上げます」


「そう言うことを聞きたいのではない! ウェズリー殿と親しいようだが、なぜウェズリー殿がミシェルといるんだ!」


「それは、」

 と言うと、ウェズリー様に止められた。私から説明するからとこそっと言われたので、頷く。


「私とミシェルは婚約したんだよ。つい先日の話だったからまだ公にはなってないんだ。
 陛下から私が留学すると言う話は聞いていただろう? 王宮に住むように勧められたんだけど、アルディ伯爵家の邸の近くに家を借りたんだ。これでミシェルの近くにいられるからね」


 手をギュッと繋がれた。



「ミシェルが婚約っ! ウェズリー殿と?」



「そ! 結婚式は三年後、うちの国で挙げるから良かったら呼ぶけど?」

 まるで挑発するような口ぶりのウェズリー様に、ジュール殿下は信じられないと言うような顔をして私たちを見ていた。


「ミシェルの家は単なる伯爵家だぞっ! 身分が違うだろうっ!」


「それはこの国のルール? でしょう。うちはうちのルールがあって全く問題ない。父上も母上もその他だーれも反対しなかったよ」


「は? 南の国は王族と単なる伯爵家の娘が婚姻を結べるのか?」


「単なるって……失礼だな。それにミシェルの叔母上の家は侯爵家だし、親戚になるのだから寧ろ喜ばしいと言われたけどね」


「侯爵家……。ミシェルの家が侯爵家だったら問題がなかったのに、なんて事ない伯爵家の娘だったから婚約出来なかった!」



 ……初めから分かっていたことではないですか。

  お父様が殿下の遊び相手を辞退したいと何度も言ってくださいましたし、深入りはしてはいけないと、私も殿下も王妃様に何度も釘を刺されていました。

  殿下はそれでも遊びに来るようにと誘ってくださいましたね……
 


「三年前に終わった話ではありませんか。わたくしはあの時と同じで、変わらず臣下として殿下の幸せを祈っておりますわ」



「ミシェル……?」



「話は以上? それなら行こうか、予約の時間に遅れてしまう」


「はい。それでは殿下ごきげんよう。お先に失礼致します」


 もう一度スカートの裾を摘んで挨拶をした。


******



 馬車に乗り揺られていたら



「せっかくいい所だったのに邪魔が入った! ミシェルから告白されたと言うのに!」


 ぶつぶつと文句を言うウェズリー様 


「ウェズリー様が居てくれて良かったです。殿下に会ったら動揺するかと思っていたんですけど、不思議ですわ」


「それはミシェルが三年間頑張ったからに決まってるでしょ!」


「ウェズリー様に餌付けされたから、南の国が居心地が良かったんですわね」


「それなら餌付けは大成功だ。でも今からドレスの採寸だから食べ過ぎは注意だね」


「帰りに食事に行くのに?」


「そうだな……それなら明日から控えてもらうよ」


「はい」


******


「ジュール様、お待たせしました」

「…………」


「ジュール様?」


「あ! 悪い、帰ろうかプリシア」


「えぇ……」


 ミシェルとウェズリーを乗せた馬車を無表情で見つめた。






しおりを挟む
感想 304

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄はしたいけれど傍にいてほしいなんて言われましても、私は貴方の母親ではありません

すだもみぢ
恋愛
「彼女は私のことを好きなんだって。だから君とは婚約解消しようと思う」 他の女性に言い寄られて舞い上がり、10年続いた婚約を一方的に解消してきた王太子。 今まで婚約者だと思うからこそ、彼のフォローもアドバイスもしていたけれど、まだそれを当たり前のように求めてくる彼に驚けば。 「君とは結婚しないけれど、ずっと私の側にいて助けてくれるんだろう?」 貴方は私を母親だとでも思っているのでしょうか。正直気持ち悪いんですけれど。 王妃様も「あの子のためを思って我慢して」としか言わないし。 あんな男となんてもう結婚したくないから我慢するのも嫌だし、非難されるのもイヤ。なんとかうまいこと立ち回って幸せになるんだから!

【完結】結婚式前~婚約者の王太子に「最愛の女が別にいるので、お前を愛することはない」と言われました~

黒塔真実
恋愛
挙式が迫るなか婚約者の王太子に「結婚しても俺の最愛の女は別にいる。お前を愛することはない」とはっきり言い切られた公爵令嬢アデル。しかしどんなに婚約者としてないがしろにされても女性としての誇りを傷つけられても彼女は平気だった。なぜなら大切な「心の拠り所」があるから……。しかし、王立学園の卒業ダンスパーティーの夜、アデルはかつてない、世にも酷い仕打ちを受けるのだった―― ※神視点。■なろうにも別タイトルで重複投稿←【ジャンル日間4位】。

政略結婚で結ばれた夫がメイドばかり優先するので、全部捨てさせてもらいます。

hana
恋愛
政略結婚で結ばれた夫は、いつも私ではなくメイドの彼女を優先する。 明らかに関係を持っているのに「彼女とは何もない」と言い張る夫。 メイドの方は私に「彼と別れて」と言いにくる始末。 もうこんな日々にはうんざりです、全部捨てさせてもらいます。

「君の為の時間は取れない」と告げた旦那様の意図を私はちゃんと理解しています。

あおくん
恋愛
憧れの人であった旦那様は初夜が終わったあと私にこう告げた。 「君の為の時間は取れない」と。 それでも私は幸せだった。だから、旦那様を支えられるような妻になりたいと願った。 そして騎士団長でもある旦那様は次の日から家を空け、旦那様と入れ違いにやって来たのは旦那様の母親と見知らぬ女性。 旦那様の告げた「君の為の時間は取れない」という言葉はお二人には別の意味で伝わったようだ。 あなたは愛されていない。愛してもらうためには必要なことだと過度な労働を強いた結果、過労で倒れた私は記憶喪失になる。 そして帰ってきた旦那様は、全てを忘れていた私に困惑する。 ※35〜37話くらいで終わります。

アリシアの恋は終わったのです【完結】

ことりちゃん
恋愛
昼休みの廊下で、アリシアはずっとずっと大好きだったマークから、いきなり頬を引っ叩かれた。 その瞬間、アリシアの恋は終わりを迎えた。 そこから長年の虚しい片想いに別れを告げ、新しい道へと歩き出すアリシア。 反対に、後になってアリシアの想いに触れ、遅すぎる行動に出るマーク。 案外吹っ切れて楽しく過ごす女子と、どうしようもなく後悔する残念な男子のお話です。 ーーーーー 12話で完結します。 よろしくお願いします(´∀`)

七年間の婚約は今日で終わりを迎えます

hana
恋愛
公爵令嬢エミリアが十歳の時、第三王子であるロイとの婚約が決まった。しかし婚約者としての生活に、エミリアは不満を覚える毎日を過ごしていた。そんな折、エミリアは夜会にて王子から婚約破棄を宣言される。

【完結】本当に私と結婚したいの?

横居花琉
恋愛
ウィリアム王子には公爵令嬢のセシリアという婚約者がいたが、彼はパメラという令嬢にご執心だった。 王命による婚約なのにセシリアとの結婚に乗り気でないことは明らかだった。 困ったセシリアは王妃に相談することにした。

愛される日は来ないので

豆狸
恋愛
だけど体調を崩して寝込んだ途端、女主人の部屋から物置部屋へ移され、満足に食事ももらえずに死んでいったとき、私は悟ったのです。 ──なにをどんなに頑張ろうと、私がラミレス様に愛される日は来ないのだと。

処理中です...