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過ごしやすい南の国
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「お兄様、どちらへ行かれるのですか?」
お世話になっているアラニス侯爵家の嫡男ローランお兄様です。
「今日は友達と会うんだよ」
「まぁ、そうでしたか。足を止めてしまって申し訳ございません。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「うん、行ってくるよ。お土産を買ってくるから帰ってきたら一緒にお茶をしよう」
「わぁ、楽しみです」
「兄上は僕にはお土産なんて買ってこないのに、ミシェルがいると買ってくるんだね」
「リベロの分も買ってくるよ、じゃあな」
ローランお兄様は十五歳。リベロ君は十歳です。急にお世話になることになった私を優しく迎えてくれた二人にも感謝しかありません。
「ミシェル、今から何するの?」
「レース編みの続きをしようかな」
「じゃあ僕は本を読む」
「一緒のお部屋に居ても良い?」
「良いよ。でも書庫でも良いの?」
「書庫は落ち着くから捗るもの、そうしましょう」
屋敷に穏やかな空気が流れるのは、侯爵様と叔母様のお人柄ね。
そうやって一年ほど過ごした頃。
「明後日、友達を呼んでも良い?」
ローランお兄様が晩餐の場で言いました。
「あら、そう、何人くるの?」
叔母様が言いました。
「三人。宿題をしてランチをしたいと思うんだけど、いい?」
「もちろんよ。シェフにも伝えて頂戴」
執事さんに言いました。
「ランチはみんなで取りましょう。ミシェルもリベロも良いわね?」
「「はい」」
お兄様のお友達が来られるのね。そういえばこの国に来て、まともにお会いした子息って居ないわね……。
少し緊張するけれどご挨拶はしっかりしないと、ローランお兄様に迷惑ですわね。
そしてお約束通り、お兄様のお友達が来られました。
お友達って……南の国の王子殿下に公爵家のご子息に伯爵家のご子息……!
高貴な人の集まり……気後れしてしまいました。
少し浅黒い王子殿下が、ウェズリー・ド・シーラ様と言いました。少し長い髪の毛を緩い三つ編みにしてました。
公爵家のご子息は眼鏡をかけていて、明らかに頭脳明晰な感じがしました。お名前はエリック・デュール様。
伯爵のご子息は、騎士の家系だそうで、身体を鍛えられている感じがしました。お名前はロジェ・ダリュー様。
「はじめまして。去年からこちらでお世話になっています。ミシェル・アルディと申します」
「いとこなんだ、挨拶はすんだ? それじゃ部屋に行こうか?」
王子殿下が目を見開き驚いていました。私は何か変なことを言いましたか?
「間違っていたら謝るけど、ミシェル嬢は隣国からだよね?」
「はい。そうですけれど、何かございましたか?」
「……王宮とかに行ったことはあるよね?」
「えぇ。小さい頃からお母様と一緒に、どうかされました? お会いしたことが?」
「……剣術の稽古とか見学したことは?」
「何度かあります、けど?」
なんでそこまで知っておいでるのかしら
「髪を引っ張られて泣かされたこと、ある?」
「ん? んんん……ありますね。小さい頃でしたわね。突然のことで驚いてしまって」
「あの時は悪かった」
「え?」
「珍しい髪の色でふわふわとしていて触れたくなったんだ、泣かせるつもりはなかった」
「あの男の子は王子殿下でしたの! えっと、昔のことですし気にしてませんので、謝罪は必要ないかと」
驚きました。あの時の男の子が、王子殿下とは知りませんでしたし、驚いて泣いてしまって失礼な事をしてしまいました……。
「ずっと気になっていたんだ、良かった会えて。ミシェルと呼んでも良いかな?」
「え? えぇ、どうぞ」
「ではミシェル、君に将来を約束した人は、」
「ウェズリー! それ以上言うな!」
ローランお兄様の怒気を含んだ声が響きました。
「ミシェル、後で話をしようね」
ローランお兄様に注意をされて、苦笑いをしていましたが、気にしていないようなそんな素振り。
なんだったのかしら? 叔母様のお顔を見るとなんだか楽しそうに笑っておられました。
「なにか?」
「いえ、若いって良いわね。ウェズリー王子殿下は十六歳、年齢的にはいい感じだし、第三王子だし悪くないわねー」
「ミシェルがこの国にいるのは良いけど王子かー……微妙だ」
叔母様とリベロ君がボソッと言った。
ランチを一緒に取ろうと仰っていたのに、お兄様は
「ミシェルとリベロは挨拶も済んだし、たまには出かけたらどうだ? 天気もいいし、そうしなさい!」
お勉強中だというのにお兄様は書庫へ来て、早く出掛けなさい! とまるで追い出すかのようにリベロ君と屋敷を出ました。
「急にどうしたのかしらね?」
「さぁね。でも小遣いもくれたから、何か見にいこうよ」
「そうね、お天気も良いですしね」
久しぶりに連れてきてもらった街は今日も活気にあふれていた。カフェに行ったり本屋さんに行ったり、雑貨屋さんをはしごしたりとても楽しく過ごし、気がつくと夕方で急いで帰りました。
途中王子殿下が乗る馬車とすれ違ったそうです。もうお帰りの時刻でしたのね。
お世話になっているアラニス侯爵家の嫡男ローランお兄様です。
「今日は友達と会うんだよ」
「まぁ、そうでしたか。足を止めてしまって申し訳ございません。お気をつけて行ってらっしゃいませ」
「うん、行ってくるよ。お土産を買ってくるから帰ってきたら一緒にお茶をしよう」
「わぁ、楽しみです」
「兄上は僕にはお土産なんて買ってこないのに、ミシェルがいると買ってくるんだね」
「リベロの分も買ってくるよ、じゃあな」
ローランお兄様は十五歳。リベロ君は十歳です。急にお世話になることになった私を優しく迎えてくれた二人にも感謝しかありません。
「ミシェル、今から何するの?」
「レース編みの続きをしようかな」
「じゃあ僕は本を読む」
「一緒のお部屋に居ても良い?」
「良いよ。でも書庫でも良いの?」
「書庫は落ち着くから捗るもの、そうしましょう」
屋敷に穏やかな空気が流れるのは、侯爵様と叔母様のお人柄ね。
そうやって一年ほど過ごした頃。
「明後日、友達を呼んでも良い?」
ローランお兄様が晩餐の場で言いました。
「あら、そう、何人くるの?」
叔母様が言いました。
「三人。宿題をしてランチをしたいと思うんだけど、いい?」
「もちろんよ。シェフにも伝えて頂戴」
執事さんに言いました。
「ランチはみんなで取りましょう。ミシェルもリベロも良いわね?」
「「はい」」
お兄様のお友達が来られるのね。そういえばこの国に来て、まともにお会いした子息って居ないわね……。
少し緊張するけれどご挨拶はしっかりしないと、ローランお兄様に迷惑ですわね。
そしてお約束通り、お兄様のお友達が来られました。
お友達って……南の国の王子殿下に公爵家のご子息に伯爵家のご子息……!
高貴な人の集まり……気後れしてしまいました。
少し浅黒い王子殿下が、ウェズリー・ド・シーラ様と言いました。少し長い髪の毛を緩い三つ編みにしてました。
公爵家のご子息は眼鏡をかけていて、明らかに頭脳明晰な感じがしました。お名前はエリック・デュール様。
伯爵のご子息は、騎士の家系だそうで、身体を鍛えられている感じがしました。お名前はロジェ・ダリュー様。
「はじめまして。去年からこちらでお世話になっています。ミシェル・アルディと申します」
「いとこなんだ、挨拶はすんだ? それじゃ部屋に行こうか?」
王子殿下が目を見開き驚いていました。私は何か変なことを言いましたか?
「間違っていたら謝るけど、ミシェル嬢は隣国からだよね?」
「はい。そうですけれど、何かございましたか?」
「……王宮とかに行ったことはあるよね?」
「えぇ。小さい頃からお母様と一緒に、どうかされました? お会いしたことが?」
「……剣術の稽古とか見学したことは?」
「何度かあります、けど?」
なんでそこまで知っておいでるのかしら
「髪を引っ張られて泣かされたこと、ある?」
「ん? んんん……ありますね。小さい頃でしたわね。突然のことで驚いてしまって」
「あの時は悪かった」
「え?」
「珍しい髪の色でふわふわとしていて触れたくなったんだ、泣かせるつもりはなかった」
「あの男の子は王子殿下でしたの! えっと、昔のことですし気にしてませんので、謝罪は必要ないかと」
驚きました。あの時の男の子が、王子殿下とは知りませんでしたし、驚いて泣いてしまって失礼な事をしてしまいました……。
「ずっと気になっていたんだ、良かった会えて。ミシェルと呼んでも良いかな?」
「え? えぇ、どうぞ」
「ではミシェル、君に将来を約束した人は、」
「ウェズリー! それ以上言うな!」
ローランお兄様の怒気を含んだ声が響きました。
「ミシェル、後で話をしようね」
ローランお兄様に注意をされて、苦笑いをしていましたが、気にしていないようなそんな素振り。
なんだったのかしら? 叔母様のお顔を見るとなんだか楽しそうに笑っておられました。
「なにか?」
「いえ、若いって良いわね。ウェズリー王子殿下は十六歳、年齢的にはいい感じだし、第三王子だし悪くないわねー」
「ミシェルがこの国にいるのは良いけど王子かー……微妙だ」
叔母様とリベロ君がボソッと言った。
ランチを一緒に取ろうと仰っていたのに、お兄様は
「ミシェルとリベロは挨拶も済んだし、たまには出かけたらどうだ? 天気もいいし、そうしなさい!」
お勉強中だというのにお兄様は書庫へ来て、早く出掛けなさい! とまるで追い出すかのようにリベロ君と屋敷を出ました。
「急にどうしたのかしらね?」
「さぁね。でも小遣いもくれたから、何か見にいこうよ」
「そうね、お天気も良いですしね」
久しぶりに連れてきてもらった街は今日も活気にあふれていた。カフェに行ったり本屋さんに行ったり、雑貨屋さんをはしごしたりとても楽しく過ごし、気がつくと夕方で急いで帰りました。
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