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愛していますよ
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「僕の事愛してる?」
「はい、愛していますよ」
「……婚約が決まる。何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「ジュール様のお幸せを祈っておりますわ」
「ミシェル? 何を言って、」
「さようなら、どうかお元気で」
******
お慕いしているジュール殿下に別れを告げました。
殿下はいずれ婚約しなくてはなりませんもの。お相手が決まるまで私は側にいても良いと王妃様に言われました。
幼い頃から王宮に遊びに来ていて、ジュール殿下とは幼馴染の関係です。
私のお母様が王妃様と仲が良くて小さい頃からお母様について王妃様に会いに来ていたから。
でも今日で王宮に行く事はやめにします。王妃様との約束ですから。
「王妃様に挨拶をさせて貰いたいのだけど、伝言していただく事は出来ますか?」
王宮でのお父様の執務室に行きました。お父様経由で王妃様にご連絡をお願いしました。
一時間後、お父様の侍従が戻ってきました。
「ミシェルお嬢様、王妃様がお会いになられるそうです」
「ごめんなさい私事でこんな事を頼んでしまって……」
お父様にもお世話をかけてしまいました。
「当たり前ですよ。かわいいお嬢様のお願い事ならこれくらい何でもありませんよ」
「ありがとう、頼りになるからつい甘えてしまって、でももう王宮には来ないから今日だけは許してね」
お父様の侍従は笑みを浮かべたまま悲しい顔をしました。
王妃様の元へは王宮のメイドが案内をしてくれます。
「いつもありがとう」
「いいえ、ミシェル様をご案内するのはわたくしの役目ですもの」
いつもこの方が案内をしてくれた。小さな頃からずっと。
メイドとしてもランクが上がっているのに変わらずずっと。
自分のお仕事もあるだろうにその合間を縫って、私についてくれた。
「アガサさん、今までありがとう。そうだこれ! 今までのお礼に……」
付けていたブローチを渡した。去年買った薔薇のブローチ。
小ぶりだけどさりげなく付けられるところが気に入っていたの。
「頂けません! そのような物、わたくしはただミシェル様を案内していただけです」
慌てて断ろうとするアガサさん。
「感謝しているの。今日で王宮に来るのは最後だから、遠慮せずに受け取って欲しいの。デザインが好きではなかった? それなら改めてプレゼントを贈らせてくれる?」
「いいえ。とんでもございません。ミシェル様が身に付けていたものをいただけるなんて、光栄です」
メイドは主人の物をもらう事に誇りがある。アガサさんは王宮のメイドで私のうちのメイドでは無いのだけど、そう言う文化があるのだから、身に付けているものがいいと思ったの。
こんな子供相手にも毎回きちんと接してくれて嬉しかったから。
「アガサさん今までありがとう、帰りは一人で大丈夫よ。お仕事があるのに付き合わせてごめんなさいね、お元気で」
最後の別れの挨拶をした、アガサさんは泣いてくださったわ。本当に良い方ね。
「はい、ミシェル様の今後のお幸せを祈っております。今まで優しく声をかけてくださってありがとうございました。このブローチは一生大切にいたします」
「ふふっ、大袈裟なんだから。私は大丈夫ですよ。それではねアガサさん。会えなかった皆さんにもよろしくお伝えくださいね」
王妃様のサロンに着くと護衛の方が私に気付いて王妃様の侍女の一人に声をかけました。
「ミシェル様、どうぞお入り下さい」
王妃様の侍女に声をかけられました。護衛の方が頭を下げるので、私も笑顔で会釈しました。
「ミシェル、どうしたの?」
「王妃様お忙しい中、お時間を頂き誠にありがとうございます」
「いいのよ。丁度お客様が帰ったところでしたから気にしないで」
王妃様は私が幼い頃から知っていますし、光栄な事にお母様の友人という事で、気さくにおはなしをしてくださいます。
「ジュール様からご婚約のお話を聞きました」
「話が出ているの。ミシェルも知っていたでしょう?」
「はい。ジュール様から直接聞くまでは内緒にしてほしいと王妃様とお約束をしましたから、黙っておりました」
「ミシェルは本当に素直なんだから」
「ありがとう存じます」
「それで? 婚約者がだれ? って話?」
「ジュール様に婚約者が決まったらもうお会いしないと言うお約束でしたので、本日限りこちらにお邪魔する事はありませんので、最後に王妃様にご挨拶に参りました」
「え! 王宮に来るなとは言っていませんよ、いつでもきて良いのよ!」
首を左右に振りました。
「王宮に来ますと思い出がたくさんありますので、ついジュール様を思い出しては困りますもの。今までの感謝の気持ちを伝えに来ました。王妃様どうかお体にお気をつけてお元気でお過ごしください。今までありがとうございました」
「ミシェル! そんな約束……」
王妃様の声が聞こえましたが、失礼ながら決心が揺らいでは困ります。
そう思い、そっと王宮を後にしました。そしてミシェルはこの日以来王宮に行かなくなった。
「はい、愛していますよ」
「……婚約が決まる。何度も何度も説得しようと試みたけれど、本当にごめん」
「はい。その件はお聞きしました。どうかお幸せになってください」
「え……?」
「ジュール様のお幸せを祈っておりますわ」
「ミシェル? 何を言って、」
「さようなら、どうかお元気で」
******
お慕いしているジュール殿下に別れを告げました。
殿下はいずれ婚約しなくてはなりませんもの。お相手が決まるまで私は側にいても良いと王妃様に言われました。
幼い頃から王宮に遊びに来ていて、ジュール殿下とは幼馴染の関係です。
私のお母様が王妃様と仲が良くて小さい頃からお母様について王妃様に会いに来ていたから。
でも今日で王宮に行く事はやめにします。王妃様との約束ですから。
「王妃様に挨拶をさせて貰いたいのだけど、伝言していただく事は出来ますか?」
王宮でのお父様の執務室に行きました。お父様経由で王妃様にご連絡をお願いしました。
一時間後、お父様の侍従が戻ってきました。
「ミシェルお嬢様、王妃様がお会いになられるそうです」
「ごめんなさい私事でこんな事を頼んでしまって……」
お父様にもお世話をかけてしまいました。
「当たり前ですよ。かわいいお嬢様のお願い事ならこれくらい何でもありませんよ」
「ありがとう、頼りになるからつい甘えてしまって、でももう王宮には来ないから今日だけは許してね」
お父様の侍従は笑みを浮かべたまま悲しい顔をしました。
王妃様の元へは王宮のメイドが案内をしてくれます。
「いつもありがとう」
「いいえ、ミシェル様をご案内するのはわたくしの役目ですもの」
いつもこの方が案内をしてくれた。小さな頃からずっと。
メイドとしてもランクが上がっているのに変わらずずっと。
自分のお仕事もあるだろうにその合間を縫って、私についてくれた。
「アガサさん、今までありがとう。そうだこれ! 今までのお礼に……」
付けていたブローチを渡した。去年買った薔薇のブローチ。
小ぶりだけどさりげなく付けられるところが気に入っていたの。
「頂けません! そのような物、わたくしはただミシェル様を案内していただけです」
慌てて断ろうとするアガサさん。
「感謝しているの。今日で王宮に来るのは最後だから、遠慮せずに受け取って欲しいの。デザインが好きではなかった? それなら改めてプレゼントを贈らせてくれる?」
「いいえ。とんでもございません。ミシェル様が身に付けていたものをいただけるなんて、光栄です」
メイドは主人の物をもらう事に誇りがある。アガサさんは王宮のメイドで私のうちのメイドでは無いのだけど、そう言う文化があるのだから、身に付けているものがいいと思ったの。
こんな子供相手にも毎回きちんと接してくれて嬉しかったから。
「アガサさん今までありがとう、帰りは一人で大丈夫よ。お仕事があるのに付き合わせてごめんなさいね、お元気で」
最後の別れの挨拶をした、アガサさんは泣いてくださったわ。本当に良い方ね。
「はい、ミシェル様の今後のお幸せを祈っております。今まで優しく声をかけてくださってありがとうございました。このブローチは一生大切にいたします」
「ふふっ、大袈裟なんだから。私は大丈夫ですよ。それではねアガサさん。会えなかった皆さんにもよろしくお伝えくださいね」
王妃様のサロンに着くと護衛の方が私に気付いて王妃様の侍女の一人に声をかけました。
「ミシェル様、どうぞお入り下さい」
王妃様の侍女に声をかけられました。護衛の方が頭を下げるので、私も笑顔で会釈しました。
「ミシェル、どうしたの?」
「王妃様お忙しい中、お時間を頂き誠にありがとうございます」
「いいのよ。丁度お客様が帰ったところでしたから気にしないで」
王妃様は私が幼い頃から知っていますし、光栄な事にお母様の友人という事で、気さくにおはなしをしてくださいます。
「ジュール様からご婚約のお話を聞きました」
「話が出ているの。ミシェルも知っていたでしょう?」
「はい。ジュール様から直接聞くまでは内緒にしてほしいと王妃様とお約束をしましたから、黙っておりました」
「ミシェルは本当に素直なんだから」
「ありがとう存じます」
「それで? 婚約者がだれ? って話?」
「ジュール様に婚約者が決まったらもうお会いしないと言うお約束でしたので、本日限りこちらにお邪魔する事はありませんので、最後に王妃様にご挨拶に参りました」
「え! 王宮に来るなとは言っていませんよ、いつでもきて良いのよ!」
首を左右に振りました。
「王宮に来ますと思い出がたくさんありますので、ついジュール様を思い出しては困りますもの。今までの感謝の気持ちを伝えに来ました。王妃様どうかお体にお気をつけてお元気でお過ごしください。今までありがとうございました」
「ミシェル! そんな約束……」
王妃様の声が聞こえましたが、失礼ながら決心が揺らいでは困ります。
そう思い、そっと王宮を後にしました。そしてミシェルはこの日以来王宮に行かなくなった。
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