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番外編
姉妹の話
しおりを挟む「フランはウィリアム様のこと愛しているの?」
まるで揶揄う様に姉であるヴァレンティナに聞かれた。
「な、なに? お姉様ったら突然……恥ずかしいからやめてよ」
お姉様は生まれたばかりの赤ちゃんを抱きながら微笑んでいた。先日産まれたばかりで第二子は女の子だった。お義兄様は目に入れても痛くないほどだ! 可愛くて可愛くて嫁に出したくない! と既に言っているし、このお部屋の中は姪っ子であるキャンディスちゃんの出産祝いで戴いた物で溢れている。
さすが侯爵家……
「恥ずかしがってばかりいないで、ちゃんと気持ちを伝えている? いくら婚約をしたからと言って取られちゃう事もあるのよ? 分かっている?」
……クラウディオの事を言っているのかしら!
「意地悪! ウィリアム様は浮気者じゃないもの!」
「あらぁ? 信用しているのね? もしかしたらうちのお金目当てかもしれないし、爵位持ちの娘だからかもしれないし、」
「違うもん! ウィリアム様はそんな人じゃないもん! お姉様のバカ!」
くすくすと笑うヴァレンティナ
「そうね。ウィリアム様はフランを愛しているものね。見ていても分かるわよ? ウィリアム様はフランに好きだって伝えてくれたんでしょう?」
かぁーっと顔が赤くなる。姉とは言えウィリアムに告白された内容は言いたくない。私だけの宝物の様なものだもの。
「あら、ふふっ。フランがそんな顔をするなんて、恋してるわねぇ……でもちゃんと口に出さないと相手に伝わらないわよ?」
「……あ!」
「伝えたら? 喜ぶと思うわよ」
******
「ウィル、ちゃんとフランちゃんに愛しているとか伝えているか?」
「な、なにを……そんな事、」
「好きとか言われたことあるか?」
「……ない、かもしれない」
告白? も婚約をしてほしいと言った時だけだったか……あの時フランチェスカはなんて答えたっけ……あぁ。そうだ。婿入りしてくれ。だった。
一緒にいたら楽しいし、フランチェスカの両親も良くしてくれるし、離れの家に住まわせてもらっている。私は伯爵家からも認められているんだと思う。
「それはウィルが悪いな。ちゃんと気持ちを伝えてやれよ。フランちゃんの前の婚約者はアレだったからなぁ……」
「一緒にしてほしくない!」
あのバカと同じ土俵になど立ちたくない! でもフランチェスカがそんなことで悩むくらいならちゃんと伝えないと……
「そろそろ、授乳も終わった頃かな……ウィルは今からデートだろ?」
産後間もないヴァレンティナだ。まだ疲れているだろうから、顔を見てからお暇する予定だ。
「彼女に何かをプレゼントしたくて、一緒に選べればと思っているんだけど、おすすめの店があったら教えてほしい」
頭を下げると、最近人気の店があると聞きそこへ行く事にした。いつもありがとう。と礼を言う。
「彼女ができれば自ずとプレゼントしたくなって店を探したいとか、行きたいとか思う様になるさ、エリックが聞いたら驚くだろうな! 今度会った時に教えてやろう」
楽しそうに笑うがそれは決して揶揄う様なものではない。良い友達を持ったものだと自分でも思う。
「そうだな。エリックを驚かせてやろうか……」
と言って二人で笑った。
「さて、うちの可愛い天使ちゃんに会いに行こう!」
******
「あ、あいして、ま、す?」
「なんで疑問系なのよ!」
「恥ずかしいから……」
「フランは私のこと愛している?」
「お姉様? もちろん愛しています」
「キャンディスは?」
産まれたばかりの姪っ子。
「愛しているに決まっているでしょ!」
「ウィリアム様は?」
「ウィリアム様の事は……大好き」
にやにやと笑うヴァレンティナ、そこで運良く(悪く)ガチャ……侍女によって扉が開かれた
「……だとよ、良かったなウィル」
「……………………きゃぁ!!」
恥ずかしくてウィリアムの顔が見られない!
「ウィルも告白しなくて良いのか?」
「え、……えっと、」
ウィリアムは口を押さえたまま俯いてしまった。
「よし、それじゃ後は若い二人で」
「そうね、二人とも今日はありがとうね。キャンディスちゃん、お姉ちゃん達にバイバイしましょうね」
と邸から出されてしまった……どうしよう。
取り敢えず馬車に乗り込もうとしたら、ウィリアムが手を貸してくれて馬車に乗り込んだけど、そのまま手をぎゅっと握られ隣に座った。
ど、どうしよう……こう言うの慣れてないのに。勇気を出して声を掛けようとしたら
「さっきは……、」
「は、はい!」
「……嬉しかった」
「あっ……」
さっきの大好きって……恥ずかしくなって下を向いてしまった。ウィリアムの顔が見られない。
「私だけがフランチェスカのことを好きなのかと思っていた……」
違う。と言いたいけれどふるふると頭を振った。
「フランチェスカの事が大好きだよ」
「……嬉しい」
こんなに、言葉にされるのが嬉しいものなの? こんなに? 私もちゃんと伝えよう……
「私もウィリアム様が大好きです。世界で一番大好きです」
チラッとウィリアムを見ると嬉しそうに笑っていた。あ……この顔好き。顔が赤いのは自覚しているけれどへらっと笑う。
すると手は繋がれたままウィリアムに抱き寄せられてしまった。胸板! 厚くて温かい。心臓がドキドキと早鐘の様に聞こえるけれどどっちの音かもわからない……でも落ち着く様な気がする。
会話はなくても甘い雰囲気で、幸せだと思った。
その後馬車を降りて街へ買い物へ行った。ウィリアムが私にプレゼントをしたいと言ってくれてハイクラスなお店に連れてきてくれた。
「これ可愛い……」
でも絶対高いわよね、違うものを見ようとしたら
「これが良いの?」
って! 無理無理……可愛いって言う感想を言った自分に反省! これ、ピンクダイヤモンドのネックレスだよ? うちで採れるダイヤの倍はするよ?!
「まだ他も見てみたいわ」
「そう? これ、フランチェスカに似合うよ? 花のモチーフになっていて葉っぱも付いてるんだね、気に入ったこれにしようよ」
葉っぱはエメラルドだから……
「こんな高級品、学生の身には、」
「来月、誕生日だよね? 初めて一緒に過ごすフランチェスカの誕生日につけて欲しい。ダメ?」
「……ダメなわけ、」
ない。……結局買ってもらった。
「ありがとう。でも無理しないでね」
手を繋ぎ街を歩く。
「……思っていたより安かったと言ったら金銭感覚がおかしいのかな……フランチェスカ以外にプレゼントをしたことがないからよく分からないんだけど、一角獣のツノ一本分? くらいかな」
「換算の仕方がよく分からないけど、大事にするね」
魔獣なのかな? 今度聞いてみよう。
******
コメントいただきありがとうございました! いただいたコメントは毎回とっても嬉しいです! 一日二回の更新にするか返信しながら一回の更新にしようか悩んだ結果更新を優先いたしました。本編は完結いたしましたが番外編も数話更新していきたいと思います。よろしくお願いいたします。
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