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クラウディオ 回想
しおりを挟むクラウディオが十二歳の時に両親に呼ばれて、こう言われた。
「クラウディオの婚約者が決まった。相手はロレンツィ伯爵家の次女フランチェスカ嬢だ」
「フランチェスカ嬢は次女だけど、伯爵家を継ぐからクラウディオは婿入りとなるわ。ロレンツィ家はダイヤモンド鉱山を持っていて事業も上手く行っているし、国内有数の資産家なのよ。良かったわねクラウディオ」
伯爵家に婿入り……伯爵家……嘘だろ。王家からしたら格下もいいところだ。資産家って成金と結婚するのか……
「この後はフランチェスカ嬢と顔合わせよ。仲良くするのよ」
「……はい」
とりあえず相手の顔を見てやろうと思った。
******
お茶会がセッティングしてある庭へと行くと、黒に近い藍色の髪色に紫の瞳は水晶のように透き通っている。姿勢がとても良い令嬢がそこにいた。
「君がフランチェスカ嬢?」
「はい。ロレンツィ伯爵が娘フランチェスカと申します。よろしくお願い致します」
そう言ってカーテシーをしてきた。私より身長が高く大人びた顔をしている令嬢だ。大人になったらさぞ美しくなるんだろうと思った。
まずはお互いを知ることから始めようと思い、お茶をすることにした。
「フランチェスカ嬢の年齢を聞いても構わないか?」
この年頃は女の子の方が成長は早く体つきも女の子の方が大人に近づいていくから、身長の差は気にしないでおこうと思ったのだが……
「十三歳ですわ」
にこりと微笑むフランチェスカ。
「……十三」
年上ではないか! 絶対にバカにしてるだろ! 王子が伯爵家に婿に行くことも、歳下だと言うことも!
「素敵なお庭ですわね。お花の香りもして心地のいい風も吹いて」
「……普通だろ」
庭に花が咲いているのは普通のこと。花の香りがするのも当たり前。風が心地よい? 知らん!
「……………………」
「……………………」
無言が続いた。居た堪れない気分になり話題を振った。
「伯爵家のダイヤモンドは人気があるんだそうだな」
国内有数の資産家だったよな。
「はい。とても美しいですわ。ダイヤモンドを研磨する職人の腕も凄いんですのよ。宜しかったら殿下も一度ご覧になりますか?」
婚約したばかりでもう、伯爵家に来いと言うのか! バカにしてるなこのオンナ! 見せたいのなら職人を連れてくればいい。
「機会があればな」
そっけなく答えた。
その後フランチェスカは私の婚約者という事で、王宮に来て教師から色々と習っているようだ。その後に茶を飲むようになった。時には食事も取るようになるのだが。
「殿下! お野菜もちゃんと食べないと、大きくなりませんわよ」
身長が伸びないのが私の悩みだ! 失礼なオンナだ!
「殿下、好き嫌いは良くありませんよ。ちゃんとバランス良く、」
「うるさいな!」
学園に通うようになった時、食堂でランチを取っていたら
「殿下、またこんなに残して……作ってくださる方に失礼ですわよ。それに、」
「うるさい! それならお前が作ってこい」
と言った。そうすると次の日から本当にフランチェスカが昼食を作ってくるようになり一緒に食べることになった……。野菜は嫌いなのに騙すように食べさせられた。時には菓子にも練り込ませたりする。嫌がらせがすぎる!
しかし最近は身長も伸びてきてフランチェスカの身長を超した! よくわからない緑の汁のせいか体調も良いような気がするがそんなことを言うとエスカレートしそうなので絶対に言わない。言うものかっ!
「殿下! テスト期間に入るのに勉強をしてないだなんて……王族が赤点だなんて笑い話にもなりませんわよ」
仁王立ちというやつか。本当に口うるさいやつだな。人の顔を見るたび怒ってばかりいる。フランチェスカといると疲れる。
「それなら赤点を取らせないように、山でも張ってみろ! それが的中したら次回からは自分でする」
「約束ですからね!」
すると見事フランチェスカの山は的中で上位グループに入ることが出来た。しかしフランチェスカの出してきたものを丸暗記したのは私の努力だ!
母上にも褒められ、褒美に馬を買って貰った。フランチェスカのおかげでもあるから、今度フランチェスカにも見せてやるか……と思っていた頃に、クラスで班を作ることになった。二学年に上がるまで同じ班だという。
そこにはミルカ侯爵のジュデスがいて、銀髪で緑の瞳で守ってやりたくなるようなおっとりとした令嬢だった。
聞き上手でいつも微笑み、私の話に耳を傾け頷いてくれるような令嬢の鏡のようだった。フランチェスカとは大違いだな……侯爵家の令嬢で育ちもいい。おおらかで優しく……私の理想の令嬢ではないかっ!
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