上 下
44 / 48

殿下は友人です

しおりを挟む
(マティアス視点)


 お茶をして帰ることになり、アルベルティーナ嬢が玄関口まで見送りに来てくれた

「ティーナまた学園で」
「うん」

「それでは失礼します」
 挨拶をして帰ろうとした時

「あっ。マティアス様少しよろしいですか?」


「もちろんですよ、どうかしましたか?」

「お兄様、わたくしは先に馬車に乗っていますね」

 気を使うヘルミーナの後ろ姿を見た。妹にこのような姿を見られるのは小っ恥ずかしい

「あぁ、そうしてくれ」


「あの、これ良かったら……」
 差し出されたものは、ハンカチ?

「え?」

「先日、王宮でベンチにハンカチを敷いてくださって汚れたのではないかと思って、わたくしが刺繍をしたもので悪いのですが」

 アルベルティーナ嬢の刺繍のハンカチ?夢でも見ているようだ!


「とても嬉しいです。もしかしてこの為にお怪我をされたのでは?」

「いいえ、それは関係ありません、日差しが心地よくてついうとうとと…本当ですよ」

 頬を染める彼女の顔が愛おしく

「意外とそそっかしいところもあるのですね。そういうところもまた可愛らしいですね」

 想像すると可愛らしくて、くすりと笑った。私のためにこの刺繍を…感無量である

 そうするとと顔をかぁ…っと赤くして下を向くアルベルティーナ嬢


「今度ハンカチのお礼をさせてください。お誘いしてもよろしいでしょうか?」

「お礼をしたかったのはわたくしの方で、」
「いいえ、私がそうしたいのです。ダメですか?」


 頭をふるふると振り

「お誘いいただきありがとうございます」

 耳を赤くして小さな声で返事を貰えた



******

(アルベルティーナ)


 教室で殿下に会いました
「殿下、おはようございます」

「おはよう、アルベルティーナ嬢。聞いたところによるとメイナードが出て行ったんだって?」

 王宮に挨拶へ行くと言っていた事を思い出した。書類が整ったらしい


「そうなんです。公爵邸からは離れていますので、しばらくはお会いすること出来ませんわね」

「寂しい?ユリウス殿とイザーク殿も帰られたから」

「それは寂しいですけど、お兄様達にも生活がありますもの。私の我儘に付き合わせる事は出来ません。メイナード様は楽しそうでしたわね。小さいながらも領地を経営するのだとわくわくされていましたよ」

「隣国の元王子だからね、うち王宮からも助けが行ってるよ」

「まさかメイナード様も、ルアン王国で生活することになるとは……それを許してくださった両陛下にも感謝ですわね」

「メイナードの身元保証人はファルク公爵と私なんだよ。メイナードがこの国で変なことをしたら私も公爵も罪に問われる。真面目に過ごしてもらうように目を光らせておかなくてはね」

「ふふっ。それは大丈夫ですよ、わたくしも保証いたしますわ」


「……まだメイナードが好きだったりする?」

「いいえ、わたくしは振られましたから。メイナード様は……家族のような感覚ですね。小さい頃から何かと助けられてきましたし、次はわたくしも何か手伝える事があれば良いなと思います」

「あんな事があったのに、許せるんだね。国に帰りづらくなっただろう?」


「わたくしも卒業までの間は、学生生活を楽しみたいと思います。殿下も最近は地に落ちた評判が上がってきていますね。として嬉しく思います」

「友人……か」

「あっ……馴れ馴れしかったですね、つい」


「いや、そう言ってもらえて嬉しいよ。ただのクラスメートよりもね……それに言うようになったね、地に落ちた評判とは」

 ぷっと堪えていた笑いが漏れた


「はい。逃げてきたからにはこの国でちゃんと生活しないと…皆さんに迷惑がかかりますもの。いう事は言わせてもらいますわね、もちろん殿下にも」

「あぁ、頼むよ、友人と言うならば殿下と言う呼び方はやめてくれると嬉しい、名前で呼んでくれ」

「フランク様とお呼びしてもよろしいですか?」

「あぁ」

「そうだ!今度王国史教えてくださいますか?フランク様は学年でトップでしたものね」

 テストでフランク様は全教科トップクラスで王国史に至っては満点だった。
 わたくしは、中の上と言った具合でまだまだ努力が足りないようでした

「お安い御用ですよ。私は君の案内役兼世話役だ」


 教室で話をしていても咎められる事は無くなった。ミーナが殿下と幼馴染に戻った影響と殿下が一人で生徒会の仕事をしてきたことによる努力が報われた様です。
 側近の方も戻ってこられましたし、学園生活は元に戻ってきたようです

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私、殺されちゃったの? 婚約者に懸想した王女に殺された侯爵令嬢は巻き戻った世界で殺されないように策を練る

金峯蓮華
恋愛
侯爵令嬢のベルティーユは婚約者に懸想した王女に嫌がらせをされたあげく殺された。 ちょっと待ってよ。なんで私が殺されなきゃならないの? お父様、ジェフリー様、私は死にたくないから婚約を解消してって言ったよね。 ジェフリー様、必ず守るから少し待ってほしいって言ったよね。 少し待っている間に殺されちゃったじゃないの。 どうしてくれるのよ。 ちょっと神様! やり直させなさいよ! 何で私が殺されなきゃならないのよ! 腹立つわ〜。 舞台は独自の世界です。 ご都合主義です。 緩いお話なので気楽にお読みいただけると嬉しいです。

運命の相手が変態すぎてどうすればいいですか?

日之影ソラ
恋愛
この国で生まれた貴族の娘は、十八歳になると運命の相手を見つける儀式を受ける。大聖堂に集まり、透明な水晶に映し出される人物こそ、その人が生涯を共にする相手。 一度見てしまえば運命には抗えない。強制的に一緒にいることを義務付けられる。 「せめて普通の人でありますように……」 レイネシアも十八歳になり儀式を受けることになった。そして浮かび上がった人物を見て、周囲の人々はクスクスと笑う。 「あなたの相手は、アレクト殿下です」 「え……」 なんと運命の相手に選ばれたのは王子様だった。 でも、ただの王子様じゃない。 人間に一切興味がなく、動物しか愛せない変わり者――世間を騒がす『変態王子』。

婚約破棄の『めでたしめでたし』物語

サイトウさん
恋愛
必ず『その後は、国は栄え、2人は平和に暮らしました。めでたし、めでたし』で終わる乙女ゲームの世界に転生した主人公。 この物語は本当に『めでたしめでたし』で終わるのか!? プロローグ、前編、中篇、後編の4話構成です。 貴族社会の恋愛話の為、恋愛要素は薄めです。ご期待している方はご注意下さい。

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

【完結】ご安心を、問題ありません。

るるらら
恋愛
婚約破棄されてしまった。 はい、何も問題ありません。 ------------ 公爵家の娘さんと王子様の話。 オマケ以降は旦那さんとの話。

【完結】名ばかりの妻を押しつけられた公女は、人生のやり直しを求めます。2度目は絶対に飼殺し妃ルートの回避に全力をつくします。

yukiwa (旧PN 雪花)
恋愛
*タイトル変更しました。(旧題 黄金竜の花嫁~飼殺し妃は遡る~) パウラ・ヘルムダールは、竜の血を継ぐ名門大公家の跡継ぎ公女。 この世を支配する黄金竜オーディに望まれて側室にされるが、その実態は正室の仕事を丸投げされてこなすだけの、名のみの妻だった。 しかもその名のみの妻、側室なのに選抜試験などと御大層なものがあって。生真面目パウラは手を抜くことを知らず、ついつい頑張ってなりたくもなかった側室に見事当選。 もう一人の側室候補エリーヌは、イケメン試験官と恋をしてさっさと選抜試験から引き揚げていた。 「やられた!」と後悔しても、後の祭り。仕方ないからパウラは丸投げされた仕事をこなし、こなして一生を終える。そしてご褒美にやり直しの転生を願った。 「二度と絶対、飼殺しの妃はごめんです」 そうして始まった2度目の人生、なんだか周りが騒がしい。 竜の血を継ぐ4人の青年(後に試験官になる)たちは、なぜだかみんなパウラに甘い。 後半、シリアス風味のハピエン。 3章からルート分岐します。 小説家になろう、カクヨムにも掲載しています。 表紙画像はwaifulabsで作成していただきました。 https://waifulabs.com/

【完結】婚約破棄された公爵令嬢、やることもないので趣味に没頭した結果

バレシエ
恋愛
サンカレア公爵令嬢オリビア・サンカレアは、恋愛小説が好きなごく普通の公爵令嬢である。 そんな彼女は学院の卒業パーティーを友人のリリアナと楽しんでいた。 そこに遅れて登場したのが彼女の婚約者で、王国の第一王子レオンハルト・フォン・グランベルである。 彼のそばにはあろうことか、婚約者のオリビアを差し置いて、王子とイチャイチャする少女がいるではないか! 「今日こそはガツンといってやりますわ!」と、心強いお供を引き連れ王子を詰めるオリビア。 やりこまれてしまいそうになりながらも、優秀な援護射撃を受け、王子をたしなめることに成功したかと思ったのもつかの間、王子は起死回生の一手を打つ! 「オリビア、お前との婚約は今日限りだ! 今、この時をもって婚約を破棄させてもらう!」 「なぁッ!! なんですってぇー!!!」 あまりの出来事に昏倒するオリビア! この事件は王国に大きな波紋を起こすことになるが、徐々に日常が回復するにつれて、オリビアは手持ち無沙汰を感じるようになる。 学園も卒業し、王妃教育も無くなってしまって、やることがなくなってしまったのだ。 そこで唯一の趣味である恋愛小説を読んで時間を潰そうとするが、なにか物足りない。 そして、ふと思いついてしまうのである。 「そうだ! わたくしも小説を書いてみようかしら!」 ここに謎の恋愛小説家オリビア~ンが爆誕した。 彼女の作品は王国全土で人気を博し、次第にオリビアを捨てた王子たちを苦しめていくのであった。  

公爵令嬢エイプリルは嘘がお嫌い〜断罪を告げてきた王太子様の嘘を暴いて差し上げましょう〜

星井柚乃(旧名:星里有乃)
恋愛
「公爵令嬢エイプリル・カコクセナイト、今日をもって婚約は破棄、魔女裁判の刑に処す!」 「ふっ……わたくし、嘘は嫌いですの。虚言症の馬鹿な異母妹と、婚約者のクズに振り回される毎日で気が狂いそうだったのは事実ですが。それも今日でおしまい、エイプリル・フールの嘘は午前中まで……」  公爵令嬢エイプリル・カコセクナイトは、新年度の初日に行われたパーティーで婚約者のフェナス王太子から断罪を言い渡される。迫り来る魔女裁判に恐怖で震えているのかと思われていたエイプリルだったが、フェナス王太子こそが嘘をついているとパーティー会場で告発し始めた。 * エイプリルフールを題材にした作品です。更新期間は2023年04月01日・02日の二日間を予定しております。 * この作品は小説家になろうさんとアルファポリスさんに投稿しております。

処理中です...