上 下
35 / 48

マティアス

しおりを挟む

「マティアス様、何度もご面倒をおかけしまして申し訳ございませんでした」

 アルベルティーナ嬢に謝られたが、私が勝手にやっている事。ヘルミーナにも助けてあげて。と言われたがそこは喜んでアルベルティーナ嬢の助けになりたい。

「とんでもありません、私でよければいつでもお呼びください」


「心強いお言葉ありがとうございます。
 お兄様達に助けを求めようにも、令嬢達に囲まれて…ふふ。お兄様達にも出会いがあると良いのですけど。問題児のわたくしに構ってばかりいると出会いをみすみす逃してしまいますもの」


「問題児だなんて…高貴な出にも関わらず優しくて、思いやりもあり、可愛らしくて可憐、…って私は何を…」


 自分で言っていて恥ずかしくなった。恐らく顔は赤く染まっている事だろう。こんな告白じみた事を聞かせてしまうなんて…アルベルティーナ嬢を困らせるつもりなどない


「あ、ありがとうございます…わたくしが今こうして生活できるのは、ミーナやマティアス様が良くしてくださっているからですもの、とても感謝しています」

「すみません…困らせるつもりは無かったのですが…。あなたはシーバ国で辛い思いをしてこちらへ来たのですから、良かったら私も頼ってくださると嬉しいです。
 たった一人の妹を守ってやれなかった自分が不甲斐なくて…。あなたにも同じ思いをさせたくはないのです」


 ヘルミーナが国を出て行ってからでは遅かった…もっと早く気づいてやればこんな事にはならなかった
 後悔しかないのにヘルミーナはありがとうと言ってくれた…


「マティアス様は、その後調査をしてミーナの冤罪を晴らしたではないですか。素晴らしいと思いました」

「いえ…もっと早く気が付いていればと…後悔しかありません」


「ミーナはとても頼れるお兄様だとお話をしてくださいました。わたくしにも兄がおりますし気持ちはよく分かります。だからご自分を責めないで下さい」

 微笑んでこちらを見てくるアルベルティーナ嬢を見て胸が熱くなった。私がしてきたことは間違いではなかったのかも知れない


「ヘルミーナと殿下が話すきっかけを作ってくれたのも貴女です。ヘルミーナは、スッキリした面持ちで私に話をしてくれた」


「それは、たまたま殿下と同じクラスだったからです。わたくしも殿下とお話をする事が無かったら、ミーナを傷つけた殿下を許せませんし、色眼鏡で見ていたかもしれません。
 ミーナはすごいです。わたくしもミーナのおかげで、今までの考え方が変わりましたもの」

 ふふっと笑みを溢すアルベルティーナ嬢

「…貴女に何かあると気が気ではありません。宜しかったら貴女の側で守らせて欲しいのです」

 先ほどの笑った顔とは違い眉を顰めるような困った顔をした。
 変なことを言ってしまったのか?


「マティアス様は…わたくしを通してミーナを見ているのではありませんか?」


「それは…どう言う意味でしょうか……?」


「マティアス様は…婚約者に裏切られた、可哀想なわたくしを…見ているのでしょうか?ミーナに重ねて…」

「そんな!私はただ貴女を、貴女のことが、」


「わたくしは、ミーナではありません…同じ境遇ではありますが、マティアス様にご迷惑をおかけすることは出来ません。
 ミーナも新たに婚約した事ですし、マティアス様もそろそろ自由になってもよろしいのではないですか?」


 アルベルティーナ嬢に言われた、ミーナに重ねていると言う言葉…そんなつもりはなかった。アルベルティーナ嬢を傷つける言葉だったのかも知れない
 ちゃんと誤解を解きたい、そして私の気持ちを知ってもらいたいのに、言葉が出ない…
 アルベルティーナ嬢が言う自由とはなんだろう…





「ティーナ!ここに居たのか」

「王太子殿下…ごきげんよう」

 ドレスの裾を摘み礼をするアルベルティーナ嬢…少し顔色が変わった


「もう十分楽しんだだろう?国へ帰るぞ、メイナードの事はもう忘れろ。お前を捨てた男だぞ」

「……ません」

「なんだ?」

「帰りません…わたくしは」

「我儘はここまでだ、国に帰り私と結婚する。ティーナが生まれた時から決まっていた事なんだ、もう子供ではないから分かるだろう」

 








しおりを挟む
感想 82

あなたにおすすめの小説

妹と寝たんですか?エセ聖女ですよ?~妃の座を奪われかけた令嬢の反撃~

岡暁舟
恋愛
100年に一度の確率で、令嬢に宿るとされる、聖なる魂。これを授かった令嬢は聖女と認定され、無条件で時の皇帝と婚約することになる。そして、その魂を引き当てたのが、この私、エミリー・バレットである。 本来ならば、私が皇帝と婚約することになるのだが、どういうわけだか、偽物の聖女を名乗る不届き者がいるようだ。その名はジューン・バレット。私の妹である。 別にどうしても皇帝と婚約したかったわけではない。でも、妹に裏切られたと思うと、少し癪だった。そして、既に二人は一夜を過ごしてしまったそう!ジューンの笑顔と言ったら……ああ、憎たらしい! そんなこんなで、いよいよ私に名誉挽回のチャンスが回ってきた。ここで私が聖女であることを証明すれば……。

朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。……これは一体どういうことですか!?

四季
恋愛
朝起きたら同じ部屋にいた婚約者が見知らぬ女と抱き合いながら寝ていました。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

冤罪を受けたため、隣国へ亡命します

しろねこ。
恋愛
「お父様が投獄?!」 呼び出されたレナンとミューズは驚きに顔を真っ青にする。 「冤罪よ。でも事は一刻も争うわ。申し訳ないけど、今すぐ荷づくりをして頂戴。すぐにこの国を出るわ」 突如母から言われたのは生活を一変させる言葉だった。 友人、婚約者、国、屋敷、それまでの生活をすべて捨て、令嬢達は手を差し伸べてくれた隣国へと逃げる。 冤罪を晴らすため、奮闘していく。 同名主人公にて様々な話を書いています。 立場やシチュエーションを変えたりしていますが、他作品とリンクする場所も多々あります。 サブキャラについてはスピンオフ的に書いた話もあったりします。 変わった作風かと思いますが、楽しんで頂けたらと思います。 ハピエンが好きなので、最後は必ずそこに繋げます! 小説家になろうさん、カクヨムさんでも投稿中。

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

変態婚約者を無事妹に奪わせて婚約破棄されたので気ままな城下町ライフを送っていたらなぜだか王太子に溺愛されることになってしまいました?!

utsugi
恋愛
私、こんなにも婚約者として貴方に尽くしてまいりましたのにひどすぎますわ!(笑) 妹に婚約者を奪われ婚約破棄された令嬢マリアベルは悲しみのあまり(?)生家を抜け出し城下町で庶民として気ままな生活を送ることになった。身分を隠して自由に生きようと思っていたのにひょんなことから光魔法の能力が開花し半強制的に魔法学校に入学させられることに。そのうちなぜか王太子から溺愛されるようになったけれど王太子にはなにやら秘密がありそうで……?! ※適宜内容を修正する場合があります

タイムリープ〜悪女の烙印を押された私はもう二度と失敗しない

結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
<もうあなた方の事は信じません>―私が二度目の人生を生きている事は誰にも内緒― 私の名前はアイリス・イリヤ。王太子の婚約者だった。2年越しにようやく迎えた婚約式の発表の日、何故か<私>は大観衆の中にいた。そして婚約者である王太子の側に立っていたのは彼に付きまとっていたクラスメイト。この国の国王陛下は告げた。 「アイリス・イリヤとの婚約を解消し、ここにいるタバサ・オルフェンを王太子の婚約者とする!」 その場で身に覚えの無い罪で悪女として捕らえられた私は島流しに遭い、寂しい晩年を迎えた・・・はずが、守護神の力で何故か婚約式発表の2年前に逆戻り。タイムリープの力ともう一つの力を手に入れた二度目の人生。目の前には私を騙した人達がいる。もう騙されない。同じ失敗は繰り返さないと私は心に誓った。 ※カクヨム・小説家になろうにも掲載しています

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

処理中です...