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伯父様からの報告

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 ノックの後に扉が開かれ伯父様が覗いてきました

「話は終わったかい?」


「はい、終わりました」
 ユリウス兄様が返事をしました

「じゃあ次は私の番」

 そう言って伯父様はソファに腰かけ、わたくしに向かいました


「ことの発端であるメイナード元殿下と話をしたんだ。今後のことについて…。
 彼はシーバ国で事業を展開していて、結構裕福なんだよね、知っていた?」


「いいえ…知りませんでした。週に何度か街へ足を運んでいたのは知っていますし、レストランでお食事をしたり、ドレスを見に行ったりはしました」


「うん。多分それメイナード元殿下の経営する店だよ。今は人に譲ってしまったようだけどね。元殿下は、今ルアン王国にいる。どこの国へ行こうかと試行錯誤していたから、ルアン王国に留まってくださるように説得をした」

 呆然として少し口が空いてしまいました

「まずは住むところが必要だよね?お金はあるから家は買えばなんとかなる。だけどね、流石に元王子が平民になるなんて…ねぇ…」


 現実は厳しいです。
わたくしは何も出来ません。


「…はい」
 情けなくてまた涙が出そうになるのを堪えました

「だからね、譲った」

「……何をですか?」

「爵位に決まってるでしょ!」

「爵位…?ですか」

「そう!新進気鋭の実業家にね、私が持っている子爵の位を譲った。伯爵もあるよ~って言ったんだけど、子爵が良いって言うもんだからさ…」

「子爵…メイナード様が」


「そう。なるべく普通の生活をしたいんだってさ。って言っても貴族だけどね…
 邸もついでに譲った。余っている爵位だから要らないと言ったんだけど、しっかりとお金を払ってきたよ…」


「そうですか…」

「それで今はうちに滞在しているんだ。ティーナがベルナルド王太子と結婚するって言ったら出ていってもらう予定だったけどね」


 伯父様は悪戯が成功したようにニヤリとしました


「えっ!全然気が付きませんでした!」

 メイナード様がこの屋敷内に?どう言う事
…?

「うちは無駄に広いからねぇ…お客様が少々増えたところで分からないんもんだよ…」


******


「やぁ…」
罰が悪そうな顔をするメイナード様

「メイナード様…」

「感動的な?再会だとは思う。二人で話をするか?」

「はい。出来れば」
メイナード様が答えました

「信頼しているから二人にするんだよ、何かあったら…この話全部なしにする!」

「伯父様…ありがとうございます」

「ありがとうございます。公爵」 

「なんかしたらただでは済まない、良いね?殿

 伯父様とお兄様達の目は笑っていませんでした



「扉の外にメイドと護衛を控えさせるから終わったら声を掛けるように。そうだな…一時間経っても声がかからない場合は、扉を開けるように言っておく、しかし不穏な感じがしたら強制的に扉は開けるよ」

 そう言い伯父様とお兄様達は出て行きました

シーンと言う音が部屋に響き渡ります。
お互いに無言でした。


第一声はメイナード様から



「また泣いたのか?」

「だって…」

「悪かったよ。なんか色々とごめん」

「はい」

「初めから言えば良かったかもしれないけど、アルベルは嘘をつけないから」

「愛している人達は…嘘だったんですか?」

「ラーラは男爵家の四女で、働き先を探していた。双子も似たようなもので、食い扶持は自分で探せと言われたらしくてさ、仕事を探していた。ドレスの店覚えているか?」

「はい」

「あそこのスタッフとして働いている。あれは、働き先を紹介するからと、演技をしてくれたんだ…女優になったら人気が出るだろうな、名演技だったよ」


「メイナード様の愛は…平等なんですか?」

勇気を出して気になる事を聞きました…

「まさか…演技だって」



「昔の約束を、守ってくださったんですね」


「約束というか…私の自己満だけど、アルベルを自由にしたかった」


「わたくしはメイナード様の事、分からなくて…あの舞踏会の時、婚約破棄されると思っていたから…」

「婚約破棄…って言ったらその場で斬られそうだよな…取り敢えず王都から離れてもらおうと思っていた」

「どうして?」

「あの場で破棄すると兄上達がアルベルを離さないと思ったから、時間稼ぎ…かな。私達の婚約はカルム公爵側から破棄された。
 アルベルは私や兄上達のことを恨んでいる?」



「わたくしのダメなところを叱ってくださるのはメイナード様だけでした。わたくしの事を…公爵家の娘と言う目で見ないのもメイナード様だけでした。
 ベルナルド様は厳しいお方です。でも自分にも厳しい方で王妃はわたくしに務まりません。ビクトル様はとても可愛がってくださりましたが、それはただ可哀想なわたくしを見ているだけだと思います」

「アルベルにはいろんな選択肢があると言うことを知ってほしかった。公爵もアルベルのしたい事をさせたがっていた。私は不自由な身だと感じた。この国にきてどう?」

「お友達も出来たし、わたくしの事を知らない場所と言うのは新鮮で楽しいです…」


「そうか。それは良かった…私はアルベルの事を好きだ。でもそれは家族愛というか妹を見るような感覚かな。アルベルと結婚したら、幸せになるだろうとは思う。
 ただ、私も国を離れて少し自由が欲しかった、これは私の我儘に過ぎないんだ…巻き込んでしまって悪かった」

「メイナード様のお気持ちが聞けて良かったです。ずっとモヤモヤしていたから…嫌われたわけでは無かったのですね」

「アルベルの事を嫌いになることはない」
 子供の時のような笑い顔でした





 
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