上 下
9 / 48

箱入り娘アルベルティーナ

しおりを挟む


 アルベルは可愛くて、大人しくて素直で優しい。家族の愛情をたっぷり注がれて育っている。それなのに謙虚で穏やかで二人の兄と共に公爵家の子供として、しっかり教育をされている。

 問題点は大人しすぎることと周りが先回りしてしまう事。
 肌寒いと思うまえに上着を掛けられる
お茶をしていて、気に入ったお菓子はすぐに皿に置かれる
 何かを言う前に用意されるのだから、ありがとうと言うしかなくなる。そうなると意見も言えなくなる
 
 公爵はなるべく外に出したくないようだが、王宮に来て教育を受けている

マナーにダンスにその他諸々…遊ぶ時間なんてないんだろうな。
 いつもは何をして過ごすかと聞くと、お兄様達とお茶をしたりお庭を歩いたり刺繍をしたり読書をしていると聞いた。外出は王宮へいく馬車の中だけらしい。十五歳になったら学園に行くのが楽しみ。友達を作りたいと言っていた。


 アルベルの周りは、私たち王子三人とアルベルの兄二人で構成されている
 母の茶会で顔を合わせる令嬢とは、たまに手紙のやり取りをしていると聞いて、ホッとした。外界との繋がりはあるようだ


 ある日母に呼ばれた。部屋に入ると、兄二人が険悪な雰囲気を丸出しにしていた
何があったのだろう?聞ける雰囲気ではない


「二人とも良い加減にしなさい!」

母がそういうと、二人は互いに顔を背けた
「こいつが、アルベルティーナにちょっかいをかけるからです」

 ベルナルド兄長男ビクトル兄次男を指差している

「ちょっかいってなんですか?アルベルティーナは兄上のものではないでしょう?いつも泣かせてばかりいるくせに!母上、アルベルティーナと婚約させてください!」

「はぁ?お前何言ってる?ティーナは私と婚約するんだよ!」

「アルベルティーナが兄上と婚約をして幸せになるわけがない!いつも頑張ってるのに、その姿を見てもっと頑張れと言うんですよ?まだ十歳の女の子に」

「仕方がないだろう!ティーナは私と婚約したら、いずれは国を支える存在だ!王妃になるんだぞ、今のうちに自覚を持って行動してもらわなくては困るんだ!辛い思いをしているのは知っている」


「誰が決めたんですか?だから泣かせても良いと仰るんですか?可哀想に…行動まで制限されて、遊びたい年頃なのに、授業ばかり受けさせて、ユリウスやイザークとピクニックへ行こうとしていたのもやめさせたでしょう?毎年恒例の領地へも行かせなかった!辛い思いを知っていながら放置するなんて、何様なんですか!」

「私がいない間にいつもティーナを拘束しているのは知っているんだぞ!私がティーナを登城させているんだ、それがなかったらお前達はアルベルティーナに会わせない!」

「もうっ!ケンカはそこまでにしてちょうだい…もうこの際アルベルティーナに選ばせようかしら…」


「そうしましょうよ」
「あぁ、そうだな」


 なんなんだ兄上達は…アルベルが可哀想じゃないか。特にベルナルド兄には呆れた…行動の制限は兄の仕業だったのか




 アルベルが登城する日が来た。
「やぁ、アルベル!」
「メイナード様!お久しぶりですね、お元気でしたか?」
 にこりと微笑まれ大きい目が細められる

「元気だよ、アルベルは?」
「いつも通り元気です」
「そっか…呼び出しの時間より早くない?」
「お庭に大輪の薔薇が咲いたと聞いて、先に見ようと思い早く来ました」

 バラ?庭師が新種のバラを育てていると言っていたあれか?

「あぁ、咲いたんだ?一緒に行こうか」
「はい、お供します」

 ここで案内役とは別れた。庭を見てから連れて行けば良いだろう


「この前メイナード様から言われて、わたくしなりに考えてお父様にお話をしたの」
「うん」
「わたくしは王妃様にはなりたくないから、婚約者候補を辞退する事にしてお父様が今日お話をしてくださっている筈です」

「……今日?!」
 素っ頓狂な声が出てしまった!だって今日は…アルベルにどちらかを選ばせるって母が言っていた

「はい」

「アルベル、外へ出よう」
「えっ?」
「良いから行こう」

 強引に手を引っ張り秘密の出入り口から王宮の外に出た

 金は持っていた。何があるか分からないから現金と売ったらすぐに金になるものを持ち歩くように言われていたから。

 街へ行くとこの格好では明らかに目立つので、マントを買い羽織った
 アルベルは外は初めてです、どきどきしますね。と笑っていた

「少しの間の家出ごっこだよ、夕方には戻ろう」
「はい」

「アルベルはベルナルド兄とビクトル兄を選べるか?」

「…どうしてですか?お父様がお断りしてくださったはずですよ」
「そんな事で兄上が諦める筈がない…このままどっかに逃げようか?」
「わたくしといたらメイナード様に迷惑が掛かってしまいます、逃げるならわたくしを置いて下さい」
「そう言うわけには行かない…そうだな、いつかアルベルを逃がしてあげるよ、それまでは私の隣に居てくれる?」
「…はい」

 意味を分かっていないだろうが、アルベルティーナの存在は危険だと思う。
 大好きなアルベルを守るためには仕方がないんだ。



 公爵が婚約者候補から辞退すると話をして兄は激昂したらしい、アルベルティーナに選ばせると言って呼び出したのに時間通りに来ない。
 私の姿もない事から二人で何処かにいると思われ城内の大捜索、城外の捜査で街にいるところが見つかった。
 とても怒られたけど、アルベルは私を選んだと言うことになり婚約する事になった

 兄達はいつまで経ってもアルベルの事を諦めていない。

 対してアルベルの兄達は、渋々私との婚約を許しアルベルの行動の制限はやめて欲しい、登城の回数を減らして欲しいと頼んできたので、快く許可をした。

 公爵家の家は相変わらずアルベルに甘いけど、学園へ通い出してからは、外出を許したりアルベルのしたい事をさせている

 




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】王子妃教育1日無料体験実施中!

杜野秋人
恋愛
「このような事件が明るみになった以上は私の婚約者のままにしておくことはできぬ!そなたと私の婚約は破棄されると思え!」 ルテティア国立学園の卒業記念パーティーで、第二王子シャルルから唐突に飛び出したその一言で、シャルルの婚約者である公爵家令嬢ブランディーヌは一気に窮地に立たされることになる。 シャルルによれば、学園で下級生に対する陰湿ないじめが繰り返され、その首謀者がブランディーヌだというのだ。 ブランディーヌは周囲を見渡す。その視線を避けて顔を背ける姿が何人もある。 シャルルの隣にはいじめられているとされる下級生の男爵家令嬢コリンヌの姿が。そのコリンヌが、ブランディーヌと目が合った瞬間、確かに勝ち誇った笑みを浮かべたのが分かった。 ああ、さすがに下位貴族までは盲点でしたわね。 ブランディーヌは敗けを認めるしかない。 だが彼女は、シャルルの次の言葉にさらなる衝撃を受けることになる。 「そして私の婚約は、新たにこのコリンヌと結ぶことになる!」 正式な場でもなく、おそらく父王の承諾さえも得ていないであろう段階で、独断で勝手なことを言い出すシャルル。それも大概だが、本当に男爵家の、下位貴族の娘に王子妃が務まると思っているのか。 これでもブランディーヌは彼の婚約者として10年費やしてきた。その彼の信頼を得られなかったのならば甘んじて婚約破棄も受け入れよう。 だがしかし、シャルルの王子としての立場は守らねばならない。男爵家の娘が立派に務めを果たせるならばいいが、もしも果たせなければ、回り回って婚約者の地位を守れなかったブランディーヌの責任さえも問われかねないのだ。 だから彼女はコリンヌに問うた。 「貴女、王子妃となる覚悟はお有りなのよね? では、一度お試しで受けてみられますか?“王子妃教育”を」 そしてコリンヌは、なぜそう問われたのか、その真意を思い知ることになる⸺! ◆拙作『熊男爵の押しかけ幼妻』と同じ国の同じ時代の物語です。直接の繋がりはありませんが登場人物の一部が被ります。 ◆全15話+番外編が前後編、続編(公爵家侍女編)が全25話+エピローグ、それに設定資料2編とおまけの閑話まで含めて6/2に無事完結! アルファ版は断罪シーンでセリフがひとつ追加されてます。大筋は変わりません。 小説家になろうでも公開しています。あちらは全6話+1話、続編が全13話+エピローグ。なろう版は続編含めて5/16に完結。 ◆小説家になろう4/26日間[異世界恋愛]ランキング1位!同[総合]ランキングも1位!5/22累計100万PV突破! アルファポリスHOTランキングはどうやら41位止まりのようです。(現在圏外)

(完結)ふざけんじゃないわよっ!! ーーこんな勝手な夫は捨てていいでしょう?(全4話程度)

青空一夏
恋愛
夜勤明けの私は誕生日にある場所に連れて行かれた。寝たいのに無理矢理連れて来られたその場所には義両親がいて義姉もいた。いったいここは? さらりとざまぁ展開のショートショート全3話から5話ぐらいで完結の予定。

たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな、と婚約破棄されそうな私は、馬オタクな隣国第二王子の溺愛対象らしいです。

弓はあと
恋愛
「たった一度の浮気ぐらいでガタガタ騒ぐな」婚約者から投げられた言葉。 浮気を許す事ができない心の狭い私とは婚約破棄だという。 婚約破棄を受け入れたいけれど、それを親に伝えたらきっと「この役立たず」と罵られ家を追い出されてしまう。 そんな私に手を差し伸べてくれたのは、皆から馬オタクで残念な美丈夫と噂されている隣国の第二王子だった―― ※物語の後半は視点変更が多いです。 ※浮気の表現があるので、念のためR15にしています。詳細な描写はありません。 ※短めのお話です。 ※感想欄はネタバレ配慮しておりません、ご注意ください。 ※設定ゆるめ、ご都合主義です。鉄道やオタクの歴史等は現実と異なっています。

間違った方法で幸せになろうとする人の犠牲になるのはお断りします。

ひづき
恋愛
濡れ衣を着せられて婚約破棄されるという未来を見た公爵令嬢ユーリエ。 ───王子との婚約そのものを回避すれば婚約破棄など起こらない。 ───冤罪も継母も嫌なので家出しよう。 婚約を回避したのに、何故か家出した先で王子に懐かれました。 今度は異母妹の様子がおかしい? 助けてというなら助けましょう! ※2021年5月15日 完結 ※2021年5月16日  お気に入り100超えΣ(゚ロ゚;)  ありがとうございます! ※残酷な表現を含みます、ご注意ください

王太子殿下の小夜曲

緑谷めい
恋愛
 私は侯爵家令嬢フローラ・クライン。私が初めてバルド王太子殿下とお会いしたのは、殿下も私も共に10歳だった春のこと。私は知らないうちに王太子殿下の婚約者候補になっていた。けれど婚約者候補は私を含めて4人。その中には私の憧れの公爵家令嬢マーガレット様もいらっしゃった。これはもう出来レースだわ。王太子殿下の婚約者は完璧令嬢マーガレット様で決まりでしょ! 自分はただの数合わせだと確信した私は、とてもお気楽にバルド王太子殿下との顔合わせに招かれた王宮へ向かったのだが、そこで待ち受けていたのは……!? フローラの明日はどっちだ!?

悪役令嬢はお断りです

あみにあ
恋愛
あの日、初めて王子を見た瞬間、私は全てを思い出した。 この世界が前世で大好きだった小説と類似している事実を————。 その小説は王子と侍女との切ない恋物語。 そして私はというと……小説に登場する悪役令嬢だった。 侍女に執拗な虐めを繰り返し、最後は断罪されてしまう哀れな令嬢。 このまま進めば断罪コースは確定。 寒い牢屋で孤独に過ごすなんて、そんなの嫌だ。 何とかしないと。 でもせっかく大好きだった小説のストーリー……王子から離れ見られないのは悲しい。 そう思い飛び出した言葉が、王子の護衛騎士へ志願することだった。 剣も持ったことのない温室育ちの令嬢が 女の騎士がいないこの世界で、初の女騎士になるべく奮闘していきます。 そんな小説の世界に転生した令嬢の恋物語。 ●表紙イラスト:San+様(Twitterアカウント@San_plus_) ●毎日21時更新(サクサク進みます) ●全四部構成:133話完結+おまけ(2021年4月2日 21時完結)  (第一章16話完結/第二章44話完結/第三章78話完結/第四章133話で完結)。

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

婚約破棄の『めでたしめでたし』物語

サイトウさん
恋愛
必ず『その後は、国は栄え、2人は平和に暮らしました。めでたし、めでたし』で終わる乙女ゲームの世界に転生した主人公。 この物語は本当に『めでたしめでたし』で終わるのか!? プロローグ、前編、中篇、後編の4話構成です。 貴族社会の恋愛話の為、恋愛要素は薄めです。ご期待している方はご注意下さい。

処理中です...