上 下
17 / 48

お迎えです

しおりを挟む
 川面に移るオレンジの夕日はとても美しくて、外国に来たのだな…としみじみと思いました

 あくる日の朝、朝食ルームで朝食を取っていたところ、扉の外がざわざわと騒がしくなったようで、ミーナのお父様である侯爵様が

「なんだ、騒がしい?」
 侍従の一人に声をかけました

「様子を見て参ります」
頭を下げて扉へと向かった

「何かしらね?」
 ミーナも不思議そうな顔をしていましたが、朝食の続きとばかりにパンを手に取りました

「アルベルティーナ嬢、気にしないで朝食を楽しみましょう」
 マティアス様が優雅に微笑んでこられたので、わたくしも果実水に手を伸ばしたところでした

「……っか、…おまちください…そちら…」
 途切れ途切れに聞こえてくる遠慮しがちな声が聞こえる

「ふむ。みてこようか」
 侯爵様が立ち上がりました
どんどん近づいてくる声

「…ファルク閣下、そちらは!」
バタンと扉が開かれました


「ファルク閣下!」
 侯爵様が驚きを隠せない様子でした

「やぁおはよう良い朝だね。オーバリ侯爵、並びにご家族の皆さん急に邪魔して悪いね」

 こちらに目を向けるファルク閣下と呼ばれた男性は…

「伯父様…!」
「やぁ、ティーナ会いたかったよ」


 カツカツと近寄りぎゅうっと抱きしめてこられました
「伯父様、くるしい…」
そういうと少し力を緩めてくれました


「なんですぐに来ないんだ?心配しただろう。寄り道はいけないね。侯爵から手紙をもらってすぐに迎えにこようと思ったら、夜に迎えに行くのは常識にかけるとニコラウスに怒られてしまってこんな時間になった」

 頬にキスを落とされました、こんな朝早いお迎えは常識にかけないのでしょうか…


「お手紙に書いたでしょう?お友達の家に行ってから行きますと」
 困ったようにお答えすると

「もう用事は済んだろう?邸へ帰ろう」
 伯父様に抱っこされてしまいました

「伯父様!恥ずかしいから降ろして、」
「恥ずかしいことなんてないよ、侯爵家の皆さん、うちの娘が世話になったね、えっと、君がヘルミーナ嬢かな?」

「は、はい公爵様」

「うちの娘が世話になったようだ、後ほど礼をしたい。招待するから遊びにきてくれるかい?」

「はい、それは光栄ですけれど…ティーナはしばらくうちで過ごすと、」
「君の気持ちも分かるよ。うんありがとう。しかしティーナがこの国にきた以上、私がティーナの親代わりだからね。もちろん君との付き合いに口は出さないから、遊びに行くことも来ることも許そう。侯爵それで良いよね?」


「え、えぇ。公爵閣下がそう仰るのならそのように。ただ朝食の途中ですので、アルベルティーナ嬢にはせめて朝食のもてなしは受けていただきたい」

 こくこくとわたくしが頷くと叔父様は諦めたように席に着かせてくれた。

「分かった。それでは一時間だけ待つ、アルベルティーナの荷物を用意するように」

「はいっ!」
 公爵家から連れてきた侍女が返事をした


「皆さま…大変失礼をしてしまいまして申し訳ございません」
 顔が赤くなるのが自分でも分かった、叔父様がわたくしをまるで幼い子供のように接するものだから恥ずかしい


「いや、公爵閣下の可愛がっている姪と言うのは事実だったんだね」
「公爵様の意外な一面でしたわねぇ」
 侯爵様と夫人は慣れている様子でした。その昔お母様にもこういう感じだったのでしょうか…?


「凄いわね…まさかこんなに早くお迎えが来るとは…ティーナ会いに行っても良いのね?」
 驚いている様子を隠さないミーナ


「はい。またすぐに会いましょうね」

「アルベルティーナ嬢、また遊びに来てください、絶対に!」
 真剣な眼差しのマティアス様、大事なミーナ様の友達ですものね


「はい、またお邪魔いたします。マティアス様短い間でしたがありがとうございました」
 笑顔で答えると、素敵な笑みを返してくださいました


「…あと三十分」
 伯父様が戻ってこられました!
朝食を終えてお茶を飲んでいるとタイムリミットが来ました

「ティーナ、帰るぞ。ニコラウスも待っている」
「はい」

 別れを惜しみながら一旦はミーナと別れる事になりました。


「伯父様、数日間はミーナと居たいと言ったのに!」
 口を尖らせて抗議をする


「ティーナの事を心配しているこちらの事も考えてくれ。気が気ではないよ。ヘルミーナ嬢の事は噂で聞いた、ティーナも同じような目に遭うなんて…もうシーバ国には返したくない。このまま養子縁組を、」
「伯父様っ!」


「フェデリカと同じ顔で睨まないでくれ。
離れていた姪っ子と一緒に暮らせるのが嬉しいんだよ…手紙を貰ってからティーナが来るのをどんなに待ち望んだ事か…」


「…それは感謝しますけど、」
「邸に着いたら離れていた分たくさん甘やかそう、デザイナーを呼んだから制服やドレスを作ろうな」
 優しく頭を撫でてくださいました

「はい、伯父様ありがとうございます」
 伯父様の頬にキスをすると蕩けるように笑顔になった

「妻が生きていれば、ティーナが来る事を喜んだだろうにね残念だよ、フェデリカとも仲が良かったからね」

 伯母様が亡くなってから三年が経ちましたものね。伯父様は再婚はなさらないようです



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

嘘を囁いた唇にキスをした。それが最後の会話だった。

わたあめ
恋愛
ジェレマイア公爵家のヒルトンとアールマイト伯爵家のキャメルはお互い17の頃に婚約を誓た。しかし、それは3年後にヒルトンの威勢の良い声と共に破棄されることとなる。 「お前が私のお父様を殺したんだろう!」 身に覚えがない罪に問われ、キャメルは何が何だか分からぬまま、隣国のエセルター領へと亡命することとなった。しかし、そこは異様な国で...? ※拙文です。ご容赦ください。 ※この物語はフィクションです。 ※作者のご都合主義アリ ※三章からは恋愛色強めで書いていきます。

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

うたた寝している間に運命が変わりました。

gacchi
恋愛
優柔不断な第三王子フレディ様の婚約者として、幼いころから色々と苦労してきたけど、最近はもう呆れてしまって放置気味。そんな中、お義姉様がフレディ様の子を身ごもった?私との婚約は解消?私は学園を卒業したら修道院へ入れられることに。…だったはずなのに、カフェテリアでうたた寝していたら、私の運命は変わってしまったようです。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

今日も旦那は愛人に尽くしている~なら私もいいわよね?~

コトミ
恋愛
 結婚した夫には愛人がいた。辺境伯の令嬢であったビオラには男兄弟がおらず、子爵家のカールを婿として屋敷に向かい入れた。半年の間は良かったが、それから事態は急速に悪化していく。伯爵であり、領地も統治している夫に平民の愛人がいて、屋敷の隣にその愛人のための別棟まで作って愛人に尽くす。こんなことを我慢できる夫人は私以外に何人いるのかしら。そんな考えを巡らせながら、ビオラは毎日夫の代わりに領地の仕事をこなしていた。毎晩夫のカールは愛人の元へ通っている。その間ビオラは休む暇なく仕事をこなした。ビオラがカールに反論してもカールは「君も愛人を作ればいいじゃないか」の一点張り。我慢の限界になったビオラはずっと大切にしてきた屋敷を飛び出した。  そしてその飛び出した先で出会った人とは? (できる限り毎日投稿を頑張ります。誤字脱字、世界観、ストーリー構成、などなどはゆるゆるです) hotランキング1位入りしました。ありがとうございます

完結・私と王太子の婚約を知った元婚約者が王太子との婚約発表前日にやって来て『俺の気を引きたいのは分かるがやりすぎだ!』と復縁を迫ってきた

まほりろ
恋愛
元婚約者は男爵令嬢のフリーダ・ザックスと浮気をしていた。 その上、 「お前がフリーダをいじめているのは分かっている! お前が俺に惚れているのは分かるが、いくら俺に相手にされないからといって、か弱いフリーダをいじめるなんて最低だ! お前のような非道な女との婚約は破棄する!」 私に冤罪をかけ、私との婚約を破棄すると言ってきた。 両家での話し合いの結果、「婚約破棄」ではなく双方合意のもとでの「婚約解消」という形になった。 それから半年後、私は幼馴染の王太子と再会し恋に落ちた。 私と王太子の婚約を世間に公表する前日、元婚約者が我が家に押しかけて来て、 「俺の気を引きたいのは分かるがこれはやりすぎだ!」 「俺は充分嫉妬したぞ。もういいだろう? 愛人ではなく正妻にしてやるから俺のところに戻ってこい!」 と言って復縁を迫ってきた。 この身の程をわきまえない勘違いナルシストを、どうやって黙らせようかしら? ※ざまぁ有り ※ハッピーエンド ※他サイトにも投稿してます。 「Copyright(C)2021-九頭竜坂まほろん」 小説家になろうで、日間総合3位になった作品です。 小説家になろう版のタイトルとは、少し違います。 表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。

政略より愛を選んだ結婚。~後悔は十年後にやってきた。~

つくも茄子
恋愛
幼い頃からの婚約者であった侯爵令嬢との婚約を解消して、学生時代からの恋人と結婚した王太子殿下。 政略よりも愛を選んだ生活は思っていたのとは違っていた。「お幸せに」と微笑んだ元婚約者。結婚によって去っていた側近達。愛する妻の妃教育がままならない中での出産。世継ぎの王子の誕生を望んだものの産まれたのは王女だった。妻に瓜二つの娘は可愛い。無邪気な娘は欲望のままに動く。断罪の時、全てが明らかになった。王太子の思い描いていた未来は元から無かったものだった。後悔は続く。どこから間違っていたのか。 他サイトにも公開中。

愛する貴方の愛する彼女の愛する人から愛されています

秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「ユスティーナ様、ごめんなさい。今日はレナードとお茶をしたい気分だからお借りしますね」 先に彼とお茶の約束していたのは私なのに……。 「ジュディットがどうしても二人きりが良いと聞かなくてな」「すまない」貴方はそう言って、婚約者の私ではなく、何時も彼女を優先させる。 ◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆ 公爵令嬢のユスティーナには愛する婚約者の第二王子であるレナードがいる。 だがレナードには、恋慕する女性がいた。その女性は侯爵令嬢のジュディット。絶世の美女と呼ばれている彼女は、彼の兄である王太子のヴォルフラムの婚約者だった。 そんなジュディットは、事ある事にレナードの元を訪れてはユスティーナとレナードとの仲を邪魔してくる。だがレナードは彼女を諌めるどころか、彼女を庇い彼女を何時も優先させる。例えユスティーナがレナードと先に約束をしていたとしても、ジュディットが一言言えば彼は彼女の言いなりだ。だがそんなジュディットは、実は自分の婚約者のヴォルフラムにぞっこんだった。だがしかし、ヴォルフラムはジュディットに全く関心がないようで、相手にされていない。どうやらヴォルフラムにも別に想う女性がいるようで……。

処理中です...