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セイラは義母と観劇へ

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「とても素敵なお話でしたね!」

 お義母様に声をかけました。

「えぇ、チケットが取れて良かったわ。恋愛の舞台なんて夫は興味がないでしょうし、女性同士が一番よね」

 お母様と舞台を見た後に、備え付けのバーでお茶を飲みました。

 バーと言っても、お酒だけをだしているわけではなく、お茶の種類も豊富です。こちらでお茶を飲んでいると、お義母様の知り合いの方に良くお会いします。


「そうなの、うちの息子ウィルベルトの婚約者なのよ。これからもよろしくお願いしますわね」

「セイラ・ルフォールと申します。よろしくお願い致します」

 何人もの方に挨拶をしました。

 ……稀に



「まぁ、こちらこそよろしくお願いしますわね。セイラ様はどちらのご出身かしら? では見かけないお顔ですわね」


 そう言った嫌味にお義母様は、


「ふふっ。夫人、うちで販売しているソルトクッキーをいつもご注文いただきありがとうございます」


「とても気に入ってますのよ。主人もあのクッキーはお酒にも合うと言ってますの。
 予約が困難になってきていますわね。殿下も口にされているなんて、さすがオリバス家ですわね」


「あら、ありがとうございます。ここにいるセイラさんが考案者ですのよ。うちの息子は殿下の下で働いているんですが、セイラさんもそのお兄様も殿下と懇意にしていますのよ。息子は良い子を選んでくれても安心していますのよ」


 ゆっくりとした口調で笑顔で話すお義母様を見てさすがだと思いました。


 私は最近になって社交界に参加している新参者です。これからお義母様やベアトリス様を見習い社交にも力を入れていかなくてはなりませんね。


 嫌味の一つや二つ華麗に返せるように……



「あなたがあのお菓子の考案者でしたのね、ホホホ……」
 
 そう言って夫人は去って行きました。


「セイラさん気にしないでね。あの方の娘さんがウィルを狙っていたのよ。
 もう昔っからしつこくてね! ウィルの女嫌いはきっとそのせいだと思うくらいよ」


「そんなことがあったのですね。ウィルベルト様は素敵ですし、学園でも人気がありましたもの」


しつこくするのは相手に嫌われる行為ですわね。
 女性を遠ざけていたのは知っていましたが、女嫌いとは……


「こうやってお義母様とお出かけをして、ウィルベルト様と婚約が出来て、趣味のお菓子作りでお義父様が協力してくださって、こんなに幸せで良いんでしょうか?」


 本来なら今頃私はレオと結婚して、ファーノン男爵夫人として領地にいるはずだったのですから。
 煌びやかな王都の伯爵家に嫁ぐことになるとは夢にも思いませんでした。


「ウィルがセイラさんじゃないと嫌だというのですから。セイラさんもそう思ってくれているのではなくて?」


「はい」


 ウィルベルト様がいなくては生活が出来ないくらいに……それに、オリバス伯爵家の皆さんがが大好きですもの


「今日の舞台は人気俳優が出ていたおかげで普段会わない家の方もお会いできて、セイラさんを紹介できて良かったわ。あと一年で結婚式ですもの、楽しみね」


「はい。お義母様。よろしくご指導お願い致します」


「はい。それにね、わたくしたちが仲の良い所を皆さんに見せているの。
 ウィルにその気がなくても政略結婚だと思われて押しかける令嬢がいたら困るでしょう? 本当に自分勝手な子って嫌よね」


 お義母様、過去に何かあったのでしょうか? お義父様はハンサムですし……伯爵様ですし……聞かないでおきましょう


 にこりと笑みを返す事にしました。苦笑いなのかもしれません。


「さぁ、そろそろ帰りましょうか? セイラさんがお泊まりをするからと言ってあまり遅くなるのも良くないわね」

「はい、本日はお誘いいただきありがとうございました」



「また二人でお出かけましょうね」


「はい」


 ウィルベルト様はまだお帰りにならないだろうけれど、朝食の約束をしているので今日あった事をお話ししましょう



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