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迷い人
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~ウィルベルト視点~
いつものように図書館で本を借り、避難場所へと向かった。
するとガゼボに人影があった。まさかここも見つかったのか?一人になるにはいい場所だと思ったのに…
するとガゼボの中の人影と目が合った。
まるでミルクティーのような色素の薄いブラウンの髪は見るからに艶のある滑らかさで、琥珀色の大きな瞳には涙を浮かべていた
声を掛けるのならもっと優しい言葉を掛ければ良かったのかも知れない。と反省をした
『こんなところで何をしている?』
『あんたに聞いてるんだけど?』
迷子になったと言った……。なんで学園内で迷子になるかは不明だが、新入生だった、顔が赤くなっていた。
『今日は休みなのにわざわざ図書館に?』
横に置いてある本が目に止まった。私も読んだ事のある植物図鑑
『はい、本を読める場所を探して歩いていたらここに辿り着いてしまいました』
そういう彼女は気がついてないのか?
『なんで泣いてるんだ?』
涙が溢れているその瞳はきらきらとしていて美しいので戸惑った
『ほら、拭いとけ』
ぶっきらぼうにハンカチを渡した。こんな場面は慣れていないんだ……
『ありがとうございます。お借りします』
洗濯をしてある清潔なものだから渡しても問題はないだろう。彼女は躊躇なくハンカチにその涙を吸わせていた
『立てるか?図書館まで送って行くよ』
『え! 良いのですか? こちらに来たということは何か用事があったんじゃ?』
自分でも驚いた。女の子を送って行くという行動なんて、生涯で一度もないし、普通に口から出た言葉だった
『……避難かな? ここは静かであまり人が来ないから気に入っているんだ』
『良い隠れ場所ですね』
『さっきまで泣いていたやつが言うセリフではないと思うが?』
呆れた口調だったかもしれないが、面白い子だと思った。さっきまで泣いていたのに
『近道するが良いか?』
『はい』
舗装された道ではなく、植木の間を通るルート。普通の令嬢はこんな道を通らない。
でもこの道が最短ルートだ。
彼女をみると楽しそうに私の後をついて来ていた
『ほら、あそこが図書館』
『こんな近くだったんですね……いっぱい歩いたのに』
驚いた様子の彼女はやっぱり単なる迷子だった
『君が歩いてきたルートは散策コースだ。わざわざあの道を通って、あそこに行こうとは誰も思わない。何があるわけではない。もし来ても暇なやつだろうな』
『あの場所が好きでよくここを抜けて行くんだ』
『すみません。お邪魔してしまって』
『別に誰の場所でもない。もし辿りつけるならまた来るといい』
髪の毛についた葉っぱが目に入った。令嬢に葉っぱを付けて帰らせるわけには行けないな……葉っぱを取ると髪にも手を触れてしまった、サラサラの髪は絹の糸のようだった
『あの、ハンカチを洗ってお返しに来ます』
『べつにいいよ。ハンカチの一枚くらい』
『いえ。お返しします。お名前……教えてください。私はセイラと申します』
お辞儀をされ頭を上げたその時、セイラ嬢からふわっと石鹸の香りがした。
いつも絡んでくる鼻につく香水を付けている、しつこい女たちとは違う香り。清潔感があった
『ウィルベルト、この学園の二年だ』
『ウィルベルト様、ありがとうございました。それではまた』
セイラ嬢はお辞儀をして去っていた。私のことを知らなかったのか……結構知られていると思っていたのに。くすくすと笑いが込み上げて来た。
それにしてもセイラ嬢……名前をどこかで聞いたような?
ほんの少しの時間だったし会話も弾んだわけではないが心地の良い時間だった。
なんとなくまた会いたいと思った。
ここに来ればまた会えるのかもしれない
いつものように図書館で本を借り、避難場所へと向かった。
するとガゼボに人影があった。まさかここも見つかったのか?一人になるにはいい場所だと思ったのに…
するとガゼボの中の人影と目が合った。
まるでミルクティーのような色素の薄いブラウンの髪は見るからに艶のある滑らかさで、琥珀色の大きな瞳には涙を浮かべていた
声を掛けるのならもっと優しい言葉を掛ければ良かったのかも知れない。と反省をした
『こんなところで何をしている?』
『あんたに聞いてるんだけど?』
迷子になったと言った……。なんで学園内で迷子になるかは不明だが、新入生だった、顔が赤くなっていた。
『今日は休みなのにわざわざ図書館に?』
横に置いてある本が目に止まった。私も読んだ事のある植物図鑑
『はい、本を読める場所を探して歩いていたらここに辿り着いてしまいました』
そういう彼女は気がついてないのか?
『なんで泣いてるんだ?』
涙が溢れているその瞳はきらきらとしていて美しいので戸惑った
『ほら、拭いとけ』
ぶっきらぼうにハンカチを渡した。こんな場面は慣れていないんだ……
『ありがとうございます。お借りします』
洗濯をしてある清潔なものだから渡しても問題はないだろう。彼女は躊躇なくハンカチにその涙を吸わせていた
『立てるか?図書館まで送って行くよ』
『え! 良いのですか? こちらに来たということは何か用事があったんじゃ?』
自分でも驚いた。女の子を送って行くという行動なんて、生涯で一度もないし、普通に口から出た言葉だった
『……避難かな? ここは静かであまり人が来ないから気に入っているんだ』
『良い隠れ場所ですね』
『さっきまで泣いていたやつが言うセリフではないと思うが?』
呆れた口調だったかもしれないが、面白い子だと思った。さっきまで泣いていたのに
『近道するが良いか?』
『はい』
舗装された道ではなく、植木の間を通るルート。普通の令嬢はこんな道を通らない。
でもこの道が最短ルートだ。
彼女をみると楽しそうに私の後をついて来ていた
『ほら、あそこが図書館』
『こんな近くだったんですね……いっぱい歩いたのに』
驚いた様子の彼女はやっぱり単なる迷子だった
『君が歩いてきたルートは散策コースだ。わざわざあの道を通って、あそこに行こうとは誰も思わない。何があるわけではない。もし来ても暇なやつだろうな』
『あの場所が好きでよくここを抜けて行くんだ』
『すみません。お邪魔してしまって』
『別に誰の場所でもない。もし辿りつけるならまた来るといい』
髪の毛についた葉っぱが目に入った。令嬢に葉っぱを付けて帰らせるわけには行けないな……葉っぱを取ると髪にも手を触れてしまった、サラサラの髪は絹の糸のようだった
『あの、ハンカチを洗ってお返しに来ます』
『べつにいいよ。ハンカチの一枚くらい』
『いえ。お返しします。お名前……教えてください。私はセイラと申します』
お辞儀をされ頭を上げたその時、セイラ嬢からふわっと石鹸の香りがした。
いつも絡んでくる鼻につく香水を付けている、しつこい女たちとは違う香り。清潔感があった
『ウィルベルト、この学園の二年だ』
『ウィルベルト様、ありがとうございました。それではまた』
セイラ嬢はお辞儀をして去っていた。私のことを知らなかったのか……結構知られていると思っていたのに。くすくすと笑いが込み上げて来た。
それにしてもセイラ嬢……名前をどこかで聞いたような?
ほんの少しの時間だったし会話も弾んだわけではないが心地の良い時間だった。
なんとなくまた会いたいと思った。
ここに来ればまた会えるのかもしれない
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