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思いの外楽しそうでした
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駅に着くとアルベーヌが待っていた。
「よぉ、疲れているか?」
もうじき夕暮れ。一日中座っての移動だから疲れている。
「はい、移動疲れです。まだ汽車での移動は慣れませんね」
馬車に揺られて十数分……ようやく邸に到着した。
「ルーナおかえりなさい!」
「お母様、ただいま帰りました」
ハグをして立ち話をしていたら、お父様が出てきてまずは着替えておいでと言われた。そのあとは晩餐だ。
部屋に入るとたった数ヶ月家を離れていただけなのに懐かしく感じた。
簡単なワンピースに着替えてから食堂に向かった。もうみんな席に着いていた。
学園生活はどうだとか、困った事は無いかとか矢継ぎ早に質問された。
学園生活は充実していてとても学びが多い事を話した。パドルさんのことや、フォンターナ公爵家の事も聞かれて、ちょっと顔が赤くなってしまった。気づかれてしまったかしら……
「学園が楽しそうで良かった、何よりだ」
「そうですね。ルーナは外国へ行きたいと子供の頃から言っていましたわね。連れて行ってあげられなくて可哀想なことをしたわ。でも鉄道が通ることにより、隣国を身近に感じることが出来てよかったわね」
子供に馬車の長距離はきつい。それに野盗なども頻繁に出るようでせめて自分の身を守れるようではないと、命を落としかねない。お兄様が朝から剣を振るうのはその為なのよね。
「お兄様、食事の後にお話があります。よろしいですか?」
「もちろん、構わない」
久しぶりの家族との食事は楽しく過ごせた。一日もかからず帰って来られると思うと距離の近さを感じた。
******
コンコンコン……ノックをすると
「入れ」
と声が掛かって兄の部屋へと入る。
「どうした? 座らないのか」
座るとすぐにお茶の用意がされた。
「忙しいのね」
執務机にはたくさんの書類……
「あぁ。あれか? 見てもいいぞ」
遠慮なく机に近寄る。
新しくパティシエを雇う為に履歴書のようなものが置いてあった。
「ルーナの店なんだが……」
ごくり。唾を飲んだ。明日見に行きたいと思っていた所だ。人が辞めたとか?! 何? その間は……
「私は未知の世界に足を踏み入れた……菓子など全く興味がなかったのだが、経営するにあたり全ての菓子を口にした。すると気になっていたことがあって、それを実行に移した。そうすると菓子に対するこだわりが出てきてしまってな……パティシエと毎日話し合いをした。何の話かと言うと、男の私が食べると甘いんだ。だから同じチョコでもビターにすることによりほろ苦い味わいが癖になるチョコレートケーキが完成した。パイも周りの砂糖を無くし、チーズやブラックペッパーを入れることにより酒のつまみにもなる。菓子は女性だけのものではない! と新たに販売を開始した所非常に受けてな……パティシエが足りなくなった。連日カフェは予約でいっぱいでさらに人数制限を設けるほどだ」
帳簿を広げられた。
「……すごいわ。お兄様」
「まぁ、そうだな。新たに新作も準備しているし、季節ごとにイベントというか……賑わいを演出することにも成功している」
凄い。この数字は……私には無理だわ。着眼点が違うだけで売り上げがこんなに? コンセプトは同じなのに
「ルーナの店のコンセプトがあってのものだし、ルーナが築き上げた土台があってのものだけど、楽しくさせてもらっている」
「そのことで話があるの」
留学の延長をお願いしたいと言うこと、お店を引き続きお兄様にお願いしたい事を説明した。
「なんだ、そんなことか……ルーナの好きなようにしても良い。留学する時に言ったはずだぞ? 難しく考える必要はない、と。それと店は任せてくれるのなら引き続きやりたい事をさせてもらうだけだ」
「良いの?」
「あぁ、構わないぞ。今日帰ってきて意外と隣国と近いと感じたはずだ。何かあればすぐに帰って来られるだろう?」
「うん」
「こっちのことは気にせずにお前のしたい事をすれば良い。店の経営だけが経営学ではない」
「なんのこと?」
「店の経営・領地の経営・経営をするにあたっては人材の確保・働き方改革……など色々あるだろう?」
「はい、そう習いました」
「母上は事業もしているが、領地経営も手伝っている。屋敷の管理も母の仕事、茶会をすると慣れば仕切らなくてはならないし多忙な方だ。それでも楽しそうだろう? 父上も忙しいが領地経営をして事業もしている。もちろん父上だけでは回らないから信頼できる人間を雇っているだろう? それは人望だよな? だからお前に言いたい事は中途半端な事はするな。お前にはお前の道があるんだって事だ」
「よく分からないけど、分かったような気がする」
両親を見て育ったからわかるだろ? って事よね。
「その顔は分かっていないな。信頼できる相手を選べって事だ。ぐずぐずしていると幸せを逃すかもしれんぞ。ついでに言うと、ジョゼフ殿は結婚することになった。そして生まれてきた子がジョゼフ殿の両親(侯爵)の養子になるそうだ。やつは王都に出てくることはまずないだろう。出てきても恥ずかしい思いをすることになるからな……お前と別れてから大量の塩が侯爵家に送られてきたそうだぞ……くっくっくっ。あー腹が痛い。笑いすぎだな……」
お兄様、最後の方はずっと笑っていたわね。ジョゼフに悪霊が取り憑いていたと言う話は聞いたけど……
「奥方になる方は、少々歳がいっているが多産家系だそうだ。それに塩には一生困らない。と言っていたらしいから逞しい人柄であることが分かる。元夫も結婚するんだからお前も好きにして良いぞ。一生独身でいることは全くない」
……ジョゼフが結婚。アグネス以外の人と。そっか。肩の力がストンと下りた気がした。
「よぉ、疲れているか?」
もうじき夕暮れ。一日中座っての移動だから疲れている。
「はい、移動疲れです。まだ汽車での移動は慣れませんね」
馬車に揺られて十数分……ようやく邸に到着した。
「ルーナおかえりなさい!」
「お母様、ただいま帰りました」
ハグをして立ち話をしていたら、お父様が出てきてまずは着替えておいでと言われた。そのあとは晩餐だ。
部屋に入るとたった数ヶ月家を離れていただけなのに懐かしく感じた。
簡単なワンピースに着替えてから食堂に向かった。もうみんな席に着いていた。
学園生活はどうだとか、困った事は無いかとか矢継ぎ早に質問された。
学園生活は充実していてとても学びが多い事を話した。パドルさんのことや、フォンターナ公爵家の事も聞かれて、ちょっと顔が赤くなってしまった。気づかれてしまったかしら……
「学園が楽しそうで良かった、何よりだ」
「そうですね。ルーナは外国へ行きたいと子供の頃から言っていましたわね。連れて行ってあげられなくて可哀想なことをしたわ。でも鉄道が通ることにより、隣国を身近に感じることが出来てよかったわね」
子供に馬車の長距離はきつい。それに野盗なども頻繁に出るようでせめて自分の身を守れるようではないと、命を落としかねない。お兄様が朝から剣を振るうのはその為なのよね。
「お兄様、食事の後にお話があります。よろしいですか?」
「もちろん、構わない」
久しぶりの家族との食事は楽しく過ごせた。一日もかからず帰って来られると思うと距離の近さを感じた。
******
コンコンコン……ノックをすると
「入れ」
と声が掛かって兄の部屋へと入る。
「どうした? 座らないのか」
座るとすぐにお茶の用意がされた。
「忙しいのね」
執務机にはたくさんの書類……
「あぁ。あれか? 見てもいいぞ」
遠慮なく机に近寄る。
新しくパティシエを雇う為に履歴書のようなものが置いてあった。
「ルーナの店なんだが……」
ごくり。唾を飲んだ。明日見に行きたいと思っていた所だ。人が辞めたとか?! 何? その間は……
「私は未知の世界に足を踏み入れた……菓子など全く興味がなかったのだが、経営するにあたり全ての菓子を口にした。すると気になっていたことがあって、それを実行に移した。そうすると菓子に対するこだわりが出てきてしまってな……パティシエと毎日話し合いをした。何の話かと言うと、男の私が食べると甘いんだ。だから同じチョコでもビターにすることによりほろ苦い味わいが癖になるチョコレートケーキが完成した。パイも周りの砂糖を無くし、チーズやブラックペッパーを入れることにより酒のつまみにもなる。菓子は女性だけのものではない! と新たに販売を開始した所非常に受けてな……パティシエが足りなくなった。連日カフェは予約でいっぱいでさらに人数制限を設けるほどだ」
帳簿を広げられた。
「……すごいわ。お兄様」
「まぁ、そうだな。新たに新作も準備しているし、季節ごとにイベントというか……賑わいを演出することにも成功している」
凄い。この数字は……私には無理だわ。着眼点が違うだけで売り上げがこんなに? コンセプトは同じなのに
「ルーナの店のコンセプトがあってのものだし、ルーナが築き上げた土台があってのものだけど、楽しくさせてもらっている」
「そのことで話があるの」
留学の延長をお願いしたいと言うこと、お店を引き続きお兄様にお願いしたい事を説明した。
「なんだ、そんなことか……ルーナの好きなようにしても良い。留学する時に言ったはずだぞ? 難しく考える必要はない、と。それと店は任せてくれるのなら引き続きやりたい事をさせてもらうだけだ」
「良いの?」
「あぁ、構わないぞ。今日帰ってきて意外と隣国と近いと感じたはずだ。何かあればすぐに帰って来られるだろう?」
「うん」
「こっちのことは気にせずにお前のしたい事をすれば良い。店の経営だけが経営学ではない」
「なんのこと?」
「店の経営・領地の経営・経営をするにあたっては人材の確保・働き方改革……など色々あるだろう?」
「はい、そう習いました」
「母上は事業もしているが、領地経営も手伝っている。屋敷の管理も母の仕事、茶会をすると慣れば仕切らなくてはならないし多忙な方だ。それでも楽しそうだろう? 父上も忙しいが領地経営をして事業もしている。もちろん父上だけでは回らないから信頼できる人間を雇っているだろう? それは人望だよな? だからお前に言いたい事は中途半端な事はするな。お前にはお前の道があるんだって事だ」
「よく分からないけど、分かったような気がする」
両親を見て育ったからわかるだろ? って事よね。
「その顔は分かっていないな。信頼できる相手を選べって事だ。ぐずぐずしていると幸せを逃すかもしれんぞ。ついでに言うと、ジョゼフ殿は結婚することになった。そして生まれてきた子がジョゼフ殿の両親(侯爵)の養子になるそうだ。やつは王都に出てくることはまずないだろう。出てきても恥ずかしい思いをすることになるからな……お前と別れてから大量の塩が侯爵家に送られてきたそうだぞ……くっくっくっ。あー腹が痛い。笑いすぎだな……」
お兄様、最後の方はずっと笑っていたわね。ジョゼフに悪霊が取り憑いていたと言う話は聞いたけど……
「奥方になる方は、少々歳がいっているが多産家系だそうだ。それに塩には一生困らない。と言っていたらしいから逞しい人柄であることが分かる。元夫も結婚するんだからお前も好きにして良いぞ。一生独身でいることは全くない」
……ジョゼフが結婚。アグネス以外の人と。そっか。肩の力がストンと下りた気がした。
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