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しおりを挟む~エミリオ視点~
「兄達はご挨拶に忙しいようで、わたくし達はこちらで王宮のスイーツを楽しんでいました。フォンターナ卿、こちらはフェルナンド様の婚約者のシルビア様ですわ」
一緒にスイーツを楽しんでいた友人を紹介された。
「シルビア様、こちらはフォンターナ卿です」
シルビアは紹介をされて淑女の礼をした。
「フェルナンド殿の婚約者殿でしたか。話は伺っていましたが初めましてですね」
婚約者は子爵家の令嬢とか言っていたな。話を聞く限りとても仲がいいようだ。
「はい。初めてお目にかかります。ルーナ様と卿はお知り合いでしたのね、フェルナンド様ともお知り合いという事で縁を感じました」
立ち話もなんだからと言い、三人で座って話をすることになった。さっきからチラチラとルーナを見る男達の視線が気になるからちょうどいいだろう。
アルベーヌもフェルナンドも見えるところにいる。
「フォンターナ卿、こんな所に居てもよろしいのですか? 皆さん卿とお話をしたいのではないですか?」
話をして疲れたから甘いものが食べたい。疲れた時は甘いものを食べるに限る。
「朝からずっと人前に出ていたので流石に疲れました。せめて甘いものでも食べて癒されたいと思いつい、引き寄せられるようにここに来てしまいました」
そう言いゼリーを口にした。普通に美味しいのだがやはりルーナの出してくれたプリンには敵わない。あの味が恋しい。
甘いものが食べたいと言うと、シルビアとルーナは話を始めた。遠慮なく話をして欲しい。邪魔をしているのは私だ。
「ルーナ様ともしばらく会えなくなると思ったら寂しいですわ。こうやってお話をするのはとても楽しいですもの」
「一年間だけですわよ? 一年なんてあっという間です。早く汽車に乗ってみたいですわ」
? 一年だけ? なんの話だろう
「失礼、ルーナ嬢はどこかへ行くのですか?」
話の腰を折るのはどうかと思うが、ルーナがいなくなる? ルーナとの縁もここまでなのか……と思うと残念で、魂が抜けていくようだった……
「えぇ、隣国の学園に入学して経営学を学びますの。フェルナンド様のお父様が勧めてくださったんですのよ」
隣国? デュポン伯爵が勧めてくれたという事はうちの国で良いのだろうか? ルーナとの縁はここまでと思っていたが、もしかして……!
「うちの国の学園ですか? 王立学園には留学生もたくさんいますし、ルーナ嬢にとって素晴らしい学園生活になると思います。私も卒業しましたし経営学を選択していました」
「まぁ! そうでしたのね、それは楽しみですわ」
良かった! また会えるのだろうか……
「そういえばお店はどうなさるのですか? 離れていては困りませんか?」
庶民街の店はまだ開店して間もないから心配だろうに。
「兄が代わりに管理をしてくれますので心配はありません。信用していますし店のコンセプトや今後の展開、事業計画書を提出するように言われましたの」
アルベーヌ殿が代わりにか……身内だから安心だろう。それに国にいたら色々と噂が絶えないのだろう。噂が落ち着くまで国外にいるのはいいことなのかもしれない。
「そうでしたか。もしよろしければ国を案内させてください。美味しいお店もリサーチしておきますよ」
ルーナが好きそうな店、うちの国ならではのものを紹介できたら楽しんでもらえるだろうか。
「まぁ、それは、申し訳ありませんわ。卿はお忙しい方でしょうから、お言葉だけ頂いておきますわね」
壁がある。しかも高い。
「せっかく知り合いになれましたし、貴方が我が国に留学されると聞いて無視する事は出来ません。せっかくの留学期間を楽しんでもらえるようにサポートさせてくださいませんか?」
しつこいか……でもこの機会を逃すともう連絡は取れなくなってしまうだろう。
「……それではお時間の空いた時にはお願いします。無理はなさらないでくださいね。それに週末はパドルさん、デュポン伯爵の奥様に招待されていますので、そこまで気を遣っていただくのは心苦しいですから」
よし、約束はした。
「住む所はお決まりなんですか?」
デュポン伯爵の嫡男が国外問わず遊び回っているが、子息のいる家なんて危険だろう。どこかの邸に世話になると言っても、子息がいると困る。ルーナがそんな気がなくても向こうはどうか分からないからな。
「学園の寮に住みます。寮の生活って楽しそうですもの。兄も寮生活をしていて、話を聞いているとワクワクしてきますわ」
学園の女子寮か。それなら安心だ、寮母は厳しいが平等で真面目な人柄だ。不埒な奴が女子寮に近寄ることは不可能だ。
「うちはわりと学園から近かったから通っていたけど寮に住んでいた友人たちは皆楽しそうだったと記憶しています」
そういうと、興味ありげに学園の質問をしてきたルーナ。シルビアはうんうんと楽しげに話を聞いていた。
「申し訳ない。シルビア嬢には面白くない話でしたね。学園の話はまた今度にしましょう」
「いいえ。お二人ともとても楽しそうで、聞いているわたくしも楽しいです。それにこんなに楽しそうなルーナ様は久しぶりに見ましたわ。早くのお帰りをお待ちしていますが、どうぞ楽しんで来てくださいませね」
シルビアがそういう時ルーナも笑顔で答えていた。
「まぁ、わたくしは勉強に行くのですよ、楽しんでなんて……」
「いや、せっかくの学園生活だから楽しまないと損ですよ。紹介したいところが沢山あります。先程もお伝えしましたが我が家から学園は程よく近いのですよ」
王宮の菓子を楽しんでいたらリュウに声をかけられて挨拶周りに戻ることとなった。ルーナとはまた後日カフェで会う事になった。
******
「ルーナ様、フォンターナ卿と親しいのですね」
シルビアは笑顔で聞いてきた。
「親しいと言うか、とても親切な方でお話がしやすいので、ついつい話し込んでしまいました。学園に行く前に話を聞けて良かったです」
他国の学園に行くと言う事は正直な所緊張していた。自分のことを知らないところでの生活は精神的に楽だけど不安でもある。
フォローしてくれると言ったけれどそこまでお願いして良いのか正直なところ分からない。
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