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開通
しおりを挟む「本日はお日柄もよく~」
お偉いさん方のありがたいお話を聞いている。なんと本日は待ちかねていた鉄道開通の日だ!
隣国と繋がっていて、今まで馬車で1週間以上掛かっていたのに、なんと一日もかからずに首都同士が繋がるんですって! これから駅も増えるようだし、驚くほど便利になる。
「あ、フォンターナ卿」
お偉いさん方たちと共に並んでいる。身長が大きいから目立つわね。
「いなきゃおかしいよな。鉄道開通の立役者だからな」
家族揃って鉄道開通イベントに参加している。お兄様といると子息達から声をかけられなくて楽で良いわー。
「アル、ルーナ!」
声をかけられ振り向くとそこにはフェルナンドが居た。
「よぉ、来たのか!」
「遅くなったけど間に合ったみたいだ」
お偉いさん方の話は終わって、お次はテープカットがあるようだ。
陛下や王妃様、宰相、王太子殿下、王太子妃殿下、フォンターナ卿、その他隣国のお偉いさん方……
「凄いのね、王族と肩を並べてフォンターナ卿が立っているなんて」
ぽそりと口に出す。
「そうだね。普通に話をしていたら気のいい人なのにあそこに立っているとすごく遠く感じてしまうね」
フェルナンドが言った。その通りだと思った。甘いものが好きな腰が低くて優しい人。
「汽車が来たぞ」
わぁーと言う歓声や、拍手が鳴り響いていた。
それから貨物や人も乗り終えて出発の合図と共に汽車は動きだした。
「そういえばルーナ、留学するんだっけ? どこに住むの?」
パドルさんに聞いたようで既に留学の話は知っていたみたいね。
「学園の寮に入るの。侍女も連れて行っていいみたいだから、スージに聞いたらついてきてくれると言うし、週末はパドルさんが家に招待してくれると言うから、お言葉に甘えようと思っているの」
パドルさんはフェルナンドのお父様。私は夫人の作るお菓子が大好きだ。あった事は無いけれどフェルナンドにはお兄さんがいて、お家を継ぐのだそう。そのお兄さんは今、諸国漫遊を楽しんでいるところなんですって。それが商売につながると良いわね!
それもあって夫人からはいつでも遊びに来て欲しいと言う手紙を貰った。
留学するにあたりお兄様は口を酸っぱく言う。
【男を信用するな】
ですって。言われなくても、分かっていますよ。
ジョゼフとの離縁が成立してお兄様が水面下で動いてくれていた事、心配かけた事、さんざん説教されたもの。
あんな男に人生を棒に振られる所だったんだぞ、と。私みたいな小娘は男の人に抗う力はない。襲われてしまったら終わりだったと、長くてありがたい説教をされた。
だってあの人がそんな目で見ているなんて知らなかったもの。それを知ったらもう怖くて気持ち悪くて顔を見たくなくなった。
アグネスとの今後はどうなるのかと思い兄に聞いた。
「別れたらしいぞ」
と一言だけだった。
侯爵家にいた時にまともに話はしていないけれど、アグネスがいたから早期の離縁になったのは間違いない。と思う。
侯爵家のお金云々の話になってもアグネスが使っていたお金はジョゼフの個人的な資産である事から、その辺りは何か考えてのことだったのだろうと想像する。
アグネスに子息を上手く躱す術でも教えてもらえれば良かったわ。と思ってしまった。彼女は私に攻撃をしてくるわけではなかったもの。
話をまともにしたことがないのだからなんとも言えないけれど美しい人であった事は確かね。
後で聞いた噂話だと実家の男爵家には戻っていないとの事。アグネスもジョゼフの被害者だと思う。
どこかで元気に過ごしていたら良いのになぁ……
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