【完結】離縁の理由は愛されたいと思ったからです

さこの

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パーティー

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 緊張する……離縁して初のパーティーだった。王宮のパーティーでちょうど良かった。隣国のお客様も招待されているようだし、私を見て噂をされる事があっても攻撃されることはないだろう。

 だってここは王宮。陛下のお膝元だもの。お兄様はパーティーに出るのなら早めが良いと言ったケド、地味なドレスにしよう。宝飾類もなるべく控えめに……


******


「おい、やけに地味だな……もっと華やかな色味のものはないのか?」


 あまり地味すぎても王宮のパーティーだと失礼にあたる。でもちゃんと華やかにパールは付けている。

「だって目立ちたくないもの」

 紺色と白のドレスは地味だけど、上品だしウエストマークのカメリアは小さなパールで出来ているし、首飾りも全てパールとカメリアで揃えてみた。


「余計目立つと思うぞ? まぁ良い。いくぞ」


 兄とパーティーへ行くなんて初めての事だ。ちゃんとエスコートしてくれるのね……口は悪いけどちゃんとしてたら貴公子に見えてしまうから、タキシードというものは不思議だわね。


 あっという間に王宮の大ホールへ着いてしまった。家族総出でのパーティーとなった。周りはヒソヒソと私をみて噂をしているし、居心地が悪い。



 パーティーが始まり王族の入場で皆の視線は王族に向かった。

 早く終われば良いのに……と思っていると、お兄様は小声で言わせておけば良い。と無視を決め込んだ。お兄様がパーティーに出席するのは久しぶりで、いろんな人に声をかけられていた。やんわりと挨拶を交わし、令嬢を紹介されても、やんわりと断る。処世術というものかしら。


 しばらくしてバルビエ前侯爵夫妻と目が合い、軽く頭を下げた。隣に立っているのが前侯爵の弟の子供で、侯爵家の跡取りになる人だろう。二十歳そこそこの年齢かな? こちらを見て深々と頭を下げてきたので、私もそうした。

「おい、放っておけ」

「挨拶をされたから、」

「話しかけられたら、連れがいると言って俺か両親の元へ来るんだぞ」


 私だって面倒事は避けたい! もちろんそうしよう。それにしても社交界とは面倒なもので、次から次へと声をかけられた。

 演劇はどうだとか、絵画鑑賞はどうだとか、遠乗りの誘いまで……傷ついた心を癒します? なにそれ……全て作り笑いで誤魔化した。お兄様は妹は傷心の身でまだそういう気持ちにはならない。と言って子息達から遠ざけてくれる。はぁ、疲れた。



「お兄様、わたくし化粧直しに行ってきます」

「ついて、」
「こないで!」

「……分かった。すぐに戻ってくるように。明るい場所を選んで衛兵がいる所を歩くんだぞ」

 急に過保護? どうしたのお兄様は……お父様とお母様も社交に忙しそうね。きっと私の話もたくさんされただろう。申し訳ない。


 化粧室へと行き一息ついたところで、会場に戻る事にした。廊下を歩くとひんやりとした風が心地よくて立ち止まって庭園を見ていた。

「ベルモンド伯爵のルーナ嬢ですね?」

 名前を呼ばれ、振り向くとそこには先程頭を下げられたバルビエ前侯爵の弟の子息がいた。

「え、えぇ、そうですわ」

「はじめまして。私はマッテオ・バルビエと申します」

「ご丁寧な挨拶痛み入ります。ルーナ・ベルモンドですわ」

「こんなに美しい令嬢を放ってあんなオンナに惚れていたなんてジョゼフ兄さんは趣味が悪い」

 これはマズイわね。お兄様の言う通りにしなきゃ。


「もう過去の事ですわ。忘れましょう」

「少しお話をしませんか?」

 にこっと笑うマッテオに苦笑いをするルーナ。

「いえ、お言葉はありがたいのですが、兄を待たせていますので、失礼しますわ」

 カーテシーをして去ろうとしたら、去り際に腕を掴まれた。


「僕と婚約しませんか? そうしたら貴女は侯爵夫人だ。それにジョゼフ兄さんにも復讐できるだろう?」

 い、痛い……

「やめてください」

 なんで衛兵がいないの? さっきまでいたのに!

「衛兵ならあちらで少しトラブルがあって駆り出されている。代わりのものがくるまで少し時間はかかるんじゃないかな?」

「きゃぁっ、」

 庭園へ連れ込まれてしまう……あっ、ヒールが。やだっ

「やめて、離してっ、」

「大きな声を出したら人が来るよ? そうしたら無体な事をされたとまた噂になるんじゃないかな? 僕は責任を取るから大丈夫だけど」


 両腕を取られて顔が近づいてくる。

「やめて、だれかっ」

 必死でもがいていると大きな人影が見えた

「たすけてくださいっ……」

 必死に声を出した。すると大きな影はマッテオを引き離し

「大丈夫ですか? お怪我はありませんか?」

 と声をかけてきた。

 聞いたことのある少しハスキーな声……月明かりで見えるその顔は……



「ルーナ? さん?」



 名前も知らないお客様だった。


 
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