義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの

文字の大きさ
上 下
31 / 31

交わることのない未来

しおりを挟む

 お義兄さまと街へ出かけた時に、昼間からお酒に飲まれている人の中に、ラウロ様がいた。商家の家に婿養子に入ったと言う。


 商人商人とバカにしていた職業の家に婿入りをするとは、誇り高きラウロ様でやっていけるでしょうか…
 少し容姿が変わっていました。疲れているような…くたびれているような…感じが見られました
 
あの男ラウロの事が気になるのか?」
 お義兄さまは気遣うように聞いてくださいましたが、首を横に振ります


「いいえ、あの方のお父様はちゃんと償ってくださいましたし、私が直接関わる事はありません」
 お父様もお義兄さまも、元ビルト伯爵領の領民のために頑張っていますものね、私も前を向いて歩こうと思いました。


「教会のバザーにまた出品するんだって?」

 全てお見通しのようです
「はい。新作のお菓子を焼くんですよアンナ侍女の故郷のお菓子です」


 アンナの家は男爵家だった。両親が亡くなり親戚の人が家を継いだそうで、帰る場所は無いと言った。故郷の味をたまに思い出すそうで話を聞いた際にこのお菓子を作ろうと決めた。
 王都にはいろんな人がいる。地方から出稼ぎに来る人も沢山いる。そんな人に故郷の味を聞いて、いつか種類を増やせれば良いなと思っていることをお義兄さまに伝えた

「それはいい考えだ。僕もたまに食べたくなる味がある」

 懐かしそうに故郷の話を始めました

「今度教えてくださいね、私が作れそうなら作ってみたいですもの」

 お義兄さまは相変わらず優しい。あれから返事は保留のままだけど、返事は焦らないと言われ聞いても来ない。
 夜会に招待されると必ずお義兄さまがパートナーを務めてくださる。
 そばに居て安心するし心が休まる。きちんと返事を返さなくてはと思い、卑怯な私は返事を先延ばしにしていたのですが


「…今度僕の育ての親に会ってくれない?」
 お義兄さまは真剣な眼差しでこちらを見ていました

 返事はもう決まっています。お義兄さまの手を取り繋ぎました。温かく大きな手でした

「はい、お会いしたいです」
「嬉しいよ」


「お義兄さま、今まで私を支えてくださってありがとうございました。このままお義兄さ
まのお側にいてもよろしいですか?」

 お義兄さまの顔を見ると、驚いた顔をしていましたが、急に照れたような顔を見せてきました

「もちろん。シルヴィアが側に居てくれると言うなら僕はもっと頑張れるよ、結婚の了承と捉えて良い?」

「はい、よろしくお願いします」

 答えると頬にキスを落とされた。今までも挨拶でキスはした事はあったし、された事もあったのに、今日のキスはなんだか甘く感じて、くすぐったい気持ちになった。


 お義兄様と一緒にいる事で、周りは婚約したのだと勝手に勘違いをしていた。と聞きましたが、悪い気はしなかったし男避けにもなると笑っていました





 その後、私はお義兄さまと結婚をして、三人の子供に恵まれました。
 
 お父様は爵位をお義兄さまに譲りお義兄さまが当主となりました。
 王家管轄の元ビルト伯爵領は結婚祝いにと一部の領地を陛下から賜りました。その事によりベック伯爵家は事業も拡大して忙しい毎日を送っています


 あまり目立つ事になると敵が増えて睨まれてしまうから、断りたかったんだけど…と言いながらも王家とのパイプがさらに太くなり元ビルド伯爵領は、お父様とお義兄様の力によってかつての活気を取り戻してきました

 
 人を通して元ビルト伯爵領で作られた野菜や果物、加工された乳製品は、ラウロ様の婿入りした商家に卸されています

 評判が良いようで売り上げも好調、ラウロ様が店番を任されるようになったとの事です


 元貴族でしかも上位貴族だった為、初めは生活に馴染めなかったようですが、計算もでき話術も長けている事から、あっという間に市場の取りまとめ役まで上り詰め、嘆願書なるものまで提出してきた。とお義兄さまに聞きました。



 人は変わらないといけない時が必ずある。それがラウロにとっては今だったんだな…とお義兄さまはおっしゃいました
 間違いを認め、正しい方向へ進み出したんだ。僕たちも道を踏み間違えないようにしないと、領民が苦しむ事になる。
 お兄様の口調は穏やかで、でも強い意思を感じられました



 ラウロ様のお父様も安心したようで、途切れていた親子の縁も、ラウロ様の子供が架け橋となり修復されたと聞いた時は、正直ホッとしました

 家族を思って一家離散となった伯爵家でしたから

 …ライラ様ですが、シスターとして厳格な修道院で質素に暮らしていると報告を受けました
 修道院に入ると家族に会う事はままならない事から手紙を送っていると聞きました

 年に一度、ライラ様が生まれた大切な記念日に



     【完】


ーーーーーーーーーー

 最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
 コメントを閉鎖してしまいましたが、たくさんの方にコメントいただきまして、ありがとうございましたっ(^^)

 新作準備中です。ストックが溜まってきたらまた更新していきますので、興味のある方はよろしくお願いします。

2021/05/17
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

舌を切られて追放された令嬢が本物の聖女でした。

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。

【完結】聖女の手を取り婚約者が消えて二年。私は別の人の妻になっていた。

文月ゆうり
恋愛
レティシアナは姫だ。 父王に一番愛される姫。 ゆえに妬まれることが多く、それを憂いた父王により早くに婚約を結ぶことになった。 優しく、頼れる婚約者はレティシアナの英雄だ。 しかし、彼は居なくなった。 聖女と呼ばれる少女と一緒に、行方を眩ませたのだ。 そして、二年後。 レティシアナは、大国の王の妻となっていた。 ※主人公は、戦えるような存在ではありません。戦えて、強い主人公が好きな方には合わない可能性があります。 小説家になろうにも投稿しています。 エールありがとうございます!

溺愛されていると信じておりました──が。もう、どうでもいいです。

ふまさ
恋愛
 いつものように屋敷まで迎えにきてくれた、幼馴染みであり、婚約者でもある伯爵令息──ミックに、フィオナが微笑む。 「おはよう、ミック。毎朝迎えに来なくても、学園ですぐに会えるのに」 「駄目だよ。もし学園に向かう途中できみに何かあったら、ぼくは悔やんでも悔やみきれない。傍にいれば、いつでも守ってあげられるからね」  ミックがフィオナを抱き締める。それはそれは、愛おしそうに。その様子に、フィオナの両親が見守るように穏やかに笑う。  ──対して。  傍に控える使用人たちに、笑顔はなかった。

【完結】初めて嫁ぎ先に行ってみたら、私と同名の妻と嫡男がいました。さて、どうしましょうか?

との
恋愛
「なんかさぁ、おかしな噂聞いたんだけど」 結婚式の時から一度もあった事のない私の夫には、最近子供が産まれたらしい。 夫のストマック辺境伯から領地には来るなと言われていたアナベルだが、流石に放っておくわけにもいかず訪ねてみると、 えっ? アナベルって奥様がここに住んでる。 どう言う事? しかも私が毎月支援していたお金はどこに? ーーーーーー 完結、予約投稿済みです。 R15は、今回も念の為

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり(苦手な方はご注意下さい)。ハピエン🩷 ※稚拙ながらも投稿初日からHOTランキング(2024.11.21)に入れて頂き、ありがとうございます🙂 今回初めて最高ランキング5位(11/23)✨ まさに感無量です🥲

幼い頃に魔境に捨てたくせに、今更戻れと言われて戻るはずがないでしょ!

克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 ニルラル公爵の令嬢カチュアは、僅か3才の時に大魔境に捨てられた。ニルラル公爵を誑かした悪女、ビエンナの仕業だった。普通なら獣に喰われて死にはずなのだが、カチュアは大陸一の強国ミルバル皇国の次期聖女で、聖獣に護られ生きていた。一方の皇国では、次期聖女を見つけることができず、当代の聖女も役目の負担で病み衰え、次期聖女発見に皇国の存亡がかかっていた。

悪役令嬢は処刑されないように家出しました。

克全
恋愛
「アルファポリス」と「小説家になろう」にも投稿しています。 サンディランズ公爵家令嬢ルシアは毎夜悪夢にうなされた。婚約者のダニエル王太子に裏切られて処刑される夢。実の兄ディビッドが聖女マルティナを愛するあまり、歓心を買うために自分を処刑する夢。兄の友人である次期左将軍マルティンや次期右将軍ディエゴまでが、聖女マルティナを巡って私を陥れて処刑する。どれほど努力し、どれほど正直に生き、どれほど関係を断とうとしても処刑されるのだ。

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

処理中です...