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ラウロとシルヴィア
しおりを挟むパウダールールから会場に戻ろうとしたらラウロ様にばったりと会った
「…シルヴィアか」
「…ごきげんよう」
「話がしたい」
「申し訳ございませんが、失礼いたします」
横切ろうとしたところ
「待て!話があると言っているだろう!」
腕を掴まれたので思いっきり力を込めて振り払った
「シルヴィア…?」
「おやめ下さい、それと私のことを親しげに名前で呼ぶのもやめていただけますか?」
思ったより冷たい声が出た
「おまえはライラを見捨てるのか!」
「仰る意味が分かりません、」
「会場でライラがお前の義兄に責められて衛兵に連れて行かれた」
睨まれているようですが、全く何も思いませんね
「何があったかは存じませんが、お義兄さまが一方的にライラ様を責める事は有り得ません、ライラ様が何かなさったのでは無いのですか?」
自分で思っているよりも更に冷たい声を出してしまいました。恐らく表情も
「助けようとは思わないのか?」
「もし理不尽な理由で連れて行かれたのならば…知らない方ではありませんし、そうするかも知れませんけれど、お義兄さまが関わっている以上何があったかは存じませんが悪いのはそちらですわね」
「私に逆らうというのか?」
「理不尽なあなた達兄妹にはこれ以上付き合えませんもの」
「なにを!生意気な女だ!」
「いい加減家名だけ自慢するのをやめた方がよろしいかと…それと我が家は商人ではなくて事業家と呼ばれていますのよ世間では。お父様もお母様もお義兄さまも、私も稼いでいます、私の稼いだお金で貴方達は街に行き好き勝手にお買い物をされていました」
「お前が稼いだ金は嫁ぎ先のものだろう!」
「まだ嫁いでいませんし…ご存知でしょうに」
「家族になるんだ、問題なかろう!」
「金銭的には全く問題はありませんよ?あれくらいは私の稼ぎでなんとでもなりますもの。私の名前を使い、我が物顔で買い物をする貴方達兄妹は自分でビルト伯爵家の評判を落としていることを知るべきです」
「なっ!」
「生意気ですか?それで結構です。貴方に好かれようとして気を使うより全然マシです」
「本気で言っているのか?」
「婚約解消の件は伝わっていますでしょう?婚約を破棄する原因も、」
「原因?ライラとの仲を嫉妬しただけで解消か?」
「…分かっていらっしゃらないのですね」
はあっ…心の底からのため息を吐き、深呼吸をした
「ライラ様と一緒になって、我が家を愚弄した事は覚えていますか?」
「事実を言ったまでだ」
「私の作らせた家具などを勝手に持ち出し使った事は?」
「また買えば良いだろう!」
「または有りません…私が傷つく行為をしていることも分からないなんて…良かったわ。婚姻の前で」
「ライラはまだ貴族社会に慣れていない」
「貴族云々の問題ではございません。人としての問題です。それを教育するのが貴方の家でしょう?近くにいた貴方がそんなんじゃ無理でしょうけど」
「ぐむっ…」
ラウロ様は腕を振り上げた
「良い加減に現実から目を背けるのはやめた方が良いです、」
思いっきり睨みながらそう伝えると、腕を振りおろされる、風を切る音
…本気でこの場所で暴力を振るおうとするなんて
「遅いからどうしたのかと思ったら、こんな所にいたのか?」
お義兄さまは優しい笑みを浮かべて、ラウロ様の腕を掴み捻り上げていた
「いってぇ…はなせっ」
ラウロ様が痛そうに顔を顰めた
「ビルト伯爵令嬢がお義兄さまに失礼なことをされたのですか?」
事実を確認しようと聞いてみた。痛がるラウロ様は無視した
「あぁ…野性味あふれる令嬢だな、我が家を愚弄し金で買った爵位だと言われたよ…」
困ったように笑うお義兄さま
「それは前国王陛下が、関わってくるお話ですのに…しかも王宮で?」
考えなしの言動には驚きました。チラッとラウロ様を見ると顔は青くなっています
「王族の皆さんの耳に入らなければよろしいのですけれど…」
「…お前たちは、楽しんでいるのか?我が家が落ちていく姿を…くっ…」
髪も乱れ顔色も悪いラウロ様はいつもの余裕がなくなっているようでした
「本来ならばお前の家は既に没落していた。現当主が良い領主で、父上も助けてやったんだ。シルヴィアと婚約をしたことで、没落を免れていた。婚約は伯爵から願い出た事だった。後妻に入った夫人は領民の助けになるように伯爵と二人三脚で頑張っていた。
領地から離れず贅沢もしない方で、領民に好かれていたよ。それなのに娘はなぜあんな横柄な態度になった?お前が悪いだろう」
「…それは、」
「貴方がライラ様を大事にするように、私も家族が大事です。いつか家族になるはずだった貴方のこともライラ様のことも…こんな形で最後になるとは思いませんでしたが、さようならラウロ様」
この後会場には戻らずお義兄さまと邸に帰りました
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