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アリスフィア
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「アリス準備はできたかい?」
「はい。お待たせいたしました」
本日はとうとう王宮に行く日となりましたが憂鬱。スッキリさせたい気持ちもあるけれど、今まで陛下や王妃様、殿下達お義姉様方達にはよくしていただいたもの。
辛かった事もあったけれど、私の人生における学び場で、たくさんの人達にお世話になって支えられた場所。
殿下のことを好きだと聞かれたらわからないけれど情はあるし、優しいところも知っている。ボタンを掛け違えたまま、居心地が悪いまま過ごしてしまった。
レイラと仲良くするのはいいけれど、学園で人目のつくところではどうかと思う。と注意したら鼻で笑われたわねぇ。
特定の令嬢(レイラ)と噂になるような真似をするのはどうかと思う。と注意したら心が狭いって言われたわねぇ。
他国のお客様から誘われたお茶会をドタキャンしたから注意したら、お前が上手くやったのなら問題ないと言われたわねぇ。
その後王妃様にバレて、私も一緒に怒られた。
私が何を言っても殿下には響かない。私が努力をしても気に入らない。どれだけ外国語を習得しても殿下は興味がない。
隣でただ笑って癒してくれる存在が必要だったみたい。誰にも言えないけれど私は疲れていたしそんな存在にはなれっこない。婚約破棄? 追放? そんなものはすぐに撤回されると分かっていた。私にも悪いところはあるけれど、学園のイベントで大々的に宣言した殿下には嫌気がさした。そこにいたレイラも同罪。婚約破棄は家との話だけれど事前に話をしてこなかったと言うことは私たちの関係はそれまでだったと言うこと。
レイラは孤児だけど持ち前の頑張りで良くやっていたと思う。レイラをお茶会に連れ出したのは、足りないマナーを身につけさせようと思ったから。
男爵家では足りない社交界のマナーやルール、レイラは素直に見えて私のする事が気に食わなさそうだったから、それなら私が教えるのではなく見て学べる場を設けようと思った。
レイラは子爵家に嫁ぐことになっていた。男爵夫妻はレイラを嫁がせるために教育をしっかり受けさせていたけれど、本人の努力が足りないと思った。
何かを間違えれば孤児だから。と揚げ足を取られる。美しい所作、貴族らしい振る舞いをすると称賛される。それがこの世界なのだから。
レイラはそれを理解していなかった。殿下と結ばれればロイヤルファミリーになれる。王妃様、お義姉様達と肩を並べられると思っていたのかもしれない。
そこの場所はね、ただ可愛く笑っていればいい場所じゃないの。マナーを守りルールを守り貴族にも国民にも認められる存在にならなくてはいけないの。そこに立つ時に自分の感情なんていらないの。
人の裏を読み、政治を理解し、各国のお客様をもてなす国の顔にならなくてはいけない。
表に立つ時は愚痴を吐く事も、泣く事も許されない。感情を押し殺し、貼り付けた笑顔で人と接する事ができないとダメなの。時には厳しく罰さないといけない事もある。
王宮のパーテイーでは、羨望の眼差しを受ける事がある。登場すると一斉見られそこに立つ時一つも間違いは許されない。
殿下との仲は決して良くはなかったけれど、その場では仲のいいふりをする。殿下もそれをわかって私をエスコートしていた。それが仕事だった。でも出来なくなったのだから私達の関係が破綻するのは当然だった。
王宮での学園イベントで婚約破棄……話し合いで婚約破棄をする事ができないと踏んだのでしょう? だから強行突破のような真似をした。私を辱めるように。
涙を見せて酷い。といえば可愛げがあった? でもそれは出来ない。私にもプライドがある。人前で、いえ。大勢の前で泣くだなんて恥ずべき事は出来ない。誰も得をしない。
例え私でなくお義姉様方のどなたかが同じ立場だとしても同じような行動を取ると思うもの。
追放されている間に全ては終わっているだろうから。私はレイラにも殿下にもそこまで酷い罰を受けさせなくても良いと思っている(お咎めなしということにはならないだろうけれど)
大好きな王妃様、お義姉様達。でも息苦しく、生きにくい王宮。そこから抜けられるのならそれで良いとさえ思う。今がタイミングだったと思おう。
でもそれは言わない。言えない。お義姉様達の中でそう思っている人がいると足並みが揃わなくなるから。
残念なのは卒業後他国を回れなくなる事。外国の文化に触れたかった。外から見たこの国を知りたい、だから勉強に力を入れていた。
今後どうなるかわからないけれどせっかく学んだ語学を活用できるような仕事に就きたいかも。
そんなことを思っていたら馬車が王宮に着いた。
「行きますか……」
「はい。お待たせいたしました」
本日はとうとう王宮に行く日となりましたが憂鬱。スッキリさせたい気持ちもあるけれど、今まで陛下や王妃様、殿下達お義姉様方達にはよくしていただいたもの。
辛かった事もあったけれど、私の人生における学び場で、たくさんの人達にお世話になって支えられた場所。
殿下のことを好きだと聞かれたらわからないけれど情はあるし、優しいところも知っている。ボタンを掛け違えたまま、居心地が悪いまま過ごしてしまった。
レイラと仲良くするのはいいけれど、学園で人目のつくところではどうかと思う。と注意したら鼻で笑われたわねぇ。
特定の令嬢(レイラ)と噂になるような真似をするのはどうかと思う。と注意したら心が狭いって言われたわねぇ。
他国のお客様から誘われたお茶会をドタキャンしたから注意したら、お前が上手くやったのなら問題ないと言われたわねぇ。
その後王妃様にバレて、私も一緒に怒られた。
私が何を言っても殿下には響かない。私が努力をしても気に入らない。どれだけ外国語を習得しても殿下は興味がない。
隣でただ笑って癒してくれる存在が必要だったみたい。誰にも言えないけれど私は疲れていたしそんな存在にはなれっこない。婚約破棄? 追放? そんなものはすぐに撤回されると分かっていた。私にも悪いところはあるけれど、学園のイベントで大々的に宣言した殿下には嫌気がさした。そこにいたレイラも同罪。婚約破棄は家との話だけれど事前に話をしてこなかったと言うことは私たちの関係はそれまでだったと言うこと。
レイラは孤児だけど持ち前の頑張りで良くやっていたと思う。レイラをお茶会に連れ出したのは、足りないマナーを身につけさせようと思ったから。
男爵家では足りない社交界のマナーやルール、レイラは素直に見えて私のする事が気に食わなさそうだったから、それなら私が教えるのではなく見て学べる場を設けようと思った。
レイラは子爵家に嫁ぐことになっていた。男爵夫妻はレイラを嫁がせるために教育をしっかり受けさせていたけれど、本人の努力が足りないと思った。
何かを間違えれば孤児だから。と揚げ足を取られる。美しい所作、貴族らしい振る舞いをすると称賛される。それがこの世界なのだから。
レイラはそれを理解していなかった。殿下と結ばれればロイヤルファミリーになれる。王妃様、お義姉様達と肩を並べられると思っていたのかもしれない。
そこの場所はね、ただ可愛く笑っていればいい場所じゃないの。マナーを守りルールを守り貴族にも国民にも認められる存在にならなくてはいけないの。そこに立つ時に自分の感情なんていらないの。
人の裏を読み、政治を理解し、各国のお客様をもてなす国の顔にならなくてはいけない。
表に立つ時は愚痴を吐く事も、泣く事も許されない。感情を押し殺し、貼り付けた笑顔で人と接する事ができないとダメなの。時には厳しく罰さないといけない事もある。
王宮のパーテイーでは、羨望の眼差しを受ける事がある。登場すると一斉見られそこに立つ時一つも間違いは許されない。
殿下との仲は決して良くはなかったけれど、その場では仲のいいふりをする。殿下もそれをわかって私をエスコートしていた。それが仕事だった。でも出来なくなったのだから私達の関係が破綻するのは当然だった。
王宮での学園イベントで婚約破棄……話し合いで婚約破棄をする事ができないと踏んだのでしょう? だから強行突破のような真似をした。私を辱めるように。
涙を見せて酷い。といえば可愛げがあった? でもそれは出来ない。私にもプライドがある。人前で、いえ。大勢の前で泣くだなんて恥ずべき事は出来ない。誰も得をしない。
例え私でなくお義姉様方のどなたかが同じ立場だとしても同じような行動を取ると思うもの。
追放されている間に全ては終わっているだろうから。私はレイラにも殿下にもそこまで酷い罰を受けさせなくても良いと思っている(お咎めなしということにはならないだろうけれど)
大好きな王妃様、お義姉様達。でも息苦しく、生きにくい王宮。そこから抜けられるのならそれで良いとさえ思う。今がタイミングだったと思おう。
でもそれは言わない。言えない。お義姉様達の中でそう思っている人がいると足並みが揃わなくなるから。
残念なのは卒業後他国を回れなくなる事。外国の文化に触れたかった。外から見たこの国を知りたい、だから勉強に力を入れていた。
今後どうなるかわからないけれどせっかく学んだ語学を活用できるような仕事に就きたいかも。
そんなことを思っていたら馬車が王宮に着いた。
「行きますか……」
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