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クルー男爵2
しおりを挟む「孤児の支援をするという事ですか?」
「はい。レイラの事があったので無理にとは言いませんが」
レイラの事があったから孤児に偏見を持ちたくないし、これまで行ってきた支援を中止にする事はできない。どうせ引退する身だし、お嬢様がそういうのなら従うまで。伯爵家は孤児院に支援だけではなく孤児にやりたい職業について聞き、将来の目標にさせている。目標を定めさせる事で努力をするのだから、レイラの育て方を間違えたのだろう。そう思い返事をした。
「いいえ。将来は子供達がこの国を担うのですから向き合っていきたいと思います」
とはいえ、今まで通りでは行かないだろうから伯爵様の知恵をお借りすることになるだろう。まずは領地に学びの場を作り領地内の子供達と孤児院の子供達が通える学び場を作り私も積極的に顔を出そう。妻には得意の刺繍や編み物を教えさせるのも良いかも知れない。ただ引っ込むのではなく、できることからやってみよう。
「男爵本当にいのか? 全く我が娘ながら恐ろしい提案をしてきたものだな。レイラの事で、だから孤児は嫌だと貴族から後ろ指差される事になるかもしれん男爵に孤児への積極的支援だなんて」
お父様は頭を拳でぐりぐりと押し当てていた。
「孤児の問題は国だけの問題ではありません。うちの領地にいる孤児は災害に遭って親を亡くした子がいます。あの時に橋を直しておけば……山火事をもっと早く鎮火できていれば……領地に当主がいたらすぐに動けていたのになどと思う事がありましたので、いい機会だったのかも知れません。ブラック伯爵家には顔向けできないなどと思っていましたが、会っていただきありがとうございました。陛下にも今後のことを伝えようと思っております」
レイラの件で陛下に謁見した際、爵位の剥奪や牢屋行きも頭をよぎったのだが、第五王子が愚かだったと謝られた。心を痛めている様子でこちらも平謝りするしかなかった。陛下の側近達が優秀で、第五王子とレイラの周辺の調べがついていた。
第五王子の側近達はみな辞退し別の部署へと移動。王子を止められなかったと深く反省していた。
王子の護衛は王子の命令と言いアリスフィアお嬢様を探しにクレマンへ向かったようだが、王都に戻り王子の護衛を辞退し騎士団に戻ったようだ。王子の周辺には今までのように人がいないようで孤立しているようだ。
クレマン子爵と陛下と話をした時に陛下がクレマン子息に令嬢を紹介する。と言った時にクレマン子息はアリスフィアお嬢様の名前を出し、皆をギョッとさせた。
クレマン子息がアリスフィアお嬢様に憧れを抱いていたのは知っていたが、あの場であのような発言をするとは! クレマン子爵がその後子息を部屋から出した。中々スリリングな時間だった……
クレマン子爵家には王家とうちから慰謝料が支払われることになり、子息には令嬢を紹介するということで話がまとまったのだ。
その後のアリスフィアお嬢様の事が気がかりではあるが、事後処理もあるから早々に王都を立つことにした。
我が家の将来にも関わる事だから今が大事だと思う。家族にこれ以上迷惑をかけられない。
「本日はお忙しい中、お時間を作っていただきありがとうございました。今後の事はまた手紙にて報告させていただきたく存じます」
「あぁ、しばらくは手紙のやり取りになるだろうが、男爵は自分を責めるなよ。失敗は誰にでもある。やり直せるかここで諦めるかで今後の未来が変わってくる。娘も悪いところがあったんだ」
「そうですわね。意地を張っていたところも多々あります。そこをレイラに突かれたのならわたくしも悪いですわね」
「悪いところもあった。でも婚約者がいるのに他の異性と仲良くするのは褒められた事ではない。誰にでも起こりうる事かもしれないけれどやり方が汚い。気に入らない。同じ男として許せない。王族として信用ならない。罰せられて当然だ」
伯爵は慈悲深い方だが、汚いやり方は気に入らないのだろう。アリスフィアお嬢様にも悪いところはある。と言えるところは凄い。
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