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クレマン子息
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「え、レイラさんとの婚約は無くなったんですか」
私と婚約をする予定だったレイラさんとは領地内の孤児院出身の子だ。たまたまブラック伯爵の視察についてきたアリスフィア嬢が声をかけた女の子。弱々しく痩せ細った姿を見てアリスフィア嬢が気になったようだ。ブラック伯爵と一緒に視察に来ていたクルー男爵がレイラを引き取ると言った。当初は屋敷の使用人として雇い入れるようだったが、チャンスを与えると言い養女に迎えたのだそう。孤児をこのように養女にすることは珍しくないが中々できる事ではない。慈善事業の一環と言われればそれでおしまい。
孤児を引き取ると貴族だけでなく国民からの支持も高まる。教育が行き届いていれば貴族としての生活や結婚もうまくいくのだから努力次第といった感じだった。
レイラは元々我が領地にいたから、父が領主として面倒を見ようと婚約の約束をした。そしてブラック伯爵家との付き合いも更に深まれば良い、そう言った。私はアリスフィア様を好いていて、口には出来ないけれどアリスフィア様を妻にしたいと心では思っていた。レイラは姿絵を見ると美しく成長していたがただそれだけ。アリスフィア様を妻に出来ないのだからレイラを娶ることによりアリスフィア様と少しでもお近づきできれば……
なんて思っていたのに、レイラがアリスフィア様の婚約者の王子を略奪したと?!
レイラは姿絵を見る限り整った顔立ちをしているがアリスフィア様には及ばないと思うのだけど……こればかりは趣味などの個人差がある。
しかしだぞ、婚約は王家と伯爵家の問題だ。そんな簡単に無かった事になるのだろうか? ならんよな。
「おーい、聞いておるか?」
「あっ、はい。すみません聞いています。考え事をしておりました」
「そんなわけで現在うちにはに王宮でアリスフィア様の護衛騎士をしていた三人の騎士がいる」
そんなわけで? どういうわけで? 話が見えてこない。
「……あの、内容が伝わってこないのですが? レイラさんとの婚約がなくなった事と何か関係が?」
「そのー、あのー、つまりだなー、はぁっ。どうせすぐに分かる事だ、お前も知っておいても良いだろう」
────という事だ。って!
「……婚約破棄をされた挙句、王都から追放されたアリスフィア様が我が家に来る……」
我が家に来る? 身分がなくなってもそんなのどうでも良い。アリスフィア様が我が家に助けを求めに……
「もし来られたら我が家としては客人としてもてなす予定だからそのつもりで。レイラとの婚約は解消となるからクルー男爵と王家に手紙を書いておく。次の嫁候補を探さなくてはならん」
こうはしていられない! いつアリスフィア様がきても良いように屋敷を整えないと!
身分剥奪ということはアリスフィア様は令嬢でも何でもないただの平民だ! うちに助けを求めに来るのなら私が救って差し上げないと! レイラという婚約者がいなくなったのだからアリスフィアが私と結婚すれば良いのだ!
王都から離れたこのクレマン領では人目を気にせずに生活出来るだろう。私がアリスフィア様を救った事により父の敬愛するブラック伯爵家との縁も繋げる。一石二鳥ではないか! 神様いや、第五王子、レイラ、ありがとう!!
婚約破棄された令嬢は次の嫁ぎ先を探すのが大変だと聞く。神様がくれたチャンスだ!
レイラと住む予定だった離れの部屋に行き、この忌々しい花嫁道具をクルー男爵家に返却するようにと伝える。壁紙もカーペットもこんなファンシーな色じゃダメだ! もっと落ち着いた気品のある部屋にしないと! すぐに家具職人を呼んだ。私の私財でできる限りのことをした!
******
「来ないな、おかしいですね。もうついてもおかしくない頃です。いや遅いくらいです。途中で何かあったのか……父上何かご存じですか?!」
「うちの方でも調べさせているんだ。アリスフィア様が家を出たのは確かなんだがな」
しばらくすると調べがついた。
「グレマンへ行ったようだ」
「グレマンですか? なぜですか!」
「いやわからん。クレマンとグレマンを間違えたのではないか? よく間違えられるじゃないか」
「それじゃアリスフィア様は我が家とは真逆のグレマンへ行ったという事ですか!」
「そうなるな。レイラとの婚約もあちらの有責で婚約破棄にする必要がある。王家と男爵家には連絡がついたから王都へ行くことにする」
私と婚約をする予定だったレイラさんとは領地内の孤児院出身の子だ。たまたまブラック伯爵の視察についてきたアリスフィア嬢が声をかけた女の子。弱々しく痩せ細った姿を見てアリスフィア嬢が気になったようだ。ブラック伯爵と一緒に視察に来ていたクルー男爵がレイラを引き取ると言った。当初は屋敷の使用人として雇い入れるようだったが、チャンスを与えると言い養女に迎えたのだそう。孤児をこのように養女にすることは珍しくないが中々できる事ではない。慈善事業の一環と言われればそれでおしまい。
孤児を引き取ると貴族だけでなく国民からの支持も高まる。教育が行き届いていれば貴族としての生活や結婚もうまくいくのだから努力次第といった感じだった。
レイラは元々我が領地にいたから、父が領主として面倒を見ようと婚約の約束をした。そしてブラック伯爵家との付き合いも更に深まれば良い、そう言った。私はアリスフィア様を好いていて、口には出来ないけれどアリスフィア様を妻にしたいと心では思っていた。レイラは姿絵を見ると美しく成長していたがただそれだけ。アリスフィア様を妻に出来ないのだからレイラを娶ることによりアリスフィア様と少しでもお近づきできれば……
なんて思っていたのに、レイラがアリスフィア様の婚約者の王子を略奪したと?!
レイラは姿絵を見る限り整った顔立ちをしているがアリスフィア様には及ばないと思うのだけど……こればかりは趣味などの個人差がある。
しかしだぞ、婚約は王家と伯爵家の問題だ。そんな簡単に無かった事になるのだろうか? ならんよな。
「おーい、聞いておるか?」
「あっ、はい。すみません聞いています。考え事をしておりました」
「そんなわけで現在うちにはに王宮でアリスフィア様の護衛騎士をしていた三人の騎士がいる」
そんなわけで? どういうわけで? 話が見えてこない。
「……あの、内容が伝わってこないのですが? レイラさんとの婚約がなくなった事と何か関係が?」
「そのー、あのー、つまりだなー、はぁっ。どうせすぐに分かる事だ、お前も知っておいても良いだろう」
────という事だ。って!
「……婚約破棄をされた挙句、王都から追放されたアリスフィア様が我が家に来る……」
我が家に来る? 身分がなくなってもそんなのどうでも良い。アリスフィア様が我が家に助けを求めに……
「もし来られたら我が家としては客人としてもてなす予定だからそのつもりで。レイラとの婚約は解消となるからクルー男爵と王家に手紙を書いておく。次の嫁候補を探さなくてはならん」
こうはしていられない! いつアリスフィア様がきても良いように屋敷を整えないと!
身分剥奪ということはアリスフィア様は令嬢でも何でもないただの平民だ! うちに助けを求めに来るのなら私が救って差し上げないと! レイラという婚約者がいなくなったのだからアリスフィアが私と結婚すれば良いのだ!
王都から離れたこのクレマン領では人目を気にせずに生活出来るだろう。私がアリスフィア様を救った事により父の敬愛するブラック伯爵家との縁も繋げる。一石二鳥ではないか! 神様いや、第五王子、レイラ、ありがとう!!
婚約破棄された令嬢は次の嫁ぎ先を探すのが大変だと聞く。神様がくれたチャンスだ!
レイラと住む予定だった離れの部屋に行き、この忌々しい花嫁道具をクルー男爵家に返却するようにと伝える。壁紙もカーペットもこんなファンシーな色じゃダメだ! もっと落ち着いた気品のある部屋にしないと! すぐに家具職人を呼んだ。私の私財でできる限りのことをした!
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「来ないな、おかしいですね。もうついてもおかしくない頃です。いや遅いくらいです。途中で何かあったのか……父上何かご存じですか?!」
「うちの方でも調べさせているんだ。アリスフィア様が家を出たのは確かなんだがな」
しばらくすると調べがついた。
「グレマンへ行ったようだ」
「グレマンですか? なぜですか!」
「いやわからん。クレマンとグレマンを間違えたのではないか? よく間違えられるじゃないか」
「それじゃアリスフィア様は我が家とは真逆のグレマンへ行ったという事ですか!」
「そうなるな。レイラとの婚約もあちらの有責で婚約破棄にする必要がある。王家と男爵家には連絡がついたから王都へ行くことにする」
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