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グレマン到着

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「ようこそグレマンへ」


 グレマン領へに到着した。正直言って移動疲れでヘトヘトだった。伯爵領で一泊させて貰えればまだここまでの疲労はなかったような気もするけれど、こちらは世話になる立場で文句は言えない。馬車まで用意してくださったのだから(馬車は快適でした)


「初めてお目にかかります。わたくしはアリスと申します。フェリクス殿下の紹介でこちらに来ました。突然のことで驚かれたことと思います。申し訳ございません」


 町娘のようなワンピースを着ているがカーテシーをした。


「ご丁寧にありがとうございます。お疲れの所こちらへ連れてきてしまいまして申し訳ない。本日は部屋でゆっくりと過ごしてください。湯浴みの準備も整っていますし、食事も部屋へ運ばせますので、気兼ねなくお過ごし下さい」


 急に来た迷惑な客に対してもこのような対応をしてくださるなんて……申し訳なく思う。

「お言葉に甘えて休ませていただきます」

 移動疲れで挨拶もそこそこに休ませて貰うことにした。おじさんに荷台に乗せてもらえたのは良いけれど、休憩をしてまた移動となり心身共に疲労が蓄積している感じ。
 グレマン家の使用人達によって湯浴みをさせて貰った。疲れて身体中が悲鳴を上げていたからリラックスできた。オイルマッサージまで……気持ちが良い。


 

「お嬢様、そろそろ休みましょうか」

 食事を提供されて至れり尽くせりの環境だった。食後のお茶を飲みソファに座りまったりとしていた。


「そうね。明日はグレマン領へ来た説明をしなくてはいけないわね」


 ミリーと話をしているとうとうととしてきた。思っている以上に疲労が溜まっていると感じた。

「ベッドにお入りください。おやすみなさいませ」





 ******


 ~翌朝~


「アーネストとお呼びください」


「いえ。そういうわけにはいきません」


「グレマン卿と呼ばれましてもグレマンは他にもいますので」


 そう言われればそうなる。

「それではお言葉に甘えてアーネスト様とお呼びする事をお許し下さい」


 名前を呼ぶのは許可を得てから。私は現在家名はないので昨日の自己紹介でアリスと呼んでもらう事にしていた。


「昨日は移動でお疲れでしたでしょう。フェリクス殿下やマーク殿から手紙を貰っていてもたっても居られなくなり、急ぎ迎えに参りました。休む事は出来たでしょうか?」


 わざわざ迎えに来てくれて馬車も準備してくれた。なんの関係もない私達にとても高待遇よね。


「はい。旅の疲れを取ることが出来ました。ありがとうございました」

 応接室にはアーネスト様と私、ショーンとミリー、グレマン家の使用人が数人居た。


「それにしても話を聞くだけで腹が立ってしまった……王族の、いや紳士のする事ではない! 大勢の前で婚約破棄などっ!」

 ドンっとテーブルを叩き怒るアーネスト様。

「しかも悪いのは自分の浮気なのに、アリス嬢のせいにするなどと、許せない! 事が落ち着くまでどうかこの屋敷でのんびりと過ごしてください。と言っても何もない田舎ですが……」

「何かお手伝いすることがあったら、させてください。フェリクス殿下にこちらにくるようにと言われてとりあえず、来ましたが私達はお客様ではありませんもの」

「いえ。フェリクス殿下からの手紙で頼む。と言われたのでお客様です」


 キッパリと断られてしまった。でも何もすることなくぼぉーっとしているのは疲れるのよね。


「それでは宿を探しますわ。しばらく過ごせる分は手持ちでなんとかなるわよね?」

 ショーンを見ると頷いた。

「フェリクス殿下にはグレマン領へと言われましたので、こちらの領地に留まっていれば問題はないわよね?」

 マリーを見ると頷いた。


「いえいえ! そういうわけにはいけませんよ。ここは隣国と近く旅人や中には荒くれ者もいますしアリス嬢に何かあっては、フェリクス殿下に言い訳が立ちません!」

「何もせずにご厄介になるのは気が引けますもの」


 申し訳ない顔をしてアーネストを見ると、うーん。と目を瞑り考えるように腕を組んだ。

「……それなら、私の母とお茶をしてくれませんか? 僻地なので話し相手を欲しがっています。それと甥と姪がいるので少しで構いませんのでマナーを教えてくださると助かります」


「まぁ。それは素敵ですわね。夫人にもご挨拶をしなくてはなりませんわね。グレマン伯爵様はお留守と言っていらっしゃいましたが、夫人はご在宅ですのね?」


「えぇ。昨日は遅かったようで昼過ぎまで起きて来ないでしょう」


 アーネスト様のお姉様のお子様を預かっているようで、夜は遅かったみたい。



「アーネストーあそぼー」


 すると子供の声が聞こえてきました。あら、噂のお姉様のお子様かしら。

「すみません。甥と姪です。お客様が来ているから静かにするようにと言ったのですが、子供には通じなかったようです。注意してきますね」


 アーネスト様は立ち上がり扉を開けようとした。


「わたくしもよろしいですか? ご挨拶をさせてください」



 アーネスト様の後ろへと立った。アーネスト様は大きい方ね。アーネスト様の後ろに私の全身が隠れてしまいました。
 




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