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レイラは孤児である。

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 先代の王の時代に隣国と同盟し敵対関係に合った国へ戦いを仕掛けその戦いは三年に渡り勝利した。


 戦争の理由なんて些細なことで、子供の喧嘩のような理由だったのだが、勝利したとは言え戦死者が多く出た。


 親が亡くなり行き場のなくなった子供達を支援するために国はもちろんのこと、貴族達からも助けを求めた。


 領地に孤児院を建て孤児院で文字や計算を教え就職先を紹介するなど国と共に貴族が面倒を見ていた。となれば就職もすんなり出来るし、親がいなくとも生活が出来るようになりその後は結婚して幸せに暮らしている子達もいる。


 孤児院で引き取った子達は使用人として働かせたり、学ばせてその後は好きな仕事に就く事も可能だ。


 ブラック伯爵家とたまたまレイラの里親である男爵がクレマン領に視察へ行った時だった。孤児院に引き取られるレイラをアリスフィアが見た。痩せっぽっちで元気がない女の子だった。

 両親が亡くなり一人になり気落ちしていたようだった。


『可哀想だわ……』

 ポツリと呟くアリスフィア。

『お父様、あの子の何か力になりたい』

 他にも孤児は何人もいるが、レイラは人一倍弱々しく見えた。


『……まずは元気にならないとな』


 ブラック伯爵はうちで引き取り教育をさせて、上手くいけばアリス付きの使用人にしても良いか。そう思っていたら、男爵が言った。


『それならうちで面倒をみましょう』


 一緒に来ていた男爵は裕福で、ブラック伯爵家の遠縁にあたる。この男も伯爵を尊敬しているようで、一緒に視察にきた事を光栄だと言っていた。


 クレマン子爵は学生時代からブラック伯爵を尊敬し、尊敬するブラック伯爵がわざわざ我が領の孤児院に訪問をしてくれるのか、胸を熱くした。

 孤児院を訪問する際は手ぶらというわけには行かず、何かしらの寄附をする事になる。お金だけではなく子供達の教育にと本やノート筆記用具などたくさんの物を持ってきてくれた。これらは伯爵令嬢アリスフィアお嬢様が自ら選んだのだ、と説明された。感服して目頭が熱い。素晴らしいお嬢様だ。一緒にいた息子はアリスフィアお嬢様に見惚れている。



 一方レイラはクレマン子爵家で今まで食べたことのないようなご馳走を目にして驚いた。両親が亡くなってから食事を取ることができない日さえあったから。

 ここでいうご馳走とは貴族の食事ではないのだが、レイラからしたらスープや新鮮な野菜、焼きたてのパンは贅沢品だった。

 着古した服も綺麗なワンピースを与えられた。そして男爵の屋敷に着く頃には、弱々しかったレイラが元気なりつつあった。


『ここが男爵家だ。君はここで今日から生活する事になる。分からないことがあればなんでも聞きなさい』

 男爵が言った。レイラが連れて来られた先は本邸とは別の離れの使用人が住む棟だった。

 レイラは、このキラキラした人たちが私のになるんだ! 自分もこの中の一員になれる! と喜んだ。


 しかし現実は違った。キラキラした家族の元から離された。


 しばらくして男爵はレイラの生活を見に行ったところ、男爵の顔を見るなりポロポロと涙を流した。レイラは孤児だがどことなく品があり、着飾ればそれなりに見れるようになる。
 
 男爵は孤児という過酷な環境で生活をしてきたレイラに同情しチャンスを与える事にした。


『それでは養子縁組をしよう。男爵令嬢としての教育を受けなさい。そのかわり貴族にはルールがある。それをしっかり学び、今日から貴族として生きなさい。音を上げるようならこの生活は諦めることだ』


 そう男爵家に言われ家族として迎えられたレイラはラッキーだった。貴族としての教育を受け、時には厳しく躾けられたが元は孤児。食事をする事もままならない状況よりかはずっと良かった。綺麗なドレス美味しい食事。

 養女としてレイラが家に入ることを妻である男爵夫人はNOと言わなかったし、問題があれば切り捨てれば良いだけだと思った。

 それに孤児を養女として迎え、立派に令嬢として育てるとなると我が家は称賛される事になる。そう言う打算もあった。





 そんな男爵家の気持ちは他所にレイラは使用人の手によって、世話をされ気分が良かった。だって私は貴族令嬢だもの! 使用人はみんな私に傅くわ。


 文字を覚え本を読むようになった。主にはロマンス小説。身分が低くとも王子様と恋に落ちる物語は大好きだった! まるで自分のことのように書かれている物語もあった。

『私はヒロインなのね……』


 そうよ。私は王子様と恋に落ちるのよ。でもこの国の王子様は既にみんな婚約者がいる。




 そうだわ! 私は可愛いし立派なレディになれば王子様も私を選ぶはずよ!



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