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分かっているとも
しおりを挟む~マーク視点~
ニヤリと笑い返す。
「バカ王子はなんらかの形で罰せられるから高みの見物というところだな」
「えぇ」
「分かったよ。うちが口出しをするとスムーズに話が進まなくなるから黙っておけ。と言うことだな」
「えぇ」
「はぁっ。仕方がないね、今回は見逃すよ。だけど護衛は着いて行かせる。それくらいはさせて欲しいかな。危ない目に遭わないとは限らないから」
後ろに控えている執事にも目をやると、頷いた。
「申し訳ないわよ」
「今後のことを考えてくれよ。このまま両親にアリスを行かせたと言ったらコテンパンにされるのは誰だ?」
「……そうよね、それではお願いするわね」
母なら物理的にやり兼ねない。怒ったら怖いし、心配させてしまう。
「明日見送りに行くからな!」
話が終わり扉を開け部屋を出ようとした。
「「あっ!」」
席に座っていたカップルがアリスを見て声を上げた。
「あら?」
アリスも知っている顔のようだ。
「知り合いか?」
この町に貴族以外でアリスを知っている者がいることが不思議だった。見たことがある顔だ。
「昨日はありがとうございました。とても良い思い出になりました」
そう言ってきたのはカップルの女性だった。
「こちらこそ、美味しいシャンパンをご馳走になりましたもの。ありがとうございました」
どうやらこのカップル店主の知り合いのようだった。男爵子息時代からの友人で平民だけど裕福な家の跡取り息子のようだ。
「へぇー。人助けをしたのか。アリスらしいな。昔からなにかと世話好き? お節介だから」
「アリスさんと仰るのですね。領主のご子息と一緒と言う事は、ただならぬ関係とかですか?」
ワクワクしたような顔でアリスとマークを見る二人。
「アリスとは幼馴染なんだ。久しぶりに会って話をしていただけだよ」
と説明する。アリスとただならぬ関係? アリスは可愛いし優しいし好きだが、異性として好きかと問われれば……そうではない。友人? うーん。家族? だな。尊敬できる努力家で妹のような存在だな。アリスもお兄様と呼ぶ。
「そうでしたか……」
がっかりした様子の二人。アリスはこの二人に気に入られているようだ。
「また会えてよかったですわ。どうかお幸せに」
そこまでで話は終わった。
「街の案内くらいはさせてもらう。散策する予定なんだろう?」
マークは深く帽子を被り顔を隠す。領内の特産や名所を回って夕方ホテルまで送り届けた。
そして次の日マークはバスケットに沢山のフルーツや焼き菓子を持たせた。
「ありがとうマークお兄様」
「これくらいは当然だよ。護衛は後ろからついて行かせるから、元気でまた会おう。次この町に来るときはゲストとして招くからな!」
「えぇ、マークお兄様もお元気で、また」
手を振り見送る。
「はぁ。アリスはなんでまた面倒なことに巻き込まれてんだか。それにしても情報が足りないな……」
そう言ってマークは王都に手紙を早馬で三通送った。
一通目はジェレミー。
二通目は王都にいる両親。
三通目は第三王子のフェリクス。
フェリクスとは幼い時からの友人で、連絡をする仲である。グレマンに行くならうちは立ち寄る事になる。早く教えてくれたらまた違ったのに! と言う文句も込めて。現在ブラック家にはジェレミーしかいないと聞く。アリスは元気だったぞ。と教えてやろう。心配しているだろうから。
******
早馬でも流石に時間はかかった。王都までは遠い。そしてマークの両親に手紙が届いた。
「まぁ! なんて事! アリスちゃんの代わりにレイラ嬢が?!」
「力不足だろう……伯爵はまだ帰ってきてないんだよな?」
「もうじき帰ってくるわ! 情報が欲しいと書いてあるから調べておかなきゃ! ルイーズが帰ってきた時にすぐに教えてあげなきゃ!」
ルイーズとはアリスの母の名前でマークの母の友人だ。
「分かった。それはこちらで調べておこう。王都にいてもまだ噂になってないなんておかしいな……」
マークの父テイラー伯爵が不思議そうな顔をする。
それもそのはず、第三王子が第二王子第四王子を呼び出し、王太子妃、第二、第三・第四王子の婚約者全員集合という形になり、それぞれが今出来る範囲で箝口令を出した。
まずは王太子とアリスの兄グレイヴの帰りを待つ事になり、皆その時を待っていた。
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