婚約を破棄され辺境に追いやられたけれど、思っていたより快適です!

さこの

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ウォーカー子爵家

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「ドレスなんて持って来てないわ。流石にこの服装と言うわけにはいかないわよね」

 今アリスが着ている服は平民が着る様なワンピースだ。平民と言っても商家のお嬢さんが着る様な仕立てのいいもの。だが貴族の家に招かれる服装ではないことは確か。


「こんなこともあろうかと、ドレスを持って来ておりますから着替えをしましょう。アクセサリーは至ってシンプルですがお許しくださいませ」

 ミリーは手際よく着せ替えてくれた。こんな事もあろうかと……考えなしだったのは私だけ。着替えるとショーンは執事にミリーは侍女に、王都にいた時と変わらない姿になった。


「お嬢様、子爵家からの迎えが来ました」

 宿の裏に馬車を停めるように手配までされている。馬車に乗りウォーカー子爵のお屋敷へ移動する。長閑でのんびりとした雰囲気の領地で馬車の中もまったりとした空気感が漂っている。

 しばらくすると、大きな屋敷が見えて来て門が開けられ、馬車が門をくぐった。



「お待ちしておりました。さぁ、どうぞこちらへ」

 馬車を降りるなりウォーカー子爵が出迎えてくれてサロンへと通される。


「お食事の前に、何故あのような場所にいたかお聞きしてもよろしいですか?」


 子爵家のメイドがお茶を淹れてくれた。まだ噂はここまで来ていないのね。まだあのパーティーから数日ですものねぇ。先ずは挨拶からね。お邸に招かれたのにこれでは失礼ですよね。


「挨拶が遅れて申し訳ございませんでした。そして歓迎していただきありがとうございます。ウォーカー子爵様には初めてお目にかかります。わたくしは……今は訳あってアリスとだけ名乗っております」


 ショーンとミリーも頭を下げた。


「えぇ……っとそ、それではアリス様とお呼びする事をお許しいただけますでしょうか」


 意味は分からないが伯爵令嬢のアリスがそう言うのならそれに従うしかない。しかし勝手に名前を呼ぶ事も躊躇われるので、許可を得る事にした子爵。


「はい、もちろんですわ。ウォーカー子爵様はまだご存じない様ですが、わたくしは先日大勢の人前で婚約を破棄されました。殿からの命令で身分を剥奪され王都から100キロ離れなくてはならなくなりましたので、わたくしは移動中です。そして貴族ではございませんので、先ほどの宿に泊まっておりました」


 簡潔に説明を終えた。

「そんなことが……もしかして王宮で行われた学園のパーティーでしょうか? 息子の手紙でパーティーがあると言うことは知っていました」

 大勢の人前でと言ったので学園のパーティーと捉えたのですね。その通りです。


「えぇ、仰る通りですわ、なんでも別の方と婚約をなさる様でわたくしは邪魔になりましたの。新しいお相手の方が危害を加えられては困ると言う事で、殿恥ずかしながら追放&身分の剥奪を言い渡されました」

 子爵がどう思われるかは分からないけれど賢い方なら分かるはず。大事な事なので二度お伝えしましたのもの。


「私の様なものに話をされてもなんの得にもならないと思います。しかし伊達に年を食っているわけではありません。お話を聞かせてくださりありがとうございました。失礼を承知でお聞かせください、婚約破棄の理由はなんだったのでしょうか?」


 理解したと言う事。理由さえわかればパズルのピースが埋まる感じ?


「わたくしに可愛げがないからですわ」


「……へ? それが理由と仰るのですか?」

「えぇ。お分かりいただけましたか?」

 にこりと微笑むアリス。



「なるほど……だからなのか。殿からというのも……なるほど。理解しました。ときにアリス様とお連れの方には我が家で滞在していただきたいと存じます。流石に何もない田舎町の宿というわけには…。アリス様の存在を知ったからには、無視できません」


 キッパリと子爵は言った。困ったわね。迷惑をかけるつもりはないのに。










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