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いざ! グレマンへ

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「ただいま戻りました」


 急いで屋敷へと帰ってきたはいいけれど、早く準備をしなくては間に合わない。半日の猶予って言われたけれど、フランツ殿下はせっかちだから屋敷を出たか確認しにくるはず。半日の猶予で王都から出ろだなんて。


「アリス姉様? どうしたの? パーティーは?」

 陛下と王妃様が隣国へ行って留守にしている。私達の両親も留守にしている。それを狙って婚約破棄をしてきたのよね。可愛いジェレミーとお別れなんて寂しいわ。それにお兄様が帰ってくるまで一人にしてしまうもの。


「ジェレミー。今からお姉様の言うことをよーく聞いてね? 今を持ってジェレミーのお姉様はお姉様じゃなくなったの」


「……何を言ってるの? 正気なの? 頭でも打った?」


 可愛い顔をして毒を吐くなんて最高ねジェレミーは。って真剣に話をしているのに。


「もちろん正気よ。お姉様、いえお姉様は先ほどを持って単なるアリスになってしまったの。婚約破棄をされた上に身分の剥奪? そうそう婚約者の男性と新たな婚約者の女性の100キロ以内に近寄ってはダメらしいの。婚約者の男性が皆の前でそう宣言しちゃったのよ。だからね、追放という形になりました。分かってくれた?」

 ジェレミーは賢いから分かるでしょう?


「フランツ殿下がお姉様に婚約破棄をしてきて、お姉様と言う婚約者がいながらビッチな女がフランツ殿下の新たな婚約者になるって事でいい? それは浮気じゃないですか? なぜ追放されなければならないのですか?」


 本当に口が悪いわねぇ。どこで覚えてくるのかしらねぇ。ビッチだなんて……でも成長期だもの。いろんな人との出会いは大事よね。


「私が邪魔だったから? そんな感じかしら。それでフェリクス殿下が出てきて騒ぎは一旦収まって帰ってきたの。ジェレミー悪いけれど時間がないのよ。半日しか猶予がなくて……うちの馬車使ってもいい? 途中で乗り換えすれば問題ないわよね? 王都の外れまで乗せてね! あ、身の回りのものは持って行っても良いかしら? 旅行カバンに入るだけでも」

 ポンっと手を叩き、ふふっと笑う。


「なんでそんなに楽しそうなのか聞かせてくれる? 僕は腹が立って仕方がないんだけど! こんな時に父上も母上も兄上もいないなんて!」

 使用人が集まって来ちゃったわ。早くしないとね。

「あら? それを狙って婚約破棄をしてきたんでしょう。陛下も王妃様もいないもの。それに王太子殿下とお兄様も視察に行ってお留守だもの。ちょうど良かったのね」


「はぁっ? なんでそんなに冷静なの!」


「大丈夫よ。だって追放先を決めたのはフランツ殿下だけど、本当の行き先を知っているのはフェリクス殿下よ。なんとかなるのよ。フェリクス殿下に任せましょうね」


「どういう事?」


「そ・れ・に! この後が面白い事になるはずよ。お姉様は追放準備に入るから、準備ができたら一旦お別れよ!」

「なっ、お姉様!! ちょっと!」


 ジェレミーは慌てて引き止める、大事な事を聞いていなかった。と。


「ところでそのビッチな女はどこの誰ですか? うち伯爵家としても後々の対処とかあるんですからっ」


「あら? 言わなかった?」


 ……言ってない?


「聞いていませんっ」


「レイラよ」


「……レイラさんっ? えっ?」


 目を見開き固まるジェレミー。


「話は終わりね? 後はよろしくね。ジェレミーの事信用しているからね」

 そう言ってアリスフィアはジェレミーの頬にキスをした。


「えっ……嘘だろ……」









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