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怒涛の誕生日

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 何よ。何だか馬鹿にされている気分だわ! こんな最先端の情報を教えてあげたのに! なんでそんな顔をして睨んでくるのよ!! それに周りの貴族たちの視線もおかしいわ。


「シャノン様は昔王女を助けたから、ナセル様に結婚を迫っているんでしょ! 知っているんだから! それにシャノン様はナセル様じゃなくてミカエルが好きだったのに、尻軽女じゃ無いの!」


 結局はミカエルを捨てて王子を取ったんでしょ? 侯爵家の婿に王子を貰うだなんておかしいもん! それを許す周りも変よ!




「黙れと言っている! 君と結婚をするつもりなど全くない。君が例え素晴らしい知識を持っていたとしてもそれは変わらない」


 ナセルの怒りに、これは何事かと周りの貴族は見て見ぬ振りをしているが、聞き耳はバッチリ立てている。王家に関する秘事をこの様な場所で言うような令嬢と関わりたくないのが丸わかりだ。



「シャノン様は王女を助けた時に背中に大きな傷を負っていますよね! それで、」


 傷物じゃないの! 背中がバッサリ切られるシーンを知っているもの。どこでみたかはわからないけど、シャノンはまだ子供だったわ。誰かを庇った感じがしたけどあのチビは王女でしょ? あんな深そうな傷でよく生きていたわね……逆に感心するわ。だって周りは血の海だったわよ? 意外とこの国の医療は進んでいるのかしら?



「ーーそこまでっ!」


 王太子が厳しい声でマリの言葉を遮る。周りの空気がピンと張り詰めた。ざわついていたまわりも静かになった。



 シャノンを見たら青褪めるような表情をしているわ。そうよね! 事実だもの。首から背中にかけてバッサリ……だからドレスも背中が見えないよう、に……あれ? 傷が、無い。 



「それ以上シャノンを侮蔑することは許さない! 私の誕生日会に集まってくれた皆には悪いが私は非常に気分が悪い」


 ナセルがシャノンを抱き寄せた。周りの貴族達はどうすればいいのか分からないような顔をしている。
 王太子がマリの言葉を遮ったことによりナセルがマリに言ったが、王族が人前でここまで感情を出すことも珍しく周りはヒヤヒヤしている。

 ナセルは今まで見た中で一番恐ろしい目をしてマリを睨んでいた。


 パーティー会場の一部で起きた事だが、楽団による演奏も止まり、ダンスホールも人がはけていた。近くにいるものだけではなく、遠目でもこちらが注目され始めた。

 王女を庇って怪我をした。それはほんの一部の者しか知らない話であり、貴族が大勢集まる場所で例え偽りであっても王族の秘事を話すなんてもっての外である。



「私だって気分が悪くなったわ! そこにいるシャノン様のせいよ!」


 


「うむ。ロルシー嬢には別の機会を設けて話を聞くことにしよう。集まってくれた皆には迷惑をかけたようじゃな。この娘の話を少しするとするか」


 そう言って陛下は会場を見渡せる場所に向かう。その様は威厳があり、さぁっーと波がひいたように道があいた。



「皆、騒がせてしまって申し訳ない。今日は第二王子ナセルの誕生日と婚約披露に集まってくれて誠に感謝をしている。先ほどわかった事じゃが、異世界からの記憶保持者がこの国にいるようじゃ」



 マリは心の中で皆が私を見ているわ。尊敬しなさいよ? 崇めなさいなと誇らしげだ。


「異世界からの記憶保持者というのは、今までの常識を覆すものをもたらすと聞く。記憶持ちは女性が多いとも聞いたことがあるが例に漏れずそちらの令嬢がその記憶保持者じゃ」


 ザワザワと騒めく会場内。


「ある国ではその者を大いに讃え、ある国では聖女と呼ばれ、ある国では王の妃となり、ある国では異能とも呼ばれ地位を確立した者もいると言う」


 皆がマリを見て頷く。


「ーーーーじゃがのぅ。どうもこの娘と話をしていてもそのような才能があるとは思えんのじゃ。しかしながら異世界からの記憶保持者というのは国にとってプラスになる事から、神殿で預けることにしようと思う」


 パチパチパチパチと拍手が起きた。


「え! え! えぇ!! 神殿? 私が? なんで? なんで! そこはナセル様と結婚じゃないの?」


「国が守る要人となったのじゃ。神に守られる方が良いじゃろう。記憶持ちと言うのはその存在が危うく攫われたり、命を狙われたりする事があるんじゃ」


「そんなぁ……」


「何か他に望みはあるのか?」


「ナセル様と結婚させて! 私は異世界の記憶保持者でしょ? 国にとって大事な存在なんでしょ! 王様なんだから簡単でしょ!」



「ほぅ。先ほど息子が言っておったじゃろう。息子には愛する者がいると。人の心を弄ぶのはやめんか! それで誰が幸せになる? 息子は王子と言う地位を降り侯爵家に婿入りをする事になった。君は我が息子の様に何かを捨てる事ができるか? 報酬ばかりを強請るのではなく自分自身で考えて行動せよ! すると自ずと答えが出てくるものじゃ」



「考える? 自分で?」


「そうじゃ。先程から言っていた便利な世界とはなんじゃ? 異世界の便利なモノだと言う事は分かった。それが叶えば国は最先端の技術とやらで便利になるじゃろうな。しかし君は便利な物を知っていてなぜそれがそのように動くか、考えたことがあるのか?」


「動いて当然だもん!」


「馬車移動が大変だと申したが馬車も進化しておるんじゃ。それがゆくゆくはその車とやらになると言う事じゃろう? じゃが馬車は急に車とやらにはならん。そのためにどうすれば良いかを考えるんじゃ」


「無理よ!」


「君が先ほど言ったすまほとか言うモノも人が作ったモノじゃろう? なんでも答えてくれると言うが、この世界にないモノじゃ。この世界では本が知識を高めてくれる。王立図書館には素晴らしい蔵書をたくさん揃えてある。まず君はこの世界の知識を知り、常識を身につけ、それに応じてこの国と異世界の知識をマッチしたものを考えて欲しい。分からないことがあれば教えてもらうのではなく、自ら調べるのじゃ。それが知識となる! それが出来たら報酬を与えることにする! 以上」


 陛下が締めた後は神殿の関係者が、マリを連れて行った。


******


~ナセル視点~


 その後聞いた話によると、マリは学園に入学した後に急に何かを思い出したようだが所々の記憶だそうだ。

 花瓶の水がかかり私がマリを助け、それが出会いとなり、街に行き私とマリがデートをする。

 その後は私の誕生日会でマリと婚約発表をする。

 将来は新公爵家を興しマリは公爵夫人となる。

 それが事実なら相手は違えど予知夢的な物なのだろうか……?



 アップルパイは確かに好きだ。マリが言うには、マリの作るアップルパイが私の好物になった。と言うことだった。あり得ない! もう二度とアップルパイを口にすることは無い! なんだよ、幸運のアイテムって。



 等等……意味のわからぬ事を言った。それにシャノンがマルガリータを抱いている記憶もあったそうだ。スチルと言ったか? その時にシャノンは賊に斬られに深い傷を負ってしまったと言う……。



 実際は流れてきた剣が腕をかすった。王家お抱えの医者が傷跡が残らぬように早期治療をして、今はすっかり傷は無くその事を知るのはほんの一部だった。

 その一部の人間もある理由から恐ろしくて口外する事はなかったし、マリには単なる憶測にすぎないとし、王家を軽視する態度に神殿扱いとし、身分は剥奪した。



 シャノンがマリとミカエルが仲がいい事に嫉妬してマリを虐めるとも言っていた。

 
 まだよくわからない事を言っていた。異世界の記憶とはこの事も含まれるのか? スチルとか言うのは絵姿のような物だと聞いたが、よく分からないし分かりたくもない。


 それにしても貴族の令嬢としての品が全くない! 子爵が呼び出されどのように教育をしてきたかと尋ねたら、教師をつけても身にならなかったと言う。サボってばかりで頭を悩ませていたそうだ。



 よくわからない記憶を頼りに行動していたことには呆れるしか無い。それにしてもシャノンがいじめ役とは……あり得ないだろう。ほぼ引きこもりのような生活をし、両親に溺愛されて育ってきたシャノンが!


 







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