好きだと伝えたら、一旦保留って言われて、考えた。

さこの

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異世界から来たと言う少女マリ

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 異世界から稀に迷い込んで事があると聞いたことがある。来たものからすると、記憶だけ持って生まれ変わると言う事だ。文献にも残っている。


 もしこのマリと言う少女が、その異世界から来たと言う事が証明されれば国にとって良い事なのだ。異世界からの知識というものは国を言い風にも悪い風にも変える事が出来るという。


「貴女が異世界から来たという事は、ほかに誰が知っているんですか? 何か証拠は?」

「誰にも言っていません。ナセル様に初めて言いました!」


「そうですか……」


 どうするべきか……報告はしなくてはならないだろう。兄にまず相談をしてから父に報告という形を取ることにした。

 貴族の子女なのにどこか不思議な(変な)少女だと思ったら、まさか異世界の記憶持ちだとはな……



「ね! 私なんでも知ってますよ。シャノン様とナセル様が結ばれないことも!」


「はぁ? なんですか、それは!」


「シャノン様はミカエルが好きだから、ミカエルと仲のいい私に嫉妬するんです。でもぉ、私は異世界人でナセル様と婚約するんですよ! シャノン様はそれも気に食わなくって私シャノン様に虐められて逆上したミカエルがシャノン様を殺そうとして、優しいナセル様は幼馴染だからという理由でシャノン様を国外追放にするんです!」


 なんなんだ、そのシナリオは……


 どこの三文芝居だというのだろうか……


 シャノンがミカエルを好き? それは過去のことでミカエルを好きだと思い込んでいただけだ! 侯爵もそう言っていた。シャノンの周りに年頃の男はミカエルしかいなかったのだから。

 

「そうですか、どこの異世界の話かわかりませんがそろそろ私の我慢の限界が来たようです」

 頭を押さえながら言った。この令嬢の顔を見るだけで疲れてしまうのだから仕方がない。

「異世界から来た私にそんな対応しても良いと?! 私の知識はすごいんだから! この知識さえ有ればこの国は発展するわよ!」


 ふん! と鼻息を荒くするマリ。


「分かりました。その知識を存分に披露してもらう場所を提供しましょう」


「えぇ。望むところです。王宮に行きましょうか? それとも二人きりの時にします?」


「二人きりは困りますね。王宮がお望みですか?」


「それはそうでしょう。人が大勢いるところだと目立っていいですね!」


 もし本当に素晴らしい知識があるのなら、この少女は国にとってプラスになる。私のこのマリに対する苦手意識のせいで無碍にも出来ない。


「私の誕生会がもうすぐ王宮で行われます。その会場で是非披露してください。貴女を招待しましょう」


「はい!」


 これは賭けだ! マリがどう出るか。シャノンに危害を加えさせない為にも王宮の方が良い。危害を加えるようなら家ごと罰することにする。王子である私の誕生会で流石に爆弾娘とは言え変な事はしないだろう。



******


 ふふっ。とうとう言っちゃった! これでナセルは私と婚約出来るわね。


 王宮のパーティーだって! しがない子爵家だから招待されないかと思っていたわ。
 シャノンの誕生日会だって盛大に行われたって聞いたけれど、招待されなかったもの! セレブが沢山集まったって聞いたし、生意気にもパートナーはナセルだったって? 侯爵家の一人娘で同じクラスだからって、ナセルに我儘言ったんでしょう!



 私は悪女ではないから、シャノンがミカエルとくっ付いてくれればそれで良いのよ。


 ミカエルとデートしてみたけど、反応が悪いんだもの!! それにナセルと仲良くデートするなんて生意気なのよ!

 そのデートは私がする予定だったのに! それでアイスを食べて口の端についたクリームを指で拭ってくれる。って言うシチュエーション知ってるもの!

 ナセルがシャノンに見せるあの優しい顔は私に向けられるものなのに、生意気!


 侯爵の娘だかなんだか知らないけど、ナセルは私と結婚して公爵になるのよ! 私は公爵夫人! これは決まったシナリオなの。 シャノン、本当に目障りな女!


 ナセルの誕生日で王宮に行くのなら、この素晴らしい知識を披露して国に貢献して王様自らナセルと結婚してくれ。って言ってくるかも。



******




 早速城に帰り兄に異世界の記憶持ちの話をした。


「シャノンが国外追放だと?!」


 そっちに食いつくのか……。


「おまえ、シャノンの事をしっかり捕まえておけよ! その記憶持ちとやらがシャノンに傷をつけたらただでは済ませないぞ! ロンゴ伯爵の息子にも近づけさせるな!」


「分かっていますよ。だから兄上に相談しているんでしょうに……それより兄上はシャノンを可愛がりすぎじゃないですか? ルイズが拗ねませんか?」


 兄とシャノンは私が思っているより親しいようだ。お茶会の時もそうだし、シャノンにこっそりキャンディを渡していた事も知らない。

 もしかして……

「兄上、まさかシャノンの事……」


「あ?」

 機嫌が悪そうだ。


「好きだとか、言いませんよね?」


「あ? 好きに決まっているだろう! あの時マルガリータを体を張って助けてくれた勇敢な子だぞ。本来シャノンは怖がりな子なんだぞ。だから今度は私達がシャノンを助けるんだよ。おまえは何を言っているんだ!」


「勘違いでしたか、すみませんでした」


「シャノンはああ見えて頑張り屋だ。おまえと勉強している時も負けたくないと言って、休憩中も予習復習していた。庭でこっそりダンスのステップの練習をしていた時は、いつも同じところで間違えて泣いていた。その時ダンスの練習に付き合ってやった。うまく踊れた時は満面の笑顔でこう言ったんだ。これでおまえとダンスが踊れるって」


 なんだ……兄的には妹を可愛がるようなものなのか? それにそんなエピソード聞いたことがない。


 あの頃はシャノンも私のことを少しは思っていてくれたのかな。だと良いな。




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