好きだと伝えたら、一旦保留って言われて、考えた。

さこの

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マルガリータ

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「シャノン、良く来てくれたね」

「カルロス様、レイレ様お招きいただきありがとうございます」

 持参した焼き菓子とハンカチをお渡したら、とても喜んでもらえた。


「シャノンも着いたのか?」


「王太子殿下、ルイズ様こんにちは」


「シャノン昔のようにマックス兄様と呼んでくれよ。なんかくすぐったい言い方だ」


 頭を掻きながら苦笑いしていました。少し緊張が解れてきました。


「シャノン様はマックス様とも仲がよろしいのですね」

 レイレ様に声をかけられました。


「王太子殿下には幼い頃に良く遊んでいただいて、そうお呼びしていた事がありました。懐かしいですわね」

 その後カルロス様とレイレ様の国の話を聞いたり学園の話をしたりと楽しく過ごす事ができました。


 すると、そこに王妃様が登場なさって

「まぁ、盛り上がっていますね、良かったらこの子も仲間に入れて貰えないかしら」



 マルガリータ殿下でした。



「マルガリータ様、どうぞこちらへ」

 レイレ様がマルガリータ殿下をお迎えに行きました。するとマルガリータ殿下と目があったので、すぐさま立ち上がり



「マルガリータ殿下、お久しぶりでございます。シャノン・ド・コレットでございます」

 少し声が震えたけれど、挨拶をした。


「お久しぶりです、シャノン様。どうぞお顔をあげてくださいませ」

「……はい」


 顔を上げると泣きそうな顔をしたマルガリータ様が私を見ていました。

 最後に見たあの日から成長されておられました。

 あの日の最後に見た五歳のマルガリータ殿下……とは……違う。

 違うけど、怖い




「シャノン様。あの時、わたくしを助けてくれてありがとう。ずっとお礼を言いたかったのに、ひどい事を言ってごめんなさい」

 ひっく、ひっくと堪えきれずに泣いてしまわれました。


「いいえ。わたくしこそ、」


「あの時、わたくしがお庭に誘わなければあんなことにならなかったのに、ひっく」


「いいえ、」


「シャノン様はわたくしを守ってくださったのに……助けて下さったのに……あんな酷いことを言ってしまいました。何度謝っても、謝りきれません」




「マルガリータ殿下。もう、すぎた話です。わたくしの事を気にかけてくださってありがとうございました。わたくしこそ、マルガリータ殿下に謝らなければなりません。わたくしが……、わたくしが弱いばかりに恐ろしくて、皆さんにお会いする事が出来ませんでした。お手紙やお見舞いまでいただいたのに」


 心を閉ざしてしまっていたのです。卑怯な私はそれを言えなかった。でも……


「それは、わたくしが、」


「いいえ、わたくしは逃げていたんです。ナセル様と学園でお会いするまで避けてましたもの。ナセル様はずっとお手紙をくださっていたのに、そっけないお返事ばかり書いてしまって……それなのに学園でお会いしても相変わらず優しくて……マルガリータ殿下に会う勇気がなかったのに、無理矢理でも連れて来てくれてマルガリータ様に今日お会いできて良かったです」


「シャノン様……ごめんなさい」


「もう謝罪はご勘弁ください。しっかり受け取りました」


 マルガリータ様の手をとって微笑みかけました。すると、わぁぁ……と感情が溢れてしまったのでしょう、泣いてしまわれたので、よしよしと抱きしめました。

 成長したとは言えまだまだ体は小さくて……マルガリータ様を抱きしめるとあの時とは違った。


 マルガリータ様も何年も辛い思いをされてきたのだと思った。自分のことばかりしか考えていなくて今まで逃げていたのだと恥ずかしくなった。



「あら、マルガリータ、シャノンのドレスを汚してしまって困ったわね……新しいドレスの用意があったわよね」


 王妃様の侍女に尋ねると、はい。と侍女から返事があり


「ナセル、シャノンをエスコートして戻っていらっしゃい」


「はい。行こうかシャノン」


 ナセル様に手を繋がれて侍女の後をついて行った。


「シャノン大丈夫?」


「もっと早くマルガリータ殿下にお会いすれば良かったのかもしれません。マルガリータ殿下はずっと傷ついておられたんですね、わたくしは自分のことばかりで」


「いいや、マルガリータは傲慢だったんだ。幼かったからとは言え私もつい手を上げてしまって、傷口に塩を塗ってしまったんだ」


「え! 手を」


「シャノンに言った事が許せなくて頬を打った。私も感情的になってしまって……仲直りまで随分時間が掛かったよ。兄上が間に入ってくれて」


「そんな事が?」


「今だから言える事だけどね。私も子供だったんだんだ」


「ナセル様ありがとうございます」


「何?」


「今日のお茶会は、この為だったんですね」


「バレたら仕方がないけどカルロスとレイレに協力してもらって、その事を兄上に言ったらどうしても出席すると言って聞かないものだから。シャノンを強引に連れて来てしまって本当にごめん。侯爵から時が来たらシャノンをマルガリータに会わせて欲しいと言われたんだ」



「皆さんにご迷惑をお掛けしましたね」


「迷惑ではないよ。バカだねシャノンは……バカなのは私達家族だよ。あの時シャノンに助けられたのに結局は何も出来なかった。傷つけてごめん。マルガリータを守ってくれてありがとう」


「謝罪はあの時に散々してもらいましたよ……今日はお誘いいただいてありがとうございました」






 その後用意されたドレスに着替えて、お茶会の会場に戻った。マルガリータ殿下の目は腫れていたけど、スッキリしたお顔をしていた。そのお顔を見ていたら靄がかかっていた記憶も蘇って来た。

 私の記憶の中のマルガリータ殿下はお顔に靄がかかっていたから……



 その後解散となった時に


「マックスお兄様」

「なんだ?」


 驚いた顔をしていたけど、嬉しそうに返事をしてくれた。

「忙しいのにまたお時間を作ってくださってありがとうございました」


「無理させて悪かったな。マルガリータと会ってくれてありがとう」


 頭を撫でられた。昔と変わらないけど、



「マックスお兄様、わたくしはもう子供ではありませんよ!」


「そうだけど、シャノンを見るとな、つい。妹みたいなもんだろ。許せ」

 嬉しそうに笑ってくれたので

「……はい」と答えた。



「マックスはシャノン様に甘いのよね」

「そうだな。ルイズも弱っていたら甘やかしてやるよ」




 お二人はとてもお似合いだと思った。



















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