絶対に近づきません!逃げる令嬢と追う王子

さこの

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番外編

デートからの

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 王宮についてからアイリスはすぐにリュカの元へ行く。

「ママ!」

「リュカごめんなさいね。良い子にしていたかしら?」


 王妃様の元でおもちゃで遊び、フルーツを食べて大人しくしていましたよ。とメイド達から聞く。王妃様は先程急ぎの用があり陛下の元へ行かれました。

「そう。お利口さんにしていたのね。リュカ」

 アイリスに褒められて喜ぶリュカ。

「さぁリュカ行きましょうか」


 手を繋いでまた馬車へ向かおうとするアイリス。

「王太子妃様、一体どちらへ……」


「しばらく殿下の顔を見たくないと伝えてちょうだい」


「「「「「え?」」」」」


「お待ちください」
「私たちが怒られます」
「王太子妃様!」
「何があったのですか!」

 バタバタと騒がしい王族のプライベートスペース。そこに……


「義姉上?」


 エヴァンの弟サイラスだ。


「あら、サイラス殿下ではないですか? 今お帰りですか?」

 サイラスは学園から帰ってきた所、たまたま居合わせてしまった。


「えぇ。義姉上、一体この騒ぎは……リュカを連れて何処へ?」

 散歩に行くくらいならこんな騒ぎにはなっていないだろう。また面倒なことになっているのだろうか。止めなくては……そうじゃないと兄上が……考えただけでゾワっと鳥肌が立つ。


「サイラス殿下にご迷惑をおかけするつもりはございません。見なかったことにして下さいな」


 そう言ってリュカの手を引き歩き出した。リュカは王妃に買ってもらった王冠を引きずっている。どうやら気に入ったようだ。


「いやいや、待って下さいよ。義姉上!」


 ケンカだろうか……兄上は何をしたんだよ!


 義姉上、待って、お願いだから……何を言っても聞く耳を持たず、とうとう門まで来てしまった。

 門の外に出られては困る。絶対馬車に乗せてはいけない。どうしても乗るのなら、殺される覚悟で同乗するしかない。とサイラスは思っていた。

 エヴァンはアイリスに近寄る男は実弟であっても良い顔をしない。


「アイリス、なぜ怒っているんだ? リュカを連れてどこへ行くつもりだ」


 エヴァンが帰ってきた。助かった。サイラスはほっと胸を撫で下ろした。


「……なぜ、サイラスと一緒にいる? どこかへ行こうとしていたんじゃないだろうな」


 ジロリとエヴァンはサイラスを見る。その目は殺気立っていて余計な事を言ったら、何をされるか分からない。

「ま、まさか!」

 首をこれでもかと左右に振るサイラス。


「リュカ、行きましょう」

 リュカはエヴァンを不思議そうに見ていた。

「どこへ行くつもりだ!」

 アイリスの手を強引に取る。


「触らないでくださいっ」

「なぜ怒っているのか、聞かせてくれ。私は何をした!」

 エヴァンを睨みながらアイリスは言った。周りははらはらとしている。アイリスが怒る姿を久しぶりに見た。そして今回はリュカを連れて何処かへ行こうとしていた。これは只事ではない!


「孤児院で……」


「孤児院?」


「女の子に結婚を仄めかしていました! キスもされていました! それに孤児院の子達には優しくしているのに、リュカとはいつも喧嘩しています! リュカもパパが嫌いだって」


 リュカを抱きしめ泣き出すアイリス。


「ママ、泣いちゃだめ」

 よしよしとリュカはアイリスの頭を撫でる。いつもアイリスがリュカの頭を撫でるように。


「ママにはリュカしかいない……」



 いつもの痴話喧嘩だ。と周りは思い、そぉーっと離れていった。ただいつもと違うのは、リュカが巻き添えになっているという事だった。


「……子供が転びそうになったから助けただけだ。あのまま転んでは怪我するだろう」


「リュカが転んだ時は助けませんでした」

「レイが近くにいて間に合っただろう」

「リュカにはおやつをあげないのに……あの子達にはあげていました!」

「虫歯になったら困る。リュカに甘いものはまだ早い」

「リュカより孤児院の子達と仲が良かったではないですか!」

「リュカは我が子だ。本心で接している」

「キスされてました!」

「キス? 何かが触れたくらいだろう」

「わたくしが同じ事をされても、そんな事を言えますか?」





「……言えんな、悪かった。しかしあの子を罪に問う事は出来ん。まだ分別もつかない子供だ」


 エヴァンは子供に全く興味がなかったが、リュカがうまれてからは、積極的に孤児院に関わっている。アイリスの為だと思っていた。


 ひっくひっくと泣くアイリスをみてリュカも泣き出してしまった。悲しい気持ちは伝染する。


「バカだな……アイリス、リュカもおいで」

 リュカをひょいと抱きしめ、アイリスも片手で抱きしめるエヴァン。


「何もかも、アイリスとリュカが健やかに暮らすためにやっている事だ。ただ、変わったことといえばリュカが生まれて守るべき対象が増えたというだけだ」

「リュカの事も愛していますか?」

「アイリスの次だ。何を置いても私にはアイリスが一番だ。子が産まれて、国やリュカの将来を考えるとアイリスの言った通り子供は国の宝だと思った。言葉が足らずにアイリスを悲しませてしまって悪かった」


 アイリスはエヴァンの気持ちを聞いて少し恥ずかしく思ったが、ぎゅっとエヴァンの上着を掴んで頷いた。


 リュカは泣き疲れたのか、精神的に不安だったのか、エヴァンに抱かれながら寝てしまった。

「ん? リュカは何を持っているんだ?」


 片手にリュカを抱き、片手でアイリスの肩を抱き歩く。


「王妃様から買ってもらった王冠です」


「母上か……全く」


 二人のプライベートルームのソファに並んで座る。リュカはまだエヴァンに抱っこされたままだった。












 
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