絶対に近づきません!逃げる令嬢と追う王子

さこの

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もう、逃げない令嬢

エヴァン

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「さっきの話だけど……浮気をするなら本気でしろって言ったよな?」

「言いました」

「アイリスも本気でするって言ったよな?」

「しませんけどね」

「言霊って知ってるか?」

「えぇ、存じております」

「言葉には魂が宿るんだよ……そんな事を二度と言うな!」

 と恐ろしい顔をするエヴァン


「まぁ、まぁ……落ち着けエヴァン」

 焦るレイ


「アイリスが努力しているように私も幼い頃からプレッシャーに耐え努力をしている」

「はい、存じております、ですからわたくしも努力を惜しみません」


「アイリスさえ隣にいてくれればそれで良い! おまえが勝手に浮気と騒いでも、別れん!」

「徹底的に調べますよ?」

「好きにしろ」


「なぁ、浮気をする前提の話はやめようぜ」
尤もな意見である

「レイ! お前が証人だからな」

「なんのだよ……」

「浮気なんてせん、疑惑などない! 別れん」

「分かった」

 似たもの同士である。


 男爵令嬢がなんの弊害もなくプライベートゾーンのバラ園に侵入したと一部の噂になり、侵入を試みた令嬢が捕まる事が増えた。
アイリスは知らない……


 レイが言った通りアイリスは王宮で磨かれ可愛いだけではなく洗練された美しきレディへとなった。

 アイリスに憧れる子息がせめて手紙をと試みるが、成功例は一通もない。

 護衛が完璧な仕事をする。


 職務怠慢と言われ、ぬるいところがあったと反省した護衛達はアイリスとエヴァンの護衛に心血を注ぐ。

 ラブレターの件はすべてエヴァンに報告された。


「まだバカが後を絶たないのか……私はもうすぐ卒業だ、私がいない学園に一年も行かせるのか……弱ったな。レイなんかいい案ないのか?」

「護衛を増やせば、いいだろ?」

「影か……悪くない、父上に頼むことにする」



「生徒会に入りませんか?」

 ある日生徒会にスカウトされたアイリス

「いいえ、わたくしは結構です」

「学年一位の方が生徒会に入っていないなど、例外は殿下くらいです」

「申し訳ございません」

 その後もしつこく誘われる


「学年始まって以来の女性会長になりませんか!」

「結構です!」

 食堂でエヴァンを待つ間も誘われた


「アイリスどうした? 誰だ貴様?」

「殿下からもお願いします。婚約者殿に来期の生徒会長になっていただきたいのです」

「アイリスはやりたいのか?」

「いいえ! お断りをしています」

「そうか、それなら却下だ、二度とアイリスに近寄るな」

「そんな……」


 機嫌が悪くなるエヴァン、レイが変わって話をすることにしたようだ。

「命が惜しければアイリス嬢に近寄らない方が良い……忠告したからな」

 ポンと肩を叩いた


 卒業間近のエヴァンの元へ、卒業後のダンスパーティーのお誘いの為、声をかけられる事が増えた。

 王太子と踊れる機会などもうない、思い出作りに踊りたいのだからと先約をする令嬢達。これにアイリスは嫌な顔を全くしない。


 学園の行事ですもの、ダンスに応えて差し上げるべきです!と言う。

 ファーストダンスは婚約者のアイリスが務めるのはもちろんだ。


 それ以降は記念に踊って差し上げてくださいと本心から望んでいると言う。

 それも王族の務めである。

「分かった、踊りたくないが仕方がない」


 そうするとアイリスの元にも卒業する子息からお誘いが殺到した……と言うレイからの報告。

「却下だ、許すわけなかろう」

 ふんと鼻で笑う


「エヴァンは令嬢達とダンスを受けるのにか?」

「アイリスが望むから踊るまでだ、私は望まんから却下だ」


 その夜、王宮にて両陛下、サイラスと共に晩餐を取ることになった。

「もうすぐ卒業ね、感慨深いわ……」

 王妃と陛下が話かける

「アイリスが嫁に来るまでの一年間が心配でなりませんよ」

 アイリスを横目で見るエヴァン


「また、そのような事を仰って」 

「卒業パーティーはアイリスちゃんも楽しんでね、誰かと踊るの?」

 王妃の質問にエヴァンが答える

「いえ、アイリスは私とだけですね」


「貴方は踊るのに?」

「えぇ、全員とは言いませんが希望者の五人です。抽選になりました」

「そう……新しいわねその考え方……」

 呆れる両陛下


「私はアイリス以外の女性に興味がないので誰でも良いんですよ、笑顔の練習をしなくては……はぁ、面倒だ」


「噂に聞くとアイリスちゃんにもダンスの申し込みが殺到したんでしょう?」

「知りませんでした……そうなの?エヴァン様?」

「そりゃそうだろうな、卒業後は学園のような狭い場所でアイリスに会うこともなくなるのだからな」

 はっはっはと笑うエヴァン


「わたくしが断る前に、話しが通っていないのならば仕方がありませんものね」

 肉を口に入れるアイリス、もう慣れた雰囲気である。


「慣れとは恐ろしいわね……初々しかったアイリスちゃんがエヴァンに毒されてしまったのね……」


「香水を付けている時点で踊らないことも伝えてある」

 思い出すかのように話すエヴァン


「それは名案ですわね! プロッティ様にお礼を言わなくては」

 にこりと微笑むアイリス


「熟練の夫婦感がありますね….」

 サイラスがポツリと呟く

「急にイチャイチャしだす時は、新婚夫婦の様なのにね……」

 王妃が答える


「何はともあれ、早く一年が過ぎる事を祈るよ……」


 陛下がこの場を締めた

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