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もう、逃げない令嬢

疑惑

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 エヴァンの誕生日を迎えるにあたって、誕生日の夜会が行われる事になった。

 今年で十八歳になる。

 夜会は盛大に行われるので、最終確認のダンスの練習の為アイリスは王宮に来た。

 王宮に用意された部屋でドレスに着替える。

 本番さながらに似たようなドレスが用意されていた。

 青いドレスはエヴァンの瞳の色だ。


 ドレスに着替え、練習をする為のホールで待つがエヴァンが来ない。約束の時間はしっかりとしているはずなのに……



「殿下はどうされたのでしょうか?」

 ダンスの講師に言われる

「時間にルーズな方ではありませんのに……お忙しいのでしょうか?」

 アイリスが答える

「先にお一人で練習をされますか?」

 講師に言われるが……


「殿下をお待ちします……いえ、探してきますわね、心配ですもの」

 アイリスが長椅子から立ち上がる

「まぁ、相変わらず仲のいい事」

「せっかくお時間を取っていただいたのに、もう少しお待ちくださいませね」

 アイリスがダンスの講師に言い、部屋を出る。護衛の騎士と侍女も後ろから続く。


「執務室にはおられませんのね……」

 エヴァンのプライベートゾーンである私室へと行くが……

「あら?着替えてお出になられたの?」

 それならば……と一度ダンスの講師の元に戻るが、来ていないとの事……。

 ますます心配になってきた!

「どちらにおられるのかしら……?」

 天気が良いので、庭にでも行ったのかもしれないと思い、お気に入りのバラ園に向かった。

 すると大きな木の下で寄り添う男女の影が見えた。

「まさか……」

 こっそりと近寄ると、エヴァンが見知らぬ令嬢の肩を借りて目を瞑っていた……。


 これは……許せんと、怒りが込み上げてくる。後ろの護衛や侍女はハラハラとしている
くるりと踵を返しその場を去る。


「アイリス様っ、どちらに行かれるのですか?!」

 護衛に声をかけられる

「邸に帰るに決まっているでしょう! 約束を守れない方は知りません! お誕生日会は欠席致します!」

 珍しく口調が厳しいアイリスに


「これは、何かの間違いではないでしょうか? 殿下の皮を被った誰かかも知れませんよ……」

「アイリス様、一度戻りましょう、きっと何かの間違いです!」


 護衛と侍女がアイリスに声をかける


「煩いですわね、帰ると言ったら帰りますっ!」


 ……怒っている、とても。顔を青褪める一同


 そこにエヴァンの弟のサイラスが歩いてきた。

「姉上、お一人ですか? 珍しいですね」
驚いた顔をするサイラス


「あら? サイラス殿下ごきげんよう。そうですわね、これからはずっと一人になるかも知れません、あぁそうだわ、姉が変わる可能性もありますわね!」


「……えっと、それは、どう言った?」


 アイリスの護衛と侍女に目を向けるが、ハラハラした様子の護衛たち。

「お兄様にお伺いしたらよろしいでしょう? あちらで、令嬢と逢引きなさっておられますので!」


 ふんと顔を背け

「それではサイラス殿下ご機嫌よう」

 アイリスは早足でこの場を去っていった
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